「あんな事故、二度と」遺言通り約1億8千万円、神奈川・逗子市の崖崩れ対策に寄付 斜面崩落死亡事故に心痛め

神奈川県逗子市内で2020年、マンション敷地斜面が崩落し、県立高校3年の女子生徒=当時(18)=が土砂に巻き込まれて死亡した事故を巡り、同市在住で昨年亡くなった主婦・川上米子さん(享年89)の遺産約1億8千万円が今年5月、崖崩れ対策のため市に寄付された。事故に心を痛めた川上さんは、悲劇を繰り返すまいと「安心して市民が住むことができる街づくりのため使用すること」と遺言状に残した。その遺志を継ぎ、市は危険性が指摘される崖地の対策工事に乗り出す。
知人らによると、川上さんは東京都内の私立大学理事を務めた夫と会社員の娘を持ち、若いころに都内から逗子に引っ越して親子3人で暮らしていたという。
川上さんは糖尿病を患っていた夫のために毎朝、医師と相談して健康に気を遣った弁当を作るなど献身的に看病していたが、夫は21年に亡くなった。愛娘は20年にがんが再発し亡くなった。夫と娘を失った川上さんは身内もおらず、市内に事務所を構える司法書士の小保内(おぼない)洋子さんを頼り、遺言執行者を託した。
小保内さんは21年、川上さんの自宅で遺言状について聞いた際、川上さんは20年の崩落事故に言及し「あんな事故は二度と起こしてはいけない。崖崩れ対策に使ってほしい」と夫と娘が残した遺産を含め、自らの遺産全額を市に寄付する意向を示した。
18歳の命が奪われた悲劇への思いを川上さんは生前、周囲に繰り返していた。30年近く通っていた美容店「It‘s SEIKO」の小林鉄也店長は「『若い命が失われるのはつらい』と話していた。川上さんも娘さんを失って、重なって見えていたのかもしれない」と振り返った。川上さんは店に来るとアップルパイやお米を店員に差し入れたといい、小林店長は「多くの愛をかけてくれる人だった」と故人をしのんだ。
