【為替】金利差縮小で拡大する円売りの「弱点」
2024年以来の投機円売り拡大=ただ金利差は大きく縮小
CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、先週(6月22日週)にかけては売り越し(米ドル買い越し)が15万枚前後となり、2024年7月以来の水準まで拡大してきた(図表1参照)。経験的には、円の「売られ過ぎ」懸念がかなり強くなってきた可能性がある。
【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成 同じように円の「売られ過ぎ」懸念が強くなった2024年当時と最近では、日米金利差がかなり異なっている。投機筋の円売り越しが断続的に15万枚以上となったのは2024年4~7月であり、当時の日米2年債利回り差(米ドル優位・円劣位)は4%以上ときわめて大幅な状況だった。これに対して、最近の日米2年債利回り差は3%を大きく下回る水準で推移している(図表2参照)。
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成 金利差の円売りへの裏付けが大きく低下
2024年当時は、大幅な金利差による円劣位が、投機筋が円売りを仕掛ける大きな理由になっていたと見られる。それに対して、最近は金利差円劣位縮小にもかかわらず、日本の財政規律への懸念など円の信用力への不安が円売りの理由になっているようだ。その結果、金利差で説明できない円売り拡大となっているのだろう。
こうした信用力を不安視した円売りは、円安が利益の大前提と考えられることから、通貨当局の為替介入などにより円高に転換した場合、前提が揺らぎかねない懸念がある。2024年の場合は、ある程度の円高は大幅な金利差に伴う収入で吸収が可能だと考えられたのに対し、最近は、円高に転じた場合の円売り取引の損失を金利差でカバーできる余裕が、かなり低下している可能性がある。
金利差縮小の影響は当局も意識している可能性
代表的な投機筋であるヘッジファンドの円売りポジションの損益分岐点は、120日MA(移動平均線)付近が目安とされるが、足下では158円程度と見られる(図表3参照)。その意味では、米ドル/円が158円を割れてくると、ヘッジファンドの円売りポジションは損失に転換する可能性がある。
【図表3】米ドル/円と120日MA(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成 それでも、2024年当時は大幅な金利差による円劣位が、円高に伴う為替損失をある程度吸収できた可能性がある。これに対して足下では、そうした円高に伴う為替損失を金利差が吸収できる余裕がかなり低下しているのではないか。
日本の通貨当局も、その点はある程度意識しているようだ。根強い円安マインドを変えるには、米ドル/円の水準を大きく円高方向に変える必要があるものの、それが実現した場合は、金利差による円劣位もかなり縮小してきたことから投機筋は円売りを仕掛けにくくなると考えているようだ。
吉田 恒 マネックス証券 チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長

