地方大会から目が離せない “超高校級ドラフト候補”横浜・織田翔希と山梨学院・菰田陽生が背負う「最後の夏」
今年の高校生ドラフト候補で、最も多くの視線を集める2人がいる。
横浜の本格派右腕・織田翔希と、山梨学院の二刀流候補・菰田陽生である。
織田は、安定して150キロ台を投げ込む高校ナンバーワン投手候補。菰田は195cm、100kgの体格を誇り、投打の両面で規格外のスケールを持つ。【西尾典文/野球ライター】
【写真】“超高校級ドラフト候補”横浜・織田翔希と山梨学院・菰田陽生の姿
球速だけでなく、制球力の高さも売り
8月5日に開幕する第108回全国高校野球選手権。その出場をかけた地方大会は、すでに沖縄、南北海道などで始まっている。7月に入れば、全国各地で熱戦が本格化する。
10月のドラフト会議で上位指名を狙う2人にとって、最後の夏は最大のアピールの場となる。

ともに2年春から3季連続で甲子園に出場。チームも県内でトップクラスの力を誇る。ただ、一発勝負のトーナメントは何が起こるか分からない。地方大会でも、2人が出場する試合には多くのスカウトが視察に訪れるはずだ。
では、織田と菰田はなぜ高く評価されているのか。
高校ナンバーワン投手の呼び声が高い織田の武器は、ストレートの速さにある。
ドラフト候補と言われる投手は、最速が紹介されることが多い。ただ、その数字は“瞬間最大風速”であり、実際の試合ではなかなか同じスピードが出ないケースも少なくない。織田のすごさは、投げる試合で常に最速に近い数字を叩き出している点だ。
筆者は2年春以降、織田の投球を現地で8試合見ており、スピードガンで計測している。そのうち6試合で150キロ以上をマークし、残り2試合の最速も149キロだった。高校生でここまでコンスタントに150キロを超える投手は、そういるものではない。
球速だけで評価されているわけではない。制球力の高さも、織田を特別な存在にしている。
織田は過去3度出場した甲子園で10試合、60回を投げているが、与えた四死球は14。1試合9回に換算すると約2個にとどまる。単純に四死球を出さないだけでなく、コースを投げ間違えるいわゆる“逆球”も非常に少ない。コントロールに関しても、高校生ではトップクラスと言えるだろう。
NPB球団の担当スカウトも、織田についてこう話す。
「投げているボールは高校生のレベルではありません。指のかかりが特に素晴らしい。当然良くないボールもありますが、それが何球も続かずに修正できる。まだ体は細いのに(185cm、80kg)、あれだけのボールを投げられるのは天性ですね。プロでしっかり体を鍛えれば、まだまだスピードも出ると思いますし、体力面さえクリアできれば早くから一軍の先発に入ってくることも期待できるでしょう」(関東地区担当スカウト)
織田には多くのMLB球団が興味を示しており、登板する試合のネット裏には複数の外国人スカウトが姿を見せている。進路について現時点で明言を避けているが、高校から直接MLB入りを検討することになれば、大争奪戦となることは必至だ。
圧倒的なスケール
菰田の魅力は、織田とは別のところにある。
195cm、100kgという高校生離れした体格を誇り、好調時には150キロを超えるストレートを投げ込む。ただ、織田のように安定して速いボールを投げ込むタイプではない。
中学時代に右肘を痛めていたこともあり、起用は比較的慎重だ。初めて出場した2年春の甲子園では、リリーフで3イニングの登板にとどまった。昨年夏は先発で安定した投球を見せたが、準決勝の沖縄尚学戦で肘の違和感を訴えて1イニングで降板。秋は明らかに本調子ではなかった。
さらに今年春の選抜では、一塁手で出場した際に打者走者と交錯して左手を骨折。登板がないまま甲子園を去っている。
評価の根底にあるのは、将来性の高さと、打者としての規格外のスケールである。
昨年秋の関東大会では3試合で12打数7安打と5割を超える打率を残し、準々決勝の浦和学院戦ではセンターバックスクリーンへ特大の一発を放った。今年春の選抜でも、第1打席で初球をとらえ、打った瞬間に分かる本塁打をレフトポール際へ運んでいる。野手として見てもドラフト1位候補という声は少なくない。
前出の関東地区担当スカウトは、菰田のスケールをこう評価する。
「織田に比べるとまだまだ完成度は低いですが、良い時のボールは目を見張るものがあります。打者の手元で勢いが落ちない。体が大きいわりに腕の振りはコンパクトなので、打者もタイミングが取りづらいと思います。まだ少し体を持て余しているところがあるので時間はかかると思いますが、数年後には驚くようなボールを投げるようになっていることも考えられるでしょう。ピッチングだけでなく、バッティングも下級生の頃とは別人のように良くなっていますね。遠くへ飛ばす力は高校生ではナンバーワンではないでしょうか。タイミングのとり方やボールの待ち方にも余裕が出てきました。投手か野手かは意見が分かれると思いますが、どちらにしても圧倒的なスケールの大きさがあることは間違いないです」(前出の関東地区担当スカウト)
選抜後の春季大会は、骨折した左手のリハビリでベンチ入りメンバーから外れた。ただ、すでに練習試合で実戦復帰を果たし、順調な回復ぶりを見せている。
野球に取り組む姿勢を評価する声もある。別のスカウトは、菰田についてこう話した。
「下級生の頃から中心選手で騒がれていますが、浮ついたところが全くありません。練習に取り組む姿勢も素晴らしい。そういう意味では決して天性の才能だけの選手ではないですし、まだまだ成長が期待できると思います」
選抜で左手を骨折した後の取材でも、悲観するコメントはまったく聞かれず。真摯に対応する姿が印象的だった。織田とは異なり、早くから進路についてNPB一本を表明している点も、NPB球団のスカウトにとって評価しやすいポイントになりそうだ。
横浜が出場する神奈川大会、山梨学院が出場する山梨大会は、いずれも7月5日に開幕する。タイプの異なる2人の超高校級ドラフト候補が、最後の夏にどんなパフォーマンスを見せるのか。地方大会から目が離せない。
西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
デイリー新潮編集部
