「不安で、不安で…」年金月11万円・都内住み75歳女性、終わりの見えない“値上げラッシュ”で〈老後資金700万円〉を取り崩す恐怖
総務省の「消費者物価指数(東京都区部・令和8年6月分)」によると、食料が前年同月比3.7%、家事用消耗品が2.7%上昇するなど、生活に欠かせない品目の値上げが続いており、“値上げラッシュ”はとどまる気配がありません。こうした生活費の高騰による影響を強く受けるのが、都内で年金を頼りに暮らす高齢者です。75歳女性の事例を通して、物価高が老後の家計に与える影響をみていきます。
都内の高齢者を追い詰める「生活費高騰」
総務省が公表した「消費者物価指数(東京都区部・令和8年6月分中旬速報値)」によると、総合指数は前年同月比で1.7%上昇しました。なかでもシニア層の家計に直結する「食料」は前年同月比で3.7%もの高い上昇率を記録しており、終わりの見えない値上げラッシュが続いています。
さらに、食料以外の身近な出費も見過ごせません。同調査によれば、トイレットペーパーや洗剤、ゴミ袋といった生活に欠かせない「家事用消耗品」も前年同月比で2.7%上昇しています。
こうした「普段の買い物のたびに感じる値上げ」は、限られた年金で暮らす都内の高齢者の家計を直撃します。食費を切り詰めても日用品の値上がりなどで生活費全体が押し上げられ、これまでかろうじて保っていた「収支のバランス」が崩れてしまうからです。
そして、毎月の家計が赤字に転落したとき、高齢者は先の見えない不安を抱えることになります。都内で一人暮らしをするヨシコさん(仮名・75歳)も、そんな値上げの波に追い詰められている一人です。
努力では抗えない…年金月11万円・75歳女性が直面する「値上げの波」
東京都内の閑静な住宅街に残る、築40年超えの古い一軒家。夫と死別し、ここで一人暮らしをしているヨシコさん。現在の収入源は、月約11万円の年金のみです。このほか、夫がのこしてくれた約700万円の貯金がありますが、ヨシコさんは年金の範囲内でやりくりしようと、無駄遣いをせず堅実な生活を送ってきました。
少し前までは、月に1〜2万円ほどは手元に残せていました。しかし、2026年に入ってから、食料や日用品の値上げに耐え切れなくなり、その余力がなくなってきました。
かつては複数のスーパーを回り、特売品を買い分けていました。しかし今となっては、どこのスーパーも棚に並ぶ肉や魚の価格が目に見えて上がり、特売品すら以前の通常価格より高いことも珍しくありません。さらにヨシコさんを苦しめているのが、洗剤やトイレットペーパーといった「家事用消耗品」の値上がりです。
【東京都区部:主な食料品・日用品項目の上昇率(前年同月比)】
飲料 :5.0%上昇
生鮮魚介 :8.0%上昇
肉類 :6.3%上昇
卵類 :5.2%上昇
菓子類 :4.9%上昇
調理食品 :4.4%上昇
家事用消耗品:2.7%上昇
※総務省「消費者物価指数 東京都区部 令和8年6月分」
これ以上、個人の努力ではどうにもできず、気がつけば月11万円の年金は使い切るようになっていました。
急な出費が命取りに…「貯金700万円」という頼りない“命綱”
今では年金の範囲内どころか、貯金を取り崩す月も出始めています。「毎月少しでもお金を残す」ことが安心感につながっていたヨシコさん。その余裕がなくなり、焦りを覚えました。また、手元にある700万円の貯金も、決して安心できる額ではありません。
「もし体を悪くして入院したり、急に家の修繕費が必要になったりしたら。まだ貯金があるとはいえ不安で、不安で……」
ヨシコさんの貯金700万円は、今後の医療費や介護費、住宅の修繕などを考えれば、決して安泰とはいえません。特に生活コストが割高な東京において、個人の節約努力だけではどうにもならない物価高の波により、年金暮らしの高齢者は「老後破綻」の不安を抱える現実に直面しているのです。
終わりの見えない値上げラッシュは、個人の節約努力だけで立ち向かうには限界があります。だからこそ、公的支援や資産活用を積極的に検討し、厳しい時代を乗り切っていきましょう。
昨今の物価高対策として、東京都では「東京都公式アプリ(東京アプリ)」を通じた生活応援事業を実施しています。NFC対応スマートフォンとマイナンバーカードを持つ15歳以上の都内在住者であれば参加でき、ヨシコさんのような物価高騰に直面する都民の心強い味方になるでしょう。
また、医療費への不安に対しては、すでに75歳を迎えたヨシコさんも加入している「後期高齢者医療制度」が助けとなります。年金収入が月11万円であれば窓口での自己負担割合は原則1割で済み、高額療養費制度によって月々の負担上限額も低く抑えられます。
さらに、ヨシコさんのように一軒家を東京に所有している人は、いざというときの最終的な備えとして「リバースモーゲージ」の活用も視野に入れておきましょう。今住んでいる自宅を担保にして融資を受け、亡くなったあとに自宅を売却して借入金を一括返済する仕組みです。地価が高い東京であれば価値もつきやすく、住み慣れた家を手放すことなく老後の生活資金や修繕費を確保できる有効な手段となり得ます。ただし、金利上昇や「長生きリスク」によって、想定以上に利息負担が増える可能性や、不動産価値の下落によって融資限度額が引き下げられるリスクに注意し、慎重に判断することが大切です。
[参考資料]
総務省「消費者物価指数 東京都区部2026年(令和8年)6月分(中旬速報値)」

