首都大学野球連盟東海大学野球部員が自身のブログで、読売ジャイアンツ内藤重人2軍トレーニングコーチからトレーニングメニューなどを受け取っていたと書き込んでいたことが明らかになった。
 部員は、「ジャイアンツのトレーナーからリハビリメニューで朝晩ランニング1時間って言われてる」などと書き込んでいる。

 学生野球憲章では、学生は現役のプロ選手、コーチからの指導を禁じている日本学生野球協会内藤雅之事務局長は、「連盟を通じて報告書の提出を求めた」として学校側に事実関係の確認をさせているとした。

 今回の疑惑について、当のジャイアンツは否定日本野球機構(NPB)から問合せを受けた清武英利球団代表兼GM(General manager)は、内藤2軍トレーニングコーチと面談した後、「(内藤2軍トレーニングコーチが)リハビリの勉強で千葉県内の病院に行った時に、知人を介して野球をやっている子だと教えられた」、「『大変だから頑張って』と話したものの、メニューを渡すなど技術指導はなかったと」と、否認している。

 はたして真相は薮の中だが、仮に事実だとすると、球団のいわゆる選手の囲い込みが、これまで以上に狡猾になっていると言える。

 選手の囲い込みと言えば、かつては現金が主流。プロ野球界でドラフト制度が採用されたのは1965年だが、球団はそれまで、まさに金に物を言わせて有望なアマチュア選手を買い漁っていた。
 その最たる例が、1955年に南海ホークス(現福岡ソフトバンクホークス)に入団した穴吹義雄。複数の球団が現金を積み上げた光景は、小野稔の小説「あなた買います」、同書を原作にした同名の映画で描かれている。

 ドラフト制度が導入された後も、球団の現金攻勢が無くなったわけではない。2004年には、当時M大学に所属していたI投手への金銭供与が発覚し、関与したジャイアンツの渡邉恒雄オーナー、横浜ベイスターズ砂原幸雄オーナー、阪神タイガース久万俊二郎オーナーがこぞって辞任した。
 球界はその後、不正スカウトを行わないとする倫理行動宣言が12球団の申し合わせで発表されたが、2007年には西武ライオンズが宣言後も、2人のアマチュア選手に現金を渡していたことが明らかになった。

 最近では、選手の囲い込みが現金の一本槍ではなくなっている。当ブログで幾度となく紹介している本城雅人の「スカウト・デイズ」(PHP研究所)は、球団のスカウトマンの戦いを取り上げたフィクションだが、球団による選手の囲い込みについても触れている。
 現金の授受は足が付きやすいため、最近は物品で選手を囲い込んでいる。携帯電話がステータスだった時代は、球団名義の携帯電話を選手に渡していたし、最近はやはり球団名義のクレジット・カードを選手に手渡している。携帯電話の料金も、クレジット・カードも、現金と直接渡すよりも額が小さい。小さいだけに、選手は気兼ねなく使用できるいし、球団も出費を抑制できる。

 しょせんはフィクションではないかとの声が聞こえそうだが、現実の世界もフィクションに追いつきつつある。今年8月には、タイガースの球団職員が、母校の後輩にサプリメントを差し入れしていたことが明らかになった。南信男球団社長は、「OBの差し入れの一環です。問題ない」としたが、インターネット上で騒ぎになった。

 そして、今回の、2軍トレーニングコーチによる技術指導の疑惑である。冒頭で触れたように、ジャイアンツ側は否定しているが、球界の過去を振り返れば、ジャイアンツの証言を鵜呑みにすることはできない。深層は薮の中だが、「これが新たな選手の囲い込みで、しかも氷山の一角なのでは」と見てしまうファンは少なくないだろう。

 いずれにしろ、球界には監視が必要だ。