《めまい診療の第一人者が解説》枕を使わない、低すぎる人にもリスクが…自宅でできる「めまい対処法」とは?
日常生活の中で急な「めまい」を感じることは珍しくないはず。特に、女性は男性の2倍も多いそうだ。放置すると、慢性化するおそれもあるという。どんな種類があるのか、原因やリスク、そして改善法と治療法を知ろう。
「朝、目が覚めて起き上がろうとした瞬間、天井がぐるぐると回り出した」
「寝返りを打ったら、景色が激しく揺れる」
日常生活で、このようなめまいは突如起こり得る。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2022年)によれば、めまいの自覚症状がある人は女性に多く、男性と2倍以上の差がある。
「とくに、自分や周囲のものが動いているように感じる『回転性』のめまいは、決して珍しいものではありません。読者世代の女性に最も多く見られるのが頭を動かしたときに起きる『良性発作性頭位めまい症(BPPV)』で、耳が原因のめまいの約半数を占めます。きちんと診断を受け、適切に対処しないと慢性的なめまいに移行することもあるので注意が必要です」
こう説くのは、大阪公立大学大学院医学研究科の角南貴司子教授。耳鼻咽喉病態学・頭頸部外科学の教授を務め、約30年にわたり、めまい診療・研究に携わってきたこの分野の第一人者だ。

めまいは大きく分けて、自分や周囲のものが動いているように感じる「回転性」、ふわふわする「浮動性」があるが、BPPVは回転性めまいの代表格だ。
なぜ、頭を動かした際にぐるぐる回って見えるのか。角南教授が説明する。
「耳の奥にある『内耳』の異常によるものです」
内耳には、音を感じる「蝸牛」と、平衡感覚を司る「三半規管」、重力を感じる「耳石器」がある。
「耳石器には、カルシウムの結晶でできた『耳石』という小さな石がびっしりと載っています。この石はターンオーバーを繰り返していて、古くなった石は剥がれ落ち、通常は周囲の細胞に吸収されます。ところが、剥がれた石が何かの拍子に隣の三半規管の中に入り込んでしまうことがある。これがきっかけで起きるのがBPPVです」
三半規管の中は「内リンパ液」という液体で満たされている。頭を動かした際、中に入り込んだ耳石が転がると、三半規管の感覚細胞が過剰に刺激され、回転性のめまいが起きるのだ。
BPPVは更年期以降の女性に多い
「起きて活動しているときには耳石は落ちにくく、横になっているときには重力の関係で耳石が入り込みやすい。よって、起床時や午前中に症状を感じる人が多いです。ひどい場合は吐き気も伴います。典型的なのは、朝起き上がろうとしたときや、棚の上のものを取ろうと上を向いたときで、数秒から1分程度のめまいが起きます。安静にしていれば石の動きが止まるため、めまいも収まりますが、再び頭を動かすとまた回り出します」
BPPVは更年期以降の女性に多い。
「男女比は1対2で圧倒的に女性。とくに50代以降の女性に多く、女性ホルモンの減少が関係していると考えられています。カルシウムの代謝が落ちるので、耳石がもろくなり、剥がれ落ちやすくなるという説が有力です」
ほかにも、日常生活で知らないうちにめまいのリスクを上げている行動がある。
「寝返りをあまり打たない人や、枕を使わない人・低すぎる人もリスクが高い。寝ている間に三半規管が耳石器より低い位置に来る時間が長いと、重力で石が三半規管に入り込みやすくなるからです」
頭を動かさないのは逆効果
BPPVを早期に治すには、耳石を動かす必要がある。
「専門医による、入り込んだ石を元の位置に戻す『耳石置換法』が最も有効です」
これは、医師が患者の頭を特定の順序で傾けたり回転させたりすることで、物理的に石を三半規管の外へ誘導する方法だ。うまく石が抜ければ、その場でめまい症状が解消する。
「ただし、どの三半規管に石が入っているかを見極める必要があり、これには赤外線CCDカメラなどで目の揺れ(眼振)を観察する専門的な診断が欠かせません。もし自宅でできる対処法を挙げるなら、寝返り運動がおすすめです。寝る前や起きた後に、仰向けの状態から『右を向く』『仰向けに戻る』『左を向く』という動作を繰り返します。朝起きる前と、夜寝る前に10回程度行うと、石が溜まるのを防ぎ、再発率を下げるという報告があります」
《この続きではめまい相談をするべき医師の選び方、聴力の低下も伴う「メニエール病」の見分け方と具体的な対策方法などを角南教授が解説している。現在配信中の「週刊文春 電子版」および7月16日(木)発売の「週刊文春」で読むことができる》
(角南 貴司子/週刊文春 2026年7月23日号)
