サンローランやスターバックスも ブランドスタジオ を設立。広告主がストーリーテラーになる時代

記事のポイント ブランドスタジオの設立が加速し、マーケターがエンターテインメント制作に注力している。 視聴者の嗜好やストリーミング時代の変化に対応する必要がある。 スタジオ設立の成功は、ブランド独自のストーリーテリングと視聴者の受け入れによるところが大きい。
2024年を通じて、いくつかの大手ブランドが自社のブランドスタジオを設立し、近々テレビ番組や映画を展開すると発表した。マーケターたちは、単に広告を出すのではなく、エンターテインメントを創り出すことに関心を抱くようになったようだ。
ブランドとエンターテインメント制作会社の協業
ブランドがエンターテインメントの制作にさらに深く関与する唯一の方法は、スタジオだけに限らない。2024年12月、シュガー23と制作・配給会社のフィフスシーズン(Fifth Season)は、広告主らと協力して1億ドル(約155億円)規模の作品制作に共同出資する3年間のベンチャーを立ち上げた。これもまた、エンターテインメント制作会社がマーケターと協力する別のやり方である。これらはすべて、マーケターが人々が見たい番組の邪魔をするような広告を作ることから脱却し、エンターテインメントそのものを(潜在的に)生み出すための基礎を築くものだ。
「ブランドは何十年もの間、他人のストーリーを借りることに時間を費やしてきた」と語るのは、独立系エージェンシー、メディア バイ マザー(Media by Mother)でコンテンツおよびクリエイティブパッケージ部門の責任者を務めるポール・フリア氏だ。ネットワーク番組を中断するという手法は、視聴者が決まった放送時間に番組を見なくてはならなかった時代には理にかなっていたが、ストリーミングモデルが状況を一変させたとフリア氏は言う。「オーディエンスは選択肢もコントロールもすべて手にしている。自社スタジオを作ることで、この構図を逆転できる。資金を出して自社ブランドのDNAに根差したストーリーを作り、それをブランドに適した形でターゲット層に届けることができるのに、なぜ他人のストーリーを邪魔するために金を払う必要があるのだろう?」。
オリジナルコンテンツ制作への期待
フリア氏は、2025年にはさらに多くの大手マーケターが独自のブランドスタジオを立ち上げるだろうと予想している。マーケターは、どうすれば視聴を邪魔する広告から 「より魅力的なストーリーテリング 」へと移行できるのか定期的に尋ねている、とフリア氏は指摘した。スタジオの可能性やエンターテインメントのコンテンツ制作にブランドが関与する方法に対する関心が高まっているのを目にしているのはフリア氏だけではない。マーケターや広告代理店幹部、エンターテインメント業界の幹部は、2024年を通して安定した関心が維持されており、それが2025年にも継続すると予想していると話している。その関心がどの程度ブランドスタジオの発表につながるかは、マーケターの関心の度合いと、すでにスタジオを設立しているブランドの成功事例にかかっているだろう。
ブランドスタジオは、今はまだその仕事を軌道に乗せるための初期段階にある。しかしスタジオの幹部は、今年中にいくつかのオリジナル作品の展開を開始する可能性が高いと語っている。もちろん、ブランドが検討すべき世界的なバービーやレゴの映画はすでに存在するが、そうした大ヒット映画はブランドエンターテインメントの標準ではなく、むしろ例外である。
ロイヤルティ向上への可能性
映画やテレビ番組の制作には、30秒の広告を作るよりもはるかに時間がかかる。そして「このエコシステムには多くのコラボレーションが存在する」とシュガー23のブランド責任者、マット・ロトンド氏は説明した。またブランドがスタジオ設立を検討する際、ロトンド氏のような企業にとって大きな逆風となるのは、過去の「悪い経験」であり、「物事の仕組みに対する誤解」だと同氏は言い添えた。
ロトンド氏にとって、ブランドがブランドスタジオを設立し、テレビや映画の分野でより大きな影響力を持つことの魅力は単純である。すなわち「エンターテインメントはロイヤルティプログラムなのだ」と同氏は言う。「Netflixやパラマウントプラス(Paramount+)のサブスクリプションを継続する理由は、そこでしか観られないオリジナル作品があるからだ」。ブランドがそのようなエンターテインメントサービスを人々に提供できるようになれば、ブランドは潜在的な消費者とさらに深いつながりを持つことができ、そして最終的にはロイヤルティの向上を導くという仮定が成り立つ。
サンローランはゴールデングローブ賞を受賞
一方、今年注目すべきもののひとつに、2023年に発表されたブランドスタジオがある。フランスのファッションメゾン、サンローラン(Saint Laurent)は、2023年4月に独自の制作会社サンローランプロダクションズ(Saint Laurent Productions)を立ち上げた。今年1月初めに行われたゴールデングローブ賞(Golden Globes)でNetflixの『エミリア・ペレス(原題:Emelia Perez)』がミュージカル/コメディ部門の最優秀作品賞を受賞したのを目にした人は、ブランドが出資した映画が大賞を受賞した光景を目撃したことになる。セレーナ・ゴメスやカーラ・ソフィア・ガスコン、ゾーイ・サルダナが出演し、ジャック・オーディアール氏が監督したこの映画で、共同プロデューサーを務めたのがサンローランだった。
マーケティングアーム(The Marketing Arm)のエンターテインメント部門のバイスプレジデントで、プロダクトプレースメントおよびブランドインテグレーションを専門とするジェニファー・コーワン氏は「今は(以前とは)まったく異なる形で消費する非常に多くの異なる世代が存在するため、(マーケターは)つねに人々にリーチする方法を増やしたいと考えている」と述べている。
問題は、マーケターがブランドスタジオを作るために契約を結び続けるかどうかではなく、そのコンテンツがどのように受け入れられるかどうかだ。「ブランドがそのような質の高いコンテンツを提供できるなら、視聴者はそれが誰のものであるかを気にしないと思う」とフリア氏は言う。「マーケターはセールスマンではなく、ストーリーテラーになることに注力する必要がある」。
[原文:2024 laid the groundwork for brand studios. Will it start to pay off in 2025?]
Kristina Monllos(翻訳:Maya Kishida、編集:戸田美子)
