『リボーン』残された謎を総括 腹違いの兄弟説、タイムリープ、実は入れ替わっていない?
高橋一生主演ドラマ『リボーン ~最後のヒーロー~』(テレビ朝日系)が6月9日、いよいよ最終回を迎える。結局ラストまで明かされることがなかった物語の根幹である、根尾光誠が野本英人(高橋一生・一人二役)に転生することになった階段で突き落とした人物は誰なのか。そして現世のもう一人の根尾光誠がこれほどまでに商店街を苦しめる理由とは何か。他にも転生の真相や、消化不良に終わっている根尾の父親の存在など、現状どんな謎が残されているのか、最終回を前に総括してみたい。
参考:高橋一生、『リボーン』で意識した理想の座長像 「周りが語ることで主演が形作られる」
光誠と英人は本当に入れ替わっているのか
まず根本的な問題として、光誠と英人が本当に入れ替わっているのか、ということ。これまで物語の縦軸として、根尾光誠の中身が実は英人ではないかということを匂わせ続け、英人も現在の光誠の中身はオリジナル英人だと決めつけて物語が進んでいる。だからこそ、なぜ光誠が故郷のあかり商店街と現在の英人を苦しめるのか、というのが最大のミステリーとなっている。
この世界の光誠が英人だと思わせる描写として、本来の光誠はハンバーガーをナイフとフォークで食べていたところ、転生後の光誠は手掴みで食べていたというのがある。ただこれに関しては中身が英人でなくても多くの人はそうするはずで、どちらかといえばこれは元の光誠ではないことを強調した描写で、中身は英人以外の可能性はある。
ただ、第8話で光誠=英人説が確定したのではないかと大きな話題となった。あかり商店街会長にして英人の父・野本英治(小日向文世)に光誠が直接電話をかけて立ち退きを説得した際に、合意をしたら1億円の報酬をもちかけるも、英治から「お断りします! 誰もが金にふれ伏すわけじゃない。一体どうしたら君のような人間が出来上がるんだ? 親の顔が見てみたい! 私は君が哀れでならない」と言われ、光誠は苦笑いし「いや驚きました、あなたにそんなこと言われるとは」と何かショックを受けたような、もしくは呆れたような反応を見せた。元の光誠なら「そうですか、残念です」と無表情で電話を切りそうだが、「あなたにそんなこと言われるとは」という返答は中身が英人で2人が親子であることを感じさせる演出だ。ただ、あれだけ金遣いが荒く商店街に迷惑をかけている英治が自分を棚に上げてよく言うなと感じるし、大企業の社長に対し挑発的で高圧的な態度が妙に引っかかる。
中身が英人だった場合、いつ光誠に転生したのか。元の世界の英人は不慮の事故で亡くなったとされ、この死因はハッキリと言及はされていないが、光誠が転生することになる2012年に更紗(中村アン)を庇って心肺停止状態になった事故が死因だとすると、元の英人は2012年までの歴史しか知らないはずなのに、そこから現在に至るまでなぜ光誠と同じ行動と歴史を辿ることができているのかという疑問がある。死が同時なら分かるが、光誠が命を落とすのは数十年のタイムラグがある。しかも光誠の死後ではなく、現役で働いているタイミングでの入れ替わりだ。ここをどう辻褄を合わせてくるのか。
第8話で元の歴史にはない英人が、商店街近くのスーパー蒼萬の土地を買って住民たちと移住しようと画策していた。これは光誠が買収し妨害したことに、土地が欲しいのではなく、商店街の住民もしくは英人に何らかの感情を持っているとしか思えない。2012年以降のことは知らないはずなので、光誠を恨む理由はとりあえずない。
考えられるのは、英人が読んでいた「未来の記憶」に「歴史を変えた成功を得たものは、その代償を払う日が来る。その代償は命である。」というルールがあり、歴史を変えようとすると頭が痛くなるなど身体に異変が起きることなどから、自分の意志に反しても決められた歴史に沿うような選択肢をさせられてきたという考えもできるが、英人が何度もタイムリープしているのなら話は変わってくる。
第2話で英人に転生した光誠が、英人のことを知るために部屋の本棚を見ると、「タイム・マシン」「タイムトラベラー」というタイムリープを匂わせる本だけでなく、「金財力」「心理学」「クズ人間の取扱い説明書」「記者ハンドブック」などの社長業を学ぶような本、極め付けは2012年に「丸山透の国際情勢2021」という本が存在している。これは将来を展望した本なのか、それとも未来から持ってきたものなのか。何かまとまりのない本棚に見えるが、もともとSF好きの青年が商店街を活性化させるために本でいろいろ学んでいたと捉えるか、それとも何度もタイムリープすることで必要なスキルを学んでいたと考えるか。
もともと英人は国立大学卒業後に大手企業に就職が決まっていたが、父の闘病中に母が急死したため、クリーニング店を継ぐことになった人物なだけに、もともと野望を持った人間なのかもしれない。商店街の人たちは英人がいうならと頼りにしていることからも、転生した英人が今の商店街を守ってきたように、2012年以前の英人も何度も商店街を救ってきたと考えると、これまでにも何度もタイムリープして救ってきた可能性もあり、商店街にこのまま居続けると、天災や大きな事件に巻き込まれる未来を知って、住民を救うためにの行動しているのかもしれない。
更紗のためのタイムリープ?
もう一つ考えられるのが、更紗が幸せになるために何度もタイムリープをしている説。本来なら更紗に物が倒れて亡くなるところを英人が守り犠牲になったとか、父・金平(柳沢慎吾)が自殺して光誠を突き落とすような不幸な人生を変えてみたり、絵画で有名人にさせてみたり。そう思うと、もし光誠に転生した英人が現在の英人を徹底的に追いんでいるのは、結局更紗を自分のものにできない嫉妬から来るものなのだろうか。しかしプロポーズから14年間放置なのはあまりにも長すぎる。ここにも何か答えがあるのだろうか。
しかし、これだけ本を読んでいれば、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でも一説として描かれる、本人同士が会うと宇宙が爆発するなどのタイムパラドックス説を気にしていると思うので、それが英人と会うことは避けていた理由の一つかもしれない。厳密にいえば本人同士ではないが、いや同一人物なのかも?
もし英人がタイムリープの技をマスターしていたとて、「タイムリープ」+「なりたい相手に転生できる」という2つの段階を踏まないといけないのが、いくらファンタジーにしてもハードルが高い気がする。
光誠を突き落とした人物
次に、誰が光誠を突き落としたのか。物語の中で光誠が疑ったのは、部下の友野達樹(鈴鹿央士)と更紗。友野は光誠の傍若無人ぶりに言葉にして怒りをあらわにしていた人物であり、最終回のあらすじでも友野が行方不明となり、犯人かどうかで進行していくということは犯人ではなさそうな気もする。元の世界では犯人だったかもしれないが、今の世界では相談相手となる英人がいることで一人で抱え込むこともないし、英人の妹・野本英梨(横田真悠)と恋仲で、一緒に福祉事業を立ち上げたことで、殺意は弱まっていそうな気もする。同じく更紗に関しても、金一が現世では命を取り留めたことで、彼女もまた以前よりは恨みが薄まっているはずで、どちらかといえば今は英人がタイムリープしていることへの興味のほうに惹かれている。
光誠の策略で会社倒産の危機に見舞わたライバル企業の一萬田(坪倉由幸)も候補に挙がるが、ただ現世では英人の視点だと印象が違い、英人のおかげで儲かる結果となっているので光誠への殺意はないと思われる。
ラスボスとして東郷ファンド代表の東郷(市村正親)も候補に挙がる。これまでは聞き分けのいい人物として描かれているが、あくまでも金に優しいというだけで、表向きは光誠の支援者でありながら、裏では一萬田とも接触している危険人物。光誠という飼い犬がいうことを聞かなくなったことで排除しようとしていてもおかしくない。そこで東郷からの紹介でNEOXISに入社し、役員になるも、冷酷な光誠についていけずに退職した土屋(阿部亮平)と、責任を負わされ経理をクビになった財部(関幸治)が東郷の命令で動いた可能性も考えられ、最終回の予告で光誠と対峙している後ろ姿は土屋が一番近い気もする。ちなみに、更紗の父が金平で財部の名前が銀平なのも何か関係しているのだろうか。英人説に関しては、元の世界ではその時に生存していなかったので物理的には除外されるが果たして。
腹違いの兄弟説
そしてドラマの中で未だ回収されていないのが、風間社長こと光誠の父・大誠(松尾貴史)の存在と、光誠と英人の腹違いの兄弟説だ。かつて風間社長が商店街を訪れた際、英人の母・野本遥香(宗清万里子)が彼を自宅に招き入れ、街では不倫があったと噂されていた。あかり商店街の秀子(岸本加世子)が英人に説明をしているのを英治が聞いて露骨に動揺し、遥香の遺影の前で英人に「母さんは絶対に人を裏切らない人間だった。だから何もなかったに決まってる」と英人に言う。とはいえ、不倫はしていなくとも家に招き入れたのは事実。
風間社長は暗い中、幼少期に別れていたにもかかわらず、英人の顔を見て「光誠?」とすぐに分かった。それならずっと影で光誠の活躍をチェックしていたのかと思いきや、雑誌を見るまで分かっていなかった不自然さ。
また風間社長が光誠を訪れたときに、「今すぐ僕の世界から消えてください」と突き放し、「これこそが根尾光誠」と光誠自身も感心するほどだったが、もし光誠の中身が英人だったらもう少し違ったリアクションをしそうな気もする。もし本当に腹違いの兄弟だとして、英人はその事実を知っていたとしたら、志半ばでクリーニング屋となった英人が社長として成功している光誠に嫉妬する理由にはなる。とはいえ、父が出ていき1人で生きてきた光誠よりも、家族の愛がある中で育ってきた英人のほうが幸せだったのではないか。
話を飛躍させると、風間社長が光誠に残した「あっちの世界へ行く」という手紙は、借金苦による失踪や自殺の暗示とも取れるが、SF的な別世界への旅立ちを匂わせているとも取れる。遥香の急死を背景に母親同士も過去に入れ替わっていたとしたら、英人の部屋にあったSF本などの本棚も、子供の頃に母親から話を聞かされていた影響だと考えると物語の背景がさらに広がる。
話を戻すと、風間社長のエピソードは、英人的には母親の風間社長への好意を知っていて、だから英治はカッコいい社長を演じようとしていた理由を察する話で、高い金品を身につけたり、その後の株で騙されるなどの理由を描いたものだとは思う。そしてこの嫉妬エピソードがあることで「親の顔が見てみたい」と嫌味を言うシーンの解釈が広がるが、本当にそれだけで終わるのか。
英治の金遣いが荒いのは、商店街の歴史が修正されないための運命の導きだとは思うが、英治が意図的にやっているようにも見える。英治に関して気になるのは、やはり初回冒頭。「英人行くぞ、母さん」と遺影を持って家を出るシーンでは、商店街に人気がないのでおそらく立ち退きで最後に家を出た描写だろう。そして、光誠と衝突するときの神社の階段では、引っ越ししてしばらく経っているのか、バッグはなく光誠が表紙の雑誌を手に持って光誠のビルを見つめ、そして光誠と衝突して死に至る。この2つのシーンは同じ世界線なのか。また、素直に考えると光誠と英治が入れ替わるシチュエーションだが、そのまま英治も亡くなることに何か意味があったのか。英治がこの場所で転生が行われることを知っていて訪れていた可能性も。いずれにせよ犯人が分かれば英治も生き残ることができる。見方によってはこれは英治のファイナルディスティネーションで、光誠はその運命に利用されたという発想は強引か。
他に気になる点は、毎回お馴染みの倒れる襖。「みんなが来てくれて母さんも喜んでるさ」と言った瞬間襖が倒れたり、英治が銀座通いをしていたとか、いい男を紹介するなど、お母さんのリアクション代わりに倒れているが、これに関してはお茶の間劇で“ご先祖様が怒ってる”レベルのネタだと考えられる。瑛人にハンバーガーを思いださせるためにタイミングよく登場した少年なども、決められた運命に抗えない神の導きと捉えておこう。
そして本棚にあった、「闇に消えたクラスター事件 野本二三夫」という本。野本というのは血族に作家がいるのだろうか?
「未来を変えたものはいずれ代償を支払う。その代償は命である」というルールで、中身が英人の光誠が歴史を変えた罪を全て被ったのなら、現英人が歴史を変えたわけではないので犠牲を伴わない。商店街の人たちにとっていい方向に改築された現在の世界線で中身が光誠の現英人は生き延びていく。元の英人はそれを託した、つまり最後のヒーローは現光誠のオリジナル英人のことなのかもしれない。もしくは、現在の光誠が元の光誠の発言や行動ができるのは、やはり本人だからと考えるのが手堅いのかもしれない。少しずつ変わっていっているのは、光誠が商店街の人たちを幸せにするゴールに向かって何度も転生しているから。今回物語で描かれた英人になったのは1巡目の光誠だったという考えならいろいろと辻褄が合う気がする。
ただ、残り1話でこれらの疑問に全て正解を出す時間はないと思われる。もっとシンプルに、転生の目的は、違う視点から自分が行ってきた行動をとらえ、過去の自分を見つめ直し、他者の立場を理解すること。その中で、光誠が商店街の人のために人情で行動するようになり、「状況次第で人はいくらでも変わってしまう」という持論をいい方向に導いていき、本当の意味でのNEOXIS企業理念「FOR THE PEOPLE」を体感したところで転生ゲームはクリアする。それは光誠が心肺停止状態の中で見た夢であり、ただ目覚めると変化した未来での続きで、瑛人としてリボーンした人生が続いていくような気もする。ただ更紗との恋だけはまだ正解に導かれていない気もするが、果たしてどんな答えが用意されているのか楽しみだ。(文=本 手)
