「膵臓がんの早期発見は困難」の常識が変わる? “目で見えない超初期”段階でAIが発見できる時代到来か
「膵臓がんは早期発見が難しい」と思っている人は多いでしょう。しかし近年、この“常識”が変わりつつあります。米国の研究チームは、目視では確認できない初期段階の膵臓がんをCT画像からAIで自動検出するシステム「REDMOD」を開発しました。REDMODは確定診断の平均1年3カ月前に異変を検知し、その精度は放射線科医のほぼ2倍に達するといいます。この内容について佐々木先生に伺いました。
監修医師:
佐々木 健也(医師)
高知医科大学医学部(現・高知大学医学部)卒業。消化器内科医として10年以上にわたり、大学病院や基幹病院で肝胆膵領域の専門診療に従事。ウイルス性肝炎、MASH(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)、肝細胞がんを中心に、最新のガイドラインに基づく標準治療から地域医療における患者マネジメント、病診連携まで幅広く携わる。アルコール依存症診療にも豊富な経験を有し、精神科領域への出向経験を生かして、物質依存症や行動依存症に対する医学的助言も行う。近年は父親としての育児経験を契機に、小児の成長・発達、児童心理、発達障害、児童精神医学にも関心を広げ、看護師や公認心理師など多職種と連携した研究プロジェクトの準備を進めている。日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。
研究グループが発表した内容とは?
編集部
米国の研究チームが発表した内容を教えてください。
佐々木先生
米国の研究チームは、通常のCT画像から、目視では識別できない膵臓がん(膵管腺癌)の微細な変化をAIが自動で検出するシステム「REDMOD(放射線画像の特徴を用いた早期発見モデル)」を開発し、その精度を検証しました。検証の結果、REDMODは、膵臓がんと確定診断される中央値475日(約1年3カ月)前に異変を検知できることがわかりました。また、検出感度(病変を見つけ出す割合)は73%と、放射線科医(約39%)のほぼ2倍に達していました。さらに診断の2年以上前の段階では、その差は約3倍に広がりました。複数の医療機関や公開データセットでも同様に高い精度と安定性が確かめられています。
膵臓がんは症状が表れた時点ではすでに進行していることが多く、早期発見の難しさは生存率の低さの大きな要因となっています。早期発見・早期介入による治療効果の向上を目指す新しいがん診療のあり方として、本システムへの期待が寄せられています。
膵臓がんの検査方法とは?
編集部
一般的な膵臓がんの検査方法について教えてください。
佐々木先生
膵臓がんが疑われる場合、まず血液検査や超音波(エコー)検査が行われます。より詳細な診断のために、造影CT・造影MRI・超音波内視鏡検査(EUS)なども用いられます。これらの検査をしても診断が確定しない場合は、膵管や胆管をカメラで直接確認する内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)が行われることがあります。また最終的な確定診断には、採取した組織や細胞を顕微鏡で詳しく調べる病理検査が欠かせません。
がんの進行度(病期)を判断するために、審査腹腔鏡(おなかの中を直接観察する検査)が行われることもあります。腹痛や体重減少、血糖値の異常など、気になることがあれば早めに医師へ相談しましょう。
内容への受け止めは?
編集部
米国の研究チームが発表した内容への受け止めを教えてください。
佐々木先生
膵臓がんは「見つかったときには手遅れ」という厳しいイメージが根強いですが、REDMODのような次世代のAI技術が登場することで、そのパラダイム(病気に対する認識の枠組み)は根本から変わりつつあります。医療におけるAI技術は現在目覚ましいスピードで進化しています。計画中の臨床試験などを経て、近い将来、実際の医療現場でも高リスク患者さんをスクリーニング(ふるい分け検査)するための標準的なシステムとして普及していくことが期待されます。
こうしたAI技術が全国の医療機関に実装されるまでの間も、皆さんが早期発見のためにできるアプローチはあります。急な体重の減少、みぞおちや背中の痛み、糖尿病の急激な悪化や新規発症などは、膵臓からの重要なサインである可能性があります。何かおかしいなと感じる変化があれば、決して放置せず、早めに消化器内科を受診してください。
日進月歩の医療技術と、日頃の体調への気配りの両輪で、膵臓がんという病気に立ち向かいましょう。
編集部まとめ
膵臓がんは早期発見が難しいとされてきましたが、AIによる新技術が新たな可能性を示しています。日頃から血糖値や体重の変化、腹痛などの体のサインに気を配り、定期的な健康診断を受けることが大切です。

