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強いストレスや緊張を感じると、「胃がキリキリと痛む」「つい暴飲暴食してしまう」「お腹をくだしてしまう」という方もいるのではないでしょうか。メンタル不調と密接に関係する<胃腸>について、漢方コンサルタントの櫻井大典さんは「じつは多くの現代人が、知らず知らずのうちに胃腸を冷やし、負担をかけてしまう食事と生活をしている」と指摘していて――。そこで今回は、櫻井さんの著書『胃腸をあたためると心の不調が消える: 心も体も自然と元気になる食事と暮らし』から、心と体が元気になるコツを一部ご紹介します。

【書影】弱ったメンタルを強くするために、胃腸をあたためて元気にする食事と暮らしをご紹介。櫻井大典『胃腸をあたためると心の不調が消える: 心も体も自然と元気になる食事と暮らし』

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メンタル不調のときはカフェインやアルコールはゼロに?

「メンタル不調のとき、コーヒーやお酒はダメですよね?」とよく聞かれます。

カフェインは、交感神経を刺激する興奮剤の働きを持っているので、ドキドキしやすい、不安になりやすいという人は、控えたほうがいいでしょう。

コーヒー、お茶、チョコレート、エナジードリンクなどのカフェインを含むものは、パニック発作が起きやすかったり、不安感が強いなら避けましょう。

特にエナジードリンクは、カフェインと糖をガツンと入れて体を強制的に覚醒、興奮状態にするようなものです。

心の元気をくれる飲み物ではなく、むしろ心を不安定にしてしまうのでおすすめできません。

コーヒーや紅茶を飲むことが、リラックスやリフレッシュにつながるという人もいるでしょう。

ちょっと情緒が不安定だったり、だるさが抜けないなという感覚があるときにも、1杯飲めばほっと落ち着いたり、シャキッとして元気が出るのなら、飲んでもいいです。

ただ、頼りすぎて大量に摂ると胃腸にも負担をかけることになり、交感神経も過度に興奮させてしまいます。

日本人の4人に1人はカフェインを150mg摂取するだけで不安定な気持ちになる、という研究データもあります。

コーヒー1杯に含まれるカフェイン量はおよそ80mgなので、1日2杯までを目安に、ゆっくりと香りも味わいながら飲みましょう。

緑茶には、イライラのもととなる熱を鎮める働きもあります。

気分のイライラに悩んでいるなら、コーヒーより緑茶を飲むようにしてみてください。

アルコールは“強い薬”、メンタル不調のときにはおすすめしません

お酒は、メンタルが不調なときは避けましょう。

アルコールによる高揚感で一時的に不安が解消されるかもしれませんが、効果が切れると反動でより不安に襲われるため、多量飲酒を続けてしまいやすく、その害は想像に難くありません。

加えて、お酒は高カロリーのものが多く、つまみも脂っこいものや生ものが多いため、体内に不要物を溜めることになり、体や心の不調につながります。

アルコールは古来から、一種の薬としても使われてきました。

うまく使えれば、血流改善、冷えの改善、食欲の回復などにも役立つし、気分をゆるめてリラックスさせる精神安定剤のような働きもしてくれます。

しかし、やはり“強い薬”なので、付き合い方をコントロールできるならよいのですが、メンタルが弱っているとどうしても、うまくコントロールできません。

ですから、今メンタルの不調を感じているなら、避けましょう。

私の漢方相談では、「お酒がやめられない」という人に対しては、まず、なぜやめられないのか理由を探っていきます。

そして、たとえばストレスや不眠など、お酒を求めてしまう根本原因を漢方薬などで改善していくことで、お酒を求める感情を減らしていけないか、とアプローチします。

自分でコントロールできないと感じている方は、専門家に相談してください。

水をたくさん飲む=健康にいいという思い込みを捨てましょう

「健康やダイエットのために、水を1日に2リットル以上飲んでいます!」

本当に多くの方から聞く言葉なのですが、これは中医学の観点ではおすすめできません。

水はたくさん飲めばいいわけではなく、また2リットル、3リットルなど数字を目安にして飲む必要もありません。

その大きな理由は、胃腸は“過剰な水分”を嫌うからです。

また、2リットルという数字の根拠も明確ではなく、身長、体重、体質なども違うのに、すべての人に必ず同じ量の水が必要なはずがないのがひとつ。

さらに、飲むものだけでなく、食べ物からも水分を摂っているのに、その分はカウントされていない点がひとつ。

こうしたことから、1日に必ず2リットルの水を飲む必要はないと考えます。

水は“のどが渇いたときに常温のものを1〜2口飲む”、これが基本です。

水は一気に流し入れない

水を飲む速度も重要です。

水を大量に飲んでいる人は、一気にガブガブと飲みがちですが、それでは飲む意味がありません。


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なぜなら、体が水を吸収できる速度を超えて入ってくると、水はただ体内を通過して尿になるだけだからです。

病院の点滴を思い浮かべてください。ポタ、ポタ、とゆっくり落ちるのは、体が水分を吸収しやすい速度にしているからなのです。

水を飲むときは、ひと口ごとにコップを置き、水がお腹に入っていく感覚を実感しましょう。

激しい運動で汗をかいた後や、何かの事情で長時間水を飲めなかったときも、一気に流し入れず、ひと口ずつ飲むことを意識してください。

お店で出てくる氷入りの水には、自分で対策を

胃腸は“冷たいもの”も嫌います。

だから、水は常温で飲むのがおすすめなのですが、そうお伝えしている身として難しいのが、飲食店で出てくる氷入りの水です。

私は冬はもちろん夏でも、「氷を入れないでください」とお願いしています。

伝えるタイミングがなくて氷入りで出されたときは、一度口の中に含んで少し待ち、キンキンに冷たい状態が少しやわらいでから飲むようにしています。

「真夏は熱中症にならないように、少し冷たいものを食べたり飲んだりしてもいいのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、そもそも人の体は夏になると、発汗などで熱を体外に放出しやすい状態になっています。暑さに対応するために、体が自然と冷えやすくなっているのです。

もちろん灼熱の屋外で作業するなら別ですが、涼しい室内にいるときにアイスやかき氷、冷たい飲み物を摂ると、胃腸は必要以上に冷えて、体温まで戻すのにかなりのエネルギーを使います。

エネルギーを消耗すると、夏バテを招きます。

ですから、胃腸を冷えたまま放置しないことが大切。冷たいものを摂ったときはそれで終わらせず、最後に温かいものを入れましょう。

甘味処でかき氷を食べたら、最後に熱いお茶が出てきますよね。このお腹を壊さないための知恵をお手本にして、胃腸をいたわりましょう。

※本稿は、『胃腸をあたためると心の不調が消える: 心も体も自然と元気になる食事と暮らし』(Gakken)の一部を再編集したものです。