絶体絶命!灼熱のベランダに締め出された!?誰にでも起こるかもしれない夏の危険

去年7月、インド・チェンナイにある新築マンションで、夫・妻・娘の3人で暮らす日本人家族に絶体絶命の事件が起きた。
その日、夫は飛行機でニューデリーに日帰りで出張していた。仕事を終え、夜6時半にチェンナイ空港に到着すると、携帯電話には会社と娘の保育園から数十件もの不在着信が届いていた。会社に電話すると、娘の保育園から「お母さんが迎えに来ない」と連絡があったという。
妻に電話をかけてもつながらない。急いで自宅へ向かおうとしたが、車はとんでもない渋滞に巻き込まれた。先に会社の同僚たちがマンションに到着し、24階の部屋へ向かった。インターホンを押しても応答はなく、鍵もかかっている。夫が電話越しに暗証番号を伝え、扉を開けると電気をつけた同僚たちは、部屋の中の光景に思わず声を上げた。
この9時間前の朝、夫を送り出した妻は、車で娘を保育園へ連れて行った。娘を預け、「夕方4時にお迎えに来ます」と告げ帰宅すると、家政婦から自身の子どもの体調不良で来られないと連絡が入り、妻は家事を自分でこなすことに。
その後、テイクアウトのベーコンレタスサンドイッチを食べた後、妻は、干していた洗濯物を取り込もうとベランダへ。この日は午前中すでに気温は35℃を超えていた。風が吹き込んできて部屋が暑くなると思い窓を閉めた瞬間、カチッという音がした。スライド式の鍵がロックされたまま窓が閉まってしまったのだ。
この日家政婦は来ない。夫は出張中。知り合いもいない。娘は保育園…。つまり、誰かが鍵を開けてくれることはない。
ベランダは地上80mの高さ、壁は頑丈なコンクリートで仕切られ蹴破り板もない(インドでは日本とは異なる防火基準があるため、法律上問題はなかった)。スマートフォンは室内に置いたままだった。
大声で助けを求め続けたが、新築のマンションは周りにまだ誰も住んでいなかった。地上に向けて叫んでも、80mの高さでは誰も気づかなかった。防犯システムは厳重だったが、ベランダは監視の対象外。今度は窓に体当たりするが窓は強化ガラスでどうにもならない。
最も暑くなる午後2時頃、気温は40℃近くに。干してあった洗濯物に目が留まり、バスタオルを洗濯バサミで固定してカーテンを作り日よけにして、日光で熱くなっている床にもバスタオルを敷いて、少しでも暑さをしのいだ。

ベランダに閉め出されてから3時間。
午後4時、娘のお迎え時間になると、今度は室内のスマートフォンの音声操作機能に呼びかけたが、これも設定が済んでおらず、万策尽きた。
夜7時半、ベランダに閉め出されてから7時間後、会社の同僚がマンションに到着。同僚たちが、ベランダで横たわる妻を発見したのだ。
その後、娘を迎えに行った夫が帰宅し、家族は無事に再会。妻は翌日、頭痛があったため病院を受診したが、軽い熱中症だけで済んでいたという。
大事に至らなかったのは、いくつかの偶然が重なったため。バスタオルで作った即席カーテンが直射日光を遮り、体温の上昇とやけどを防いだ。一番暑い時間帯に日陰で横になっていたことで筋肉の緊張が解けて代謝が落ち、体温上昇と脱水の進行を最小限に抑えられた。そして最もよかったのは、直前に食事を摂っていたこと。人が1日に摂る水分のうち半分は食事によるものだと言われており、塩分やミネラルも補われた状態だったため、重度の熱中症の発症を免れた。

この事件以来妻は、鍵の設定には細心の注意を払い、ベランダはもちろんトイレにもスマートフォンを肌身離さず持ち歩くようになったという。
