【真壁 昭夫】中国の次なるターゲットは「世界の原子力発電所」か…新興国向けの輸出拡大のさきに待ち受ける「エネルギーの中国依存」

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ドイツ車が中国に飲み込まれる

中国経済は不動産バブル崩壊に伴う深刻な国内の需要不足に直面しており、物価動向を示すGDPデフレーターもマイナスが続いている。

その一方で、政府の巨額な産業補助金に支えられたEVや太陽光パネル、汎用型半導体などの生産能力は深刻な過剰状態に陥り 、行き場を失った製品が世界市場へ大挙して流入している。この猛烈な輸出攻勢は、各国の産業競争力を削ぐだけでなく安全保障をも脅かす新たな「チャイナショック2.0」として 、主要先進国は強い警戒を示している。

この地殻変動の波にいち早く飲み込まれ、厳しい局面に立たされているのが欧州の自動車先進国・ドイツだ。

前編記事〈「激安製品の大量輸出はもうやめてくれ」中国に対する各国の本音…“補助金ジャブジャブの中国製品”の氾濫が世界の安全保障を脅かす〉では、こうした状況を詳しく解説している。

ドイツではフォルクスワーゲンが“中国で、中国のために(In China, for China)”と銘打った対中戦略を実行した。その結果、価格競争に巻き込まれ業況は一段と厳しい。

フォルクスワーゲンは、出資した中国のEV新興小鵬汽車(シャオペン)に欧州工場の売却を検討しているようだ。中国の現地企業が開発したEVなどの製造を受託する可能性も浮上している。

それほど収益性の改善は難しく、同社は、今年の世界生産能力を1割削減し、900万台程度に引き下げた。かつて、フォルクスワーゲンは中国企業と合弁を組み、主要先進国の自動車勢の中でいち早く需要を取り込んだ。それが今や、中国勢に飲み込まれつつあるように映る。

次々と技術力を吸収する中国

過去、高速鉄道分野で、川崎重工業、ボンバルディア(カナダ)、シーメンス(ドイツ)、アルストム(フランス)は中国中車(当時は南車と北車に分離)に技術を供与した。その結果、中国中車は急速に製造技術に習熟した。

中国IT先端企業の成長も追い風に、中国中車は売上高で日欧勢を凌駕する企業に成長した。インドネシア高速鉄道計画に関して、コストの増加、インドネシア国費の投入など中国勢と組んだことが問題視されているが、新興国や途上国にとって中国企業の価格競争力、提案スピードの魅力度は高いだろう。

再生可能エネルギー分野でも、中国勢の成長は急速だ。風力発電設備では、ゴールドウインド、エンビジョンなどが世界シェアの約5割を押さえた。かつて世界トップだったデンマークのベスタスは5位に沈んだ。

中国企業は主要先進国から製造技術やノウハウを吸収し、シェアを高め、結果的に主要先進国企業が中国の設計思想、部品、製品に依存する構図を作り出しているようだ。欧州では、米国以上に踏み込んだ対中関税政策と、EVなどの最低輸入価格設定で中国の輸出や直接投資攻勢への対応が模索されている。

原子力発電所の輸出も重視

イラン戦争をきっかけに、石油やガスなどの中東依存を引き下げ、再生エネルギー利用を重視する国は増えた。中国は、新興国向けの原子力発電設備の輸出も重視している。

中長期の目線で考えると、AIの世紀、多くの国のエネルギーが中国の技術に依存する展開も現実味を帯びるかもしれない。実現すれば、中国の政治的な駆け引きに利用される懸念が高まるだろう。

そうした展開に対し、日本政府や企業がどう対応するかが問われる。

わが国企業に関して、トヨタのハイブリッド車、スズキのインド市場における小型車シェアの高さというように、善戦している分野はある。アパレルのファーストリテイリング(ユニクロ)、日用品の無印良品も世界市場で健闘している。

当面、国内企業は中国勢との合弁事業を運営して収益機会を狙い、他の海外市場でのシェア拡大を重視することになるだろう。日本企業が、中国で苦戦している欧米の競合相手を買収し、国際的な業界再編につながる可能性も高まるはずだ。

そうした企業の戦略が、わが国の産業競争力や経済成長に寄与するには、政府の取り組みも重要だ。特に、多国間の経済連携を推進する意義は高い。

日本に必要な経済連携の推進

かつて、米オバマ政権が目指したように、ソフトパワーの側面から対中包囲網を形成し、競争や貿易のルール共通化を目指すことは、世界経済の持続的な成長に貢献するはずだ。

米国トランプ政権がグローバル化に背を向け始めた状況下、わが国はTPP申請方針を明らかにした韓国などと連携し、新たな対中包囲網の構築を急ぐ必要がある。

それは、日本企業の海外進出、先端分野での新商品開発の起爆剤になる可能性を持つ。

国内で少子高齢化が加速し、人口減少が深刻化する中、わが国は海外の需要を取り込み、一人当たりの付加価値創出力(生産性)を引き上げることを考えるべきだ。それができれば、人口の減少局面であっても経済成長を実現することは可能だ。

在来分野から先端分野まで中国の輸出攻勢が高まる中、わが国の社会・経済の安定と成長を自立的に実現するため、多国間経済連携に向けた政策実行は待ったなしだ。

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【著者】真壁昭夫 1953年 神奈川県生まれ。76年一橋大学商学部卒業後、 第一勧業銀行に入行。ロンドン大学経営学部大学院、メリル・リンチ社への出向を経て、みずほ総研主席研究員。現在、多摩大学特別招聘教授。行動経済学会常任理事。FP協会評議委員。著書に『日本がギリシャになる日』、『行動経済学入門』など

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