「生きるのがつまらなく」無期囚による殺傷事件あいつぐ千葉刑務所 拘禁刑導入から1年、浮かぶ矛盾
新しい刑罰「拘禁刑」が導入されてから、この6月で1年が経った。
受刑者の立ち直りや社会復帰を重視する流れが進む一方で、取り残されたような状況にあるのが「無期刑」の受刑者たちだ。
その現実を映し出すかのような事件が、千葉刑務所で相次いでいる。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●無期囚が刑務官をノミで襲う
2025年8月、千葉刑務所で服役中の受刑者(当時46歳)が、同じ部屋の受刑者(同51歳)を殺害する事件が起きた。
殺人の疑いで逮捕された受刑者は、2006年に勤務先の同僚女性の首を絞めて殺害し、無期懲役囚として服役していた。
千葉刑務所では2024年にも、受刑者が刑務官をノミで刺す事件が起きている。刑務所の関係者によると、この受刑者も、面識のない女子大学生をナイフで刺して殺害し、無期懲役刑が確定していた人物だという。
●殺人事件の1カ月前にはボールペン刺傷事件も
千葉刑務所は主に、初めて罪を犯し、刑期が10年以上の受刑者を収容している。なかでも、無期刑の受刑者が多いことで知られる。
注目されるのは、こうした事件が相次いでいることだ。
無期刑の受刑者かどうかは確認できていないが、昨年7月には30代の受刑者が同じ部屋の受刑者2人をボールペンで突き刺すなどして負傷させた。刑務所関係者によると、現場となったのは、その翌月に殺人事件が起きた部屋と同じ場所だったという。
さらに、直近2年間で受刑者が刑務官や他の受刑者に暴行を加えるなどの事件も複数起きている。
●拘禁刑の導入で浮かび上がる「無期刑の矛盾」
国は2025年6月、これまでの懲役刑と禁錮刑を一本化し、新たな刑罰として「拘禁刑」を導入した。
再犯者率の高止まりを背景に、受刑者の立ち直りや社会復帰を重視する政策への転換として位置付けられている。刑罰の種類が変わるのは、刑法が制定された1907年(明治40年)以来初めてのことだ。
こうした制度改革が進む一方で、「無期刑」を取り巻く矛盾も浮かび上がりつつある。
●「終身刑化」する無期刑、2024年の仮釈放はわずか1人
日本の無期刑は、本来、社会復帰の可能性を残した刑罰とされている。
実際、1975年には112人の無期受刑者が仮釈放され、2001年までは毎年2ケタの受刑者が社会に戻っていた。
しかし、2005年の法改正で有期刑の上限が30年に引き上げられたことなどから、近年は獄死する受刑者が多くなっている。
法務省の最新のまとめによると、2024年に仮釈放された無期受刑者はわずか1人。32人が刑務所の中で亡くなっている。
無期刑の「終身刑化」が指摘される中、千葉刑務所で相次ぐ事件をどう捉えるべきか。
●カメラ室での処遇に「怒り爆発」と主張
こうした状況について、昨年8月に同じ部屋の受刑者を殺害した無期懲役囚の男性は、受刑者らを支援する団体「救援連絡センター」の機関誌『救援』への寄稿で、次のような見解を記している。
「現在の刑務所の実情は、無期懲役刑の終身刑化ではなく、終身懲役化です。つまり、現在の無期懲役刑のほとんどは死ぬまで強制労働を強いられ、教育という名目のもと書籍の閲覧の自由を奪われ、刑務官に服従し続けなければならないのです。出所する可能性は決してゼロではないという限りなく可能性の低い言葉に騙されながら、死ぬまで懲役刑が続くことになります」
弁護士ドットコムニュースの記者が手紙で取材を申し込んだところ、昨年10月、男性から次のような返信が届いた。
「今回の私の事件は、過去における職員からの迫害等による影響ももちろんありますが、半年以上のカメラ室等により受けた怒りが爆発したという面が強いです」
男性は2024年にカメラで24時間監視される部屋に収容され、刑務所内でカメラ室での拘束が恣意的におこなわれていることを問題視してきたという。
●無期刑の終身刑化「死刑を望む」
また、別の手紙では次のようにも述べている。
「被害者に対する怨恨から起きた事件ではなく、刑務所で生きるのがつまらなくなった受刑者の、刑務所に対する腹いせのような事件だからです」
そして、裁判を控えた心境について、こう明かした。
「無期懲役の終身刑化の問題もあるため、私としては死刑の判決を望んでいます」
