タイヤは重いし路肩に寄せても邪魔になるし……大型車のパンクは想像以上に大変な事態だった

この記事をまとめると
■トラックのパンクは運行や納品スケジュールにも大きな影響を及ぼす
■ダブルタイヤは異常に気付きにくく空気圧不足による発熱やバーストの危険性が高い
■ベテランドライバーは日常点検やトラブル発生後の対応で二次被害の防止に努めている
パンクをしても即タイヤ交換とはいかないトラック
トラックのパンクは一大事だが、本当に厄介なのはパンクしたあとなのだ。乗用車のパンクなら、路肩に止めてロードサービスを呼ぶ、場合によってはスペアタイヤに交換したり、応急用のパンク修理キットを使うという流れを想像しやすい。しかし、トラックのパンクはそこまで単純ではない。
車両が大きく、積み荷が重く、止まる場所が限られ、さらに納品時間や荷主への連絡まで絡んでくる。つまりトラックのパンクは、タイヤだけの問題ではなく、運行全体を揺るがすトラブルなのである。

まず、ベテランドライバーはパンクを事前に察知できるのかという話だが、完全に見抜けるわけではないが、違和感に気づく人はいる。たとえばハンドルが微妙に取られる、いつもより車体が重く感じる、段差を越えたときの揺れ方が片側だけ違う、ミラーで見たタイヤのつぶれ方に違和感があるなど、いつもと何かが違う些細な変化から気が付くことができるドライバーもいるのだ。
しかし、パンクはいきなり訪れると思ったほうがいい。とくに後輪のダブルタイヤは厄介で、片方が空気圧不足になっても、もう片方が支えてしまうため、すぐには気づきにくい。そのまま走ると残った1本に負担が集中し、熱をもってバーストにつながることもある。

トラックのパンクで怖いのは空気圧不足と発熱である。大型車は荷重が大きいので、空気圧が低い状態で走るとタイヤの側面がたわみ続ける。たわむということは、ゴムが繰り返し曲げられて熱をもつということだ。これが高速道路で続くと内部の構造が傷み、突然破裂する。だからベテランほど、出発前の目視だけでなく、タイヤの張り、接地面、サイドウォールの膨らみ、異物の刺さり方を気にするというわけだ。
前述のとおり、しかし本当に厄介なのはパンクした瞬間よりそのあとである。まず大きなトラックほど安全に止められる場所が少ない。高速道路なら路肩に寄せるだけでも危険だし、一般道でも大型車が安全に停車できるスペースは限られる。荷物を積んだまま不用意にジャッキアップするのも簡単ではない。車重に加えて積み荷の重さがあるため、使うジャッキも乗用車とは別物だ。地面が柔らかければジャッキが沈むし、傾斜があれば車体が不安定になる。そのため、現場でのタイヤ交換は、単にナットを外して付け替える作業ではなく、車両をどう安全に保持するかが大きな問題になる。
パンク後の判断がその後の命運をわける
さらに、トラックのタイヤは重い。ホイール付きのタイヤは人がもち上げられる重さではなく、とくに大型用になると扱いにはかなりの力とコツがいる。ホイールナットの締め付けトルクも大きく、緩めるにも締めるにも専用の工具が必要になる。しかも締め付け不足は脱輪につながり、締めすぎも部品に負担をかける。交換後に一定距離を走ってから増し締め確認が必要になることもあり、パンク修理はその場で終わりではないのだ。

こうしたふいに訪れるパンクは運行管理の面でも大きな問題が出る。納品時間に間に合わないとなれば、まず会社や配車係に連絡し、荷主、納品先、場合によっては次の積み地にも影響が及ぶ。冷凍車や冷蔵車なら庫内温度の維持も気になるし、時間指定の荷物なら遅延報告のタイミングも重要になる。こうしたトラブルに対してベテランほど判断が早くなる。
自力で何とかできるのか、ロードサービスを呼ぶべきか、車両を動かせる状態なのか、代車や横もちが必要なのかを切りわける。焦って走り続けるより、被害を広げない判断のほうが大切だと知っているからだ。
また、パンクしたタイヤの位置によって深刻度も変わる。前輪は操舵にかかわるため、異常が出ると車両の挙動に直結する。後輪のダブルタイヤは気づきにくい反面、発見が遅れると隣のタイヤやフェンダー、泥除け、ブレーキ周辺まで傷めることがある。バーストした破片が荷台下の配線やエア配管を破損させることもあり、そうなると単なるタイヤ交換では済まなくなる。

意外と知られていないのは、パンク後の処理にもドライバーの経験が出ることだ。安全な停車位置の選び方、三角表示板や発炎筒の使い方、後続車への見せ方、ロードサービスへの現在地の伝え方、積み荷の状態確認、納品先への説明。そのひとつひとつが、二次事故やクレームを防ぐための仕事になる。
だからトラックドライバーはタイヤをただの消耗品として見ておらず、空気圧、摩耗、偏摩耗、傷、発熱、荷重、道路状況。それらを毎日の運行のなかでチェックし続けているのだ。




