WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチが10月1日(日本時間2日)、アメリカのラスベガスで行なわれ、王者・西岡利晃が元2階級制覇王者ラファエル・マルケス(メキシコ)を3−0の判定で下した。日本人初となる“聖地”での王座防衛の快挙はもちろん、「試合内容が素晴らしかった」と評価するのはボクシングライターの原功氏だ。

「序盤こそ苦しみましたが、お互いの手の内がわかった中盤以降のラウンドは完全に試合を支配しました。ラッキーパンチでKO勝ちするよりも価値が高い勝ち方です。この試合で、西岡の現地での評価は急上昇しています」

 その言葉を証明するように、世界ナンバーワン・プロモーター、ボブ・アラムが動きだしている。西岡の試合会場に、わざわざ3階級制覇王者のノニト・ドネア(フィリピン)、4階級制覇王者のホルヘ・アルセ(メキシコ)を呼び寄せ、試合直後の会見で「このふたりにとっても、対戦すれば困難な相手になるだろう。またアメリカに戻ってきてくれ」と、西岡にラブコールを送った。

 実際、翌日には帝拳ジムの本田明彦会長のもとにアルセから王座統一戦のオファーが届いている。また、ドネアはもちろん、2階級制覇王者ビック・ダルチニアン(オーストラリア)も、西岡との対戦に興味を示している。

 こうした世界的スターとのタイトルマッチが実現すれば、ファイトマネーのアップも間違いない。世界にはマニー・パッキャオ(フィリピン)のように一試合で20億円以上を稼ぎ出すボクサーもいるが、日本人世界王者が国内で防衛戦を行なう場合、ファイトマネーの相場は、業界関係者によれば1000万円とのこと。

「もちろん、諸事情によって金額は上下しますし、実際に選手が手にするのは1000万円以下ということも多々あります。例外中の例外として、TBSが全面バックアップしている亀田興毅が全盛期に億を超えていたと囁かれていますが……」(業界関係者)

 世界基準でいえば、今年2月に行なわれたWBC・WBO世界バンタム級タイトル戦では、当時王者だったフェルナンド・モンティエル(メキシコ)が 25万ドル(約2000万円)、王座奪取した現王者ドネアは35万ドル(約2800万円)を手にしている。今回の西岡のファイトマネーは推定40万ドル(約3200万円)。そして、西岡の次戦のファイトマネーについて、本田会長は「1ミリオン(約8000万円)が最低条件」との姿勢で交渉に入ることを明言。1億円超えの可能性も十分だ。

 いずれにしろ、西岡の次戦は、誰とどんな金額で戦うにしても、大きな意味を持つ。今回の防衛戦後、本田会長は「次戦がラスト」と西岡に引退を勧告している。肝心の西岡本人は「今は何も考えられない状態。どうなるかわからない」と言葉を選んだが……。

「西岡本人は『いまだ成長している』と断言しますが、35歳という年齢、家庭を持っていること、現役を退(しりぞ)いてからのことを考えての会長の言葉でしょう。ジムの会長としてよりも、親心として。今後ふたりで話し合うのでしょうが、次戦がラストマッチになる可能性は十分ある」(前出・原氏)

 西岡は年内は休養し、4月もしくは5月に予定される次戦に備える。ラストマッチになるかもしれない一戦。対戦相手、ファイトマネーも注目だが、西岡利晃という稀代(きだい)のボクサーの生きざまからも目が離せない。

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