『マッドマックス』のイカれた改造車を創造した男に直撃!今回も撮影中に死者が出た?

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全世界40カ国で公開されNo.1ヒットとなった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、6月20日の日本公開へのカウントダウンが始まった!

AOLニュースでは、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のプロダクション・デザイナーとして、ジョージ・ミラー監督と共に数々のイカれた車を手がけたコリン・ギブソン氏を中国でキャッチ、緊急電話取材を敢行。独占スクープ・インタビューをお届け!

崇めよ、この勇姿を! イモータン・ジョーとギガホース


−コリンさんはいつ、どのようなきっかけで本作に参加したんですか?

コリン:監督のジョージ・ミラーとは『ベイブ』やその他の作品で仕事をしたことがあったが、この作品の企画で最初に声がかかったのは2000年だった。ジョージたちは脚本も書かずに数百枚のストーリーボードを用意していて、まずそれを俺に見せて、「これが新しい『マッドマックス』だ。(プロダクション・デザイナーは)君に決まりだから」と言われた。その後何度か企画をスタートさせる試みが続き、2003年には車作りにも少し着手したのだが、本格的に企画が進み出したのは今から2年半前のことだ。

−『マッドマックス』の新作を撮ると聞いた時はどう思いました?

コリン:そりゃ、素晴らしいことだと思ったね! 喋りまくるブタ(『ベイブ』)やらタップダンスするペンギン(『ハッピーフィート』)やらを手がけていたジョージだけど、やっと原点回帰することになったか!と興奮したよ。

−ジョージ・ミラーとはどんなことを話し合いましたか?

コリン:ジョージはコンセプト・アーティストのブレンダン・マッカーシーやストーリーボード・アーティスト達とある程度話し合いを進めていて、敢えて脚本なしでストーリーボードだけを書き進めていくことにしていたようだ。だから私が企画に加わってからの2ヶ月間は『マッドマックス』の世界の"バイブル"を作るのに費やした。荒廃した世界の政治、社会、哲学、歴史を構築し、いくつもの部族を構想したんだ。

−車を作る上でこだわったことなどはありますか?

コリン:オリジナルの『マッドマックス』シリーズに登場する車のスタイルをある程度踏襲し、70年代のマッスルカーやホットロッドを使いたかったんだ。だからそのためのロジック作りが重要だった。この世界のロジックは、車をバトルに使うわけだからカーボンファイバーの車体じゃ使いものにならない。重量のあるスチールの車体でなければならないんだ。世界はアポカリプスを迎えたわけだから、修理工場にもコンピューターなどない。だから車はV8エンジンを搭載したものだが、機械的に構造がシンプルでなければならない。
また、車はみな昔あったものを再利用して作ったものだから、美しいものでなければならない。カムリやカローラをわざわざ拾って改造する人などはいないだろうというわけだ。タイプ的にもルックス的にもオリジナル・シリーズに登場する車と類似するものを使うのにこの理屈が良い口実になった。ジョージが一番やりたかったのは、とにかくアイコニックで美しい車をセレクトし、この世界観のなかに持ち込むことだったんだ。

−発表されている予告編の時点でイカれた改造車ばかりが登場することがわかりますが、発想の手助けとなった映画や音楽はありますか?

コリン:常に音楽とイメージを発想のインスピレーションにしているよ。今回も"バイブル"を書き下ろす際にジョージと私と、オリジナル・シリーズの衣装デザイナーを務めていたノーマ(モリソー)とで頭を付き合わせたのだけど、様々な素材を参考にした。私は古い人間だから書籍などを参考にしたのだが、ジョージはいつも時代を意識している人間で、しょっちゅうグーグルでネット検索しているような人なんだよ(笑)。

−すごい! 70歳でいまだにググってるなんて!

コリン:ジョージは「古きを蘇らせ、新しくしたもの」というテーマにこだわっていたよ。

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−コリンさんもそのテーマを主軸に、車を制作したわけですね?

コリン:そう。私はデザインをDNAのように考えているんだ。つまりDNAの二重螺旋は、G、C、A、Tのわずか4つの塩基しかないのに、ヒトは全員これによって構成される。しかも人それぞれに個性を有する。デザインにも二重螺旋があり、一つの螺旋はストーリーの運びと撮影の要求に応えられるか否かだ。つまり、「車を何台使う?」「走行するときの速度は?」「何人乗りだ?」「空飛ぶ車か?」などを考える。もう一つの螺旋にあるのは、描こうとする世界観のロジックをいかにして作り上げ、真実の宿る世界にするかという課題だ。
だから、その世界の哲学や宗教や美学を構築しながら創造しなければならない。この二つの螺旋がフィットすると、ストーリーはストーリーできちんと成り立つし、見ている人にとっても十分に見応えのあるものが出来上がる。

−とにかく「ノリだけで作ってないんだぞ」ってことはよくわかりました! 今回100台を越える車を用意したと伺っていますが、制作にいちばん時間がかかった車はなんですか?

コリン:いちばん時間がかかったのはメインの悪役イモータン・ジョーが操縦するギガホースだね。とにかくこれが周りを威嚇するような車でなければならず、最もアイコン的な存在だという設定でなければならなかった。

−『マッドマックス』シリーズのアイコンといえばインターセプターじゃないんですか!?

コリン:もちろんオリジナル・シリーズに登場するインターセプター(フォード・ファルコンXB)も忘れてないよ。でも本作のアイコンはギガホースなんだ。ギガホースは1からつくらなければならなかった。だからシャーシフレームもカスタムメイドだったし、エンジンもV8を2台搭載してパワーを失わずに同時に駆動させないといけないということで特注のトランスミッションとギアボックスも作らなければならなかった。実質W16エンジンを1から作ったようなものだ。車体は1959年型のキャデラックデビルが2台重なっている。これは前々から使いたいと思っていた車種だった。アメリカ車で大きくてケバケバしい。後部にはクロームの?いテールフィンと赤いロケットランプが付いている。2台を上下に重ね合わせているのも象徴的なことなんだ。デザインに着手してから試乗できるようになるまでは10ヶ月もかかったよ。

−キャデラックを重ねるという発想はどこから?

コリン:なんでも1点限りという物不足の荒野において、同じものを2つ持つことができるのはイモータン・ジョーだけなんだ。

−贅沢な男ですね! しかし、ギガホースをはじめ車の名前がいちいちバカみたいで素晴らしいと思うのですが、コリンさんが考えているんですか?

コリン:みんなで作りながら考えたんだ。ジョージはワイブス(捕らわれた女たち)の名前さえも考えていなくて、中には自分で役名を考えた女優もいたくらいだ(笑)。

−そういうところは人任せなんですね(笑)。

コリン:で、途中で車にも名前をつけようということになった。つまり車ではなくて一人の登場人物として扱うということだ。車内から外がなかなか見えなかったり、操縦しにくかったりするなど、車にはそれぞれ特徴があり、例えば「クランキー・フランク」と名付けた車もその特徴からくるネーミングだ。「ギガホース」は他のどの車よりも馬力があるので、「馬がたくさん」ということから「ギガホース」。フュリオサが乗る「ウォー・リグ」という車は、最初からジョージがそう名付けると決めていた。でも「ステージ・コーチ」という案もあったんだ。ジョージがジョン・フォードの『駅馬車』を意識して作っている車だからだ。

−『駅馬車』は『マッドマックス』オリジナルシリーズでも数多く引用してたり、ジョージ・ミラーが影響を公言している部劇の名作ですね。

コリン:『駅馬車』では騎馬隊やインディアンが駆け回っていたりしている喧騒の中で、人間ドラマは全て駅馬車内で展開される。この作品も似ていて(車外の動きが動的であるのに対し)ウォー・リグの車内は静的なドラマが繰り広げられるんだ。

−長期にわたる撮影のなかで、何か予想外な、あるいはクレイジーな出来事はありましたか?

コリン:そんなの毎日だよ!!当初撮影を予定していたオーストラリアで大雨が降ってしまい砂漠に花がたくさん咲いてしまったんだのは大変だったな(笑)。これでは撮影に使えないということでロケをナミビアに移して8ヶ月間の撮影を敢行し、そのあとシドニーへ帰ってきてセットを作り、スタジオ撮影や追加撮影を行った。つまり撮影は足掛け1年半もかかったんだ。

−1作目『マッドマックス』のときは「撮影中に死者が出た」という素敵なデマが流れたことで有名ですけど、今回はそのようなことはないんですね。

コリン:あれは随分長いこと流れていた噂で、幸いなことにデマなんだ。でも「デマだ」と声高に言ってしまっては皆の幻想が崩れてしまうからわざわざ訂正していない(笑)。ジョージは映画監督になる前は開業医だったから、人を怪我させるわけにいかないだろ?

MADなシリーズ最新作をひっさげ、6月4日にはジョージ・ミラー監督が8年振りの来日を果たす。AOLニュースでは、ジャパンプレミアを始め、"カリスマ"監督の降臨を徹底取材する予定だ。続報を待て!

文/市川力夫

映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、6月20日(土)、新宿ピカデリー・丸の内ピカデリー他2D/3D&IMAX3D公開
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITE

https://youtu.be/C45fcET8yoY


■参照リンク
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』公式サイト