弁護士とともに冒頭陳述を聞くクウォン・チュン・シット被告(右)とクウォン・チュン・シット被告(左)/Paul Bersebach/MediaNews Group/Orange County Register/Getty Images

CNN)シェパードのミックス犬「ミーコ」はまだ1歳になったばかりだった。ぐんぐん成長して体格は成犬に近くなり、人の腰の辺りにあるおやつ袋に鼻先が届くほどになっていた。

カリフォルニア州に住む飼い主のアレクサンドル・コスチュケビッチさんは、インスタグラムで「ハッピーK9アカデミー」を見つけ、オーナーのクウォン・チュン・シット被告(54)の訓練を見て、ミーコのトレーニングを任せることにした。

ところがミーコをシット被告に預けた数日後、信じられないメッセージが届いた。ミーコが死んだという内容だった。

若くて元気いっぱいだったミーコの不審死は、当局が捜査に乗り出すきっかけとなった。

シット被告と交際相手のティンフェン・リウ被告(24)は先週、有罪評決を言い渡された。シット被告は約10頭の犬を死なせたなどとして動物虐待の罪に問われ、リウ被告は死んだ犬たちの火葬に関与した罪で有罪となった。オレンジ郡地方検察によると、シット被告は犬たちを小さなケージに押し込めたまま高温のバンの中に放置して熱中症で死なせた後、飼い主になりすまして業者に火葬を依頼していた。

2人の量刑は7月10日に言い渡される。検察によると、シット被告は禁錮約14年、リウ被告は同4年を言い渡される可能性がある。

衝撃のメッセージ

ハッピーK9アカデミーのインスタグラムでコスチュケビッチさんが見た犬たちは、みんな楽しそうで、訓練も行き届いているように見えた。しかしミーコを預けてからわずか3日後の2025年6月28日、シット被告から衝撃のメッセージが届いた。

「大変残念なお知らせをしなければなりません。ミーコが昨晩、休んでいる間に安らかに亡くなりました。苦しんだり暴れたりした様子はなく、本当に予期せぬ出来事でした。私も深い悲しみに暮れています」

「心ばかりですが、トレーニング費用は全額返金し、別途補償もさせていただきます。遺体は丁重に火葬しました。ご準備が整うまで、私が責任を持って遺灰をお預かりします」

あり得ないメッセージだった。ネット上ではシット被告の評判は良く、グーグルの口コミでは6年間で40件以上の5つ星を獲得。「最高に満足」「訓練する犬たちを本当に大切にしてくれる」などのコメントが書き込まれていた。

裁判書面によると、コスチュケビッチさんは事情を確認しようとシット被告に電話した。しかし一方的に電話を切られたことから、アーバイン警察に通報することにした。

さらに10頭の死が判明

捜査に乗り出したアーバイン警察は、シット被告が預かっていた別の1頭も死んでいたことを突き止めた。死骸を引き取った火葬業者は、捜査当局からの連絡を受けて火葬を見合わせた。

同社の従業員の証言から、この業者がわずか1週間前にもシット被告からさらに1頭の犬の死骸を引き取っていたことが分かった。さらに、シット被告が別の業者にも2頭の火葬を依頼していたことが明らかになり、これで死んだ犬は5頭になった。

自宅を訪れた捜査員に対してシット被告は、「朝目が覚めたら4頭の犬が全部死んでいた」などと供述した。

警察はその後の捜査で、シット被告らが計11頭の犬について、4業者に火葬や死骸の処分を依頼していたことを突き止めた。

シット被告は動物虐待証拠隠滅など19件の罪で有罪評決を言い渡された。

火葬を免れた犬たちの中には、もうすぐ3歳になるピットブルもいた。飼い主の女性が動かなくなった愛犬に対面して別れを告げたのは、3週間の訓練を終えて帰宅するはずの日だった。

獣医師による検視の結果、犬たちの死因は8頭が高体温症と熱中症、もう1頭は「硬い物で殴られたような頭部の外傷、急性脊椎損傷、脚のらせん骨折」と断定された。

シット被告の貨物用バンを捜査員が調べたところ、「漂白剤に強烈な糞尿臭」が入り混じった悪臭がしたという。

翌日、警察がシット被告の自宅と車両を捜索した結果、バンの後部に固定されていないケージが9台乗せられているのを発見。自宅の捜索中には、死んだ犬がもう1頭いるという情報が入った。

交際相手のリウ被告は、犬を火葬場へ運ぶ手助けをしたとして、犯行に加担した罪などに問われた。

高評価の陰に隠れた実態

シット被告のハッピーK9アカデミーはSNSでは高評価を獲得していたが、捜査の過程でそうした評判の陰に隠れた実態が浮かび上がった。

裁判資料によると、25年5月、4歳のベルジアン・マリノア犬「マックス」を預けた女性は、6日目にシット被告から、マックスの足に出血を伴う傷があると連絡を受けた。引き取りに行くと、バン後部の狭いケージに押し込められたマックスを発見。マックスはひどい悪臭を放ち、まともに歩くこともできない状態で、体には9〜10カ所の傷があった。

21年には2匹の犬を預けた飼い主が、訓練の中断を決めて引き取りに行ったところ、バンいっぱいにケージが積み重ねられている光景を目撃したという。犬たちは激しくあえいでいたにもかかわらず、水を飲むことができない状態だった。

シット被告側は裁判の中で、犬たちを死なせる意図はなかったと主張している。これに対して検察側は、高温の車内に犬たちを放置すればどうなるかは知っていたはずであり、被告は「自らの過失を認識しながら気に留めなかった」と指摘した。