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特注理由は新しいタイヤをテストするため

3t近い巨大クーペを突き動かすのは、6.0LのV型12気筒ツインターボエンジン。このマイバッハは、「新しいタイヤをテストするため」特注したと、当時のドイツ人は主張した。アメリカ人ラッパー、ジェイZのミュージックビデオでも、名脇役を務めたが。

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マイバッハ・エクセレロの佇まいは、ショーカーそのもの。映画「スター・ウォーズ」に出てきそうに見えなくもない。ドアハンドルの形も、通常と異なる。ところが、ドアは普通に横へスイングし、豪華なレザー・スポーツシートが迎えてくれる。


マイバッハ・エクセレロ(2005年/ワンオフモデル)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

シートベルトは4点式で、その後方にはヘルメットが用意されている。それでも、ダッシュボードやセンターコンソールは、2002年のリムジン、マイバッハ57の雰囲気へ通じる。ナビが動くモニターが備わり、クルーズコントロールのレバーも見える。

シートへ腰を掛けても、印象は少し昔のマイバッハ。強い驚きがあるとはいえない。

地平線を射抜くように突き進むボンネット

エクセレロは、公へ姿を表した回数が少なく、ご記憶の方は多くないかもしれない。現在は、ドイツ国立自動車博物館に収蔵され、しっかり走れる状態が保たれている。

長いクランキングを経て、V12エンジンは轟音とともに始動。第二次大戦を戦ったレシプロ戦闘機のように、周囲を威圧する。アイドリング時の振動は激しく、特注の内装トリムがガタガタ震える。いわゆる、より高級なメルセデス・ベンツではない。


マイバッハ・エクセレロ(2005年/ワンオフモデル)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

シフトセレクターは、当時のマイバッハのもの。発進時のアクセルレスポンスは想像よりマイルドで、リムジンのよう。しかし、ターボブーストが高まるにつれ、息を呑む回転上昇が始まる。サウンドも、レーシングカーのような高音の咆哮へ転じていく。

そのまま右足を傾け続ければ、地平線を射抜くように長いボンネットが突き進む。その勢いへ言葉を失いつつ、タイヤは2005年当時のままだと思い出し、力を抜いた。

公道で全力を引き出せるのは、ほんの束の間

拍子抜けするほど、運転はしやすい。ステアリングの反応は不安なほど鈍いが、エアサスペンションが組まれ、乗り心地は素晴らしく快適。運転席からの視界も、充分広い。

全長は5890mmあり、カーブでの扱いには慣れが求められるものの、ヘアピンカーブへ臆せず飛び込めそう。超貴重なワンオフモデルだが、全力を引き出せる自信は程なく湧いてくる。0-100km/h加速は4.4秒で、公道の場合はほんの束の間だけだが。


マイバッハ・エクセレロ(2005年/ワンオフモデル)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ドアミラーは細いステーで支えられ、いかにも空気抵抗は小さそう。ガソリンを圧送する、燃料ポンプの唸りが車内へ響く。リアサスペンションは、不意にシューッと鳴く。

コンプレッサーは備わらず、エアコンは動かない。ダッシュボード上には、操作パネルがあるけれど。少なくとも、パワーウインドウは滑らかに動き、涼しい風は導ける。燃料キャップは、アウディTT用が流用されている。

フルダとの提携に一切の躊躇はなかった

このクーペの誕生へ至った、経緯は非常に興味深い。遡ること2005年、ドイツのタイヤメーカー、フルダ社は「カラット・エクセレロ」という新しいタイヤを開発。その高性能ぶりを証明するため、超高速なモデルが必要だと考えた。

同社は既に、ポルシェ911をベースにしたゲンバラ993 エクストレモを製作し、スポーツタイヤのPRを展開していた。1938年には、アウトバーン向けのタイヤを宣伝するため、マイバッハSW38 ストロムリーニを特注してもいた。流線型のボディで。


マイバッハ・エクセレロ(2005年/ワンオフモデル)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

2000年に迎えた創業100周年の記念式典では、フルダ社の幹部はそのストロムリーニへ注目してもいた。マイバッハ・ブランドは、2002年に復活したばかり。21世紀にステロイド剤で増強されたメルセデス・ベンツが選ばれたとしても、不思議ではなかった。

マイバッハ側も、フルダとの提携に一切の躊躇はなかったという。かくして、度肝を抜く特注ワンオフモデルの開発はスタートした。

この続きは、マイバッハ・エクセレロ(2)にて。