5年間で「働く人が増えた職業・減った職業」ランキングTOP10

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5年間で人が増えた職業、減った職業を、国勢調査から把握する (写真:ふじよ / PIXTA)

ここ5年間で、人が増えた職業、減った職業とは何か――。

4月14日の配信記事、「『人手不足な職業・人余りな職業』ランキング」では、一般職業紹介状況の有効求人倍率を基に、人手が足りない職業、人余りの状況になっている職業を紹介した。


しかし、これから需要が高まる職業を探すうえでは、求人倍率の動向だけでなく、就業者数の増減を把握することも重要だろう。そこで今回、「国勢調査」を基に、ここ数年で就業者を増やしている職業、減らしている職業を明らかにし、そのトレンドを探っていきたい。

国勢調査は、国の現状を把握し政策立案を進めるうえで、とても重要な統計だ。日本では5年おきに実施されており、5の倍数にあたる年の10月が調査のタイミングになっている。直近では2015年に行われており、その調査結果が順次公表されている。

その中に、産業別、職業別の就業者数を調べた詳細なデータもある。このデータを基に、直近の調査(2015年)とその前の調査(2010年)の就業者数の増減を算出し、ランキング形式でまとめたのが、「働く人が増えた職業・減った職業ランキング」だ。

増加数トップは一般事務職で39万人増

対象の職業は、国勢調査の職業分類のうち中分類57職業で、増加者数の多い順に並べている。さらに、その職業の就業者数と、増減比についても記載した。なお、就業者の総数は約5890万人で、5年前比では約70万人ほど減っている。人口が多い昭和20年代前半生まれの団塊世代が定年を迎えた影響が出ているようだ。

57の職業のうち、就業者数の増加が大きかったのは、一般事務従事者で、39.0万人増えている。「庶務、文書、人事、厚生、企画、調査、広報、法務、教育研修などの仕事に従事するもの」と定義され、一般的なオフィスワーカーが該当する。就業者数も805万人と、この中分類の中では最多だ。

2位は介護サービス職業従事者で、29.0万人増加している。5年間で23%増加し、就業者数は155万人に達している。高齢化社会が進む中、介護人材の需要はさらに高まると予想される。

3位は技術者で、22.5万人増加した。該当の就業者数は237万人おり、農林水産の指導員から、製造管理や品質管理の技術者、設計などに携わる人など幅広い。ただ、中身を見ると、システムコンサルタント・設計者を筆頭に、その他の情報処理・通信技術者、機械技術者、輸送用機器技術者などが増加している。

4位は保健医療従事者で、22.4万人増加。医師や看護師など、医療系の仕事をしている人が該当する。就業者数は全体で280万人いるが、看護師が130万人で最も多く、医師(27.5万人)、薬剤師(21.8万人)と続く。

5位は社会福祉専門職業従事者。20.8万人増え、就業者数は101万人に達した。増加率は25.8%で、全職業中でトップとなっている。6位はその他の運搬・清掃・包装等従事者で14.8万人増、7位は営業・販売事務従事者で13.2万人増、以下、8位清掃従事者(9.0万人増)、9位その他のサービス職業従事者(6.8万人増)、10位法人・団体役員(4.0万人)と続く。

医療や福祉系の職業の増加も著しい

増減が少ない職業でも、さらに細かい分類(小分類)で見ると、別な傾向が読み取れる。17位の事務用機器操作員は、パーソナルコンピュータ操作員は減少しているが、データ・エントリー装置操作員は増加している。18位の教員の場合、小・中・高校の教員は減少しているが、幼稚園の教員は1割以上増えている。

反対にワースト、いわゆる就業者数が減った職業についても、見ていこう。

最下位の57位は、分類不能の職業で、42.6万人の減少となっている。分類できない職業は、「主に調査票の記入が不備で分類できないもの」と、職業分類では説明されている。ここの人数が減ったのには調査方法の変更が大きく影響している可能性が高い。

2015年からインターネットによる調査が全国的に開始されており、記載漏れを防ぐ仕組みが導入されている。職業名については、調査時に勤め先の名称や事業の内容から、職業を分類していくが、インターネット回答が増えたことで、該当の項目に漏れなく回答する人が増え、「分類できない人」も減ったものと思われる。

分類不能の職業を除いて、実質的に最も就業者数が減ったのは、56位の製品製造・加工処理従事者(金属製品を除く)で、30.1万人減少した。

減少の原因として考えられるのは、日本経済が製造業などの第二次産業から、サービス業などの第三次産業にシフトする傾向が続いており、それにつれて、製品製造の職業の就業者数も減少していると思われる。また、工場の製造ラインの自動化やロボット化が進み、いままでより人手を必要としなくなっていることも考えられる。

55位は、商品販売従事者で28.9万人減少、54位は営業職業従事者で27.0万人減少している。販売と営業の2つの職業が大きく減っている原因として考えられるのは、インターネットを使った販売方法、いわる「eコマース(消費者向け電子商取引)」の拡大だ。

経済産業省の調査によると、国内の電子商取引の市場規模は、2010年の7788億円から、2015年には1兆3774億円と、5年間で1.8倍近く拡大している。eコマースが拡大する一方で、店頭などでの対面販売は減少、それにあわせて、営業や販売の人員が減少しているものと思われる。

AIとロボット化の波で事務職は余剰に?

以下、減少幅が多い順に、53位農業従事者(14.5万人減)、52位機械組立従事者(13.8万人減)、51位会計事務従事者(13.1万人減)となっている。

なお、減少率のトップは、43位の外勤事務従事者(5.1万人減)で、減少幅は33.5%減となっている。特に調査員の減少が大きく、8.2万人から3.7万人に減少した。

次回、2020年の国勢調査で、就業者数はどのような傾向になるのだろうか。少子高齢化はますます進んでおり、増加数で上位に入っていた医療系や介護系は引き続き増加を続けるだろう。

一方、減少数で上位となった製造業の従事者も、製造業の空洞化や工場の自動化の進展、中小の製造業の後継者不足などで、減少を続ける可能性が高い。営業や販売の職業も、eコマース市場が年5%前後の勢いで増加を続け、2017年には市場規模は1兆6505億円にまで達する。そうしたことを考えると、減少がさらに加速していくと想像できる。

ただし、増加数1位だった一般事務従事者も、2020年には減少に転じるかもしれない。なぜならオフィスの現場では、事務処理を自動化するAI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用が急速に普及しており、事務職の人余り状態が進んでいる。銀行などが事務職の削減の方針を打ち出しており、足元の有効求人倍率も、「一般事務の職業」が0.3倍前後と、1倍を大きく下回っている。

5年先も需要が高い職業を探すうえでは、テクノロジーの趨勢や社会の構造変化も見据える必要があるだろう。