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時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは兵庫県の60代の方からのお便り。子どもの頃、和式のくみとり式で怖かった自宅のトイレ。さらに、学校である噂を聞いて――。

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女3人の母子家庭

私のふるさとは「金魚の町」と呼ばれている。実際、住んでいた市営住宅の周りは金魚池に囲まれていた。ところが金魚はヘビの大好物。

道を歩いていると、しばしば大きなヘビが堂々と道を横切るのに出くわし、ギョッとさせられたものだ。

市営住宅は戦前に建てられた、木造2階建ての七軒長屋だった。「古い、狭い、汚い」と三拍子揃っていたが、その分家賃は安く母子家庭にはありがたかった。

1959年、父が交通事故で亡くなった時、姉2人は6歳と4歳、私は2歳。母は女手一つで三姉妹を育ててくれた。

長屋のトイレは和式の汲み取り式で、幼い私は落ちたら戻ってこられない、とトイレが怖かった。

だから小学校に上がった時、そんなただでさえ恐ろしいトイレにまつわる噂を聞いて震えあがったのだ。

「夜中にトイレに行くと、ヘビ女が便器から出てくる」

当時学校で大人気だった、楳図かずおの漫画「ヘビ女」シリーズが噂のもと。体中にウロコが生えていて、口が耳まで裂けた恐ろしいヘビ女……。

噂を聞いてから、私たち姉妹は夜中に一人でトイレに行けなくなってしまい、互いに起こし合って一緒にトイレに行っていた。

《ヘビ女》が出た!

そんな小学生時代、とある真夏の夜のことだった。いつものように長姉に起こされ2人でトイレへ向かう。姉が電気をつけて引き戸を開けた瞬間、「ギャー!」と悲鳴が。

ついにヘビ女が出た!と慄き、恐る恐るトイレをのぞき込むと……なんとそこには、大きなヘビがトグロを巻いていたのだ。換気のために開けていた小窓から入り込んだのだろう。

慌てて2階へ飛んで逃げ、母が蚊取り線香で煙攻めにしてなんとか追い出した。母はしみじみと言った。

「こんな時、お父ちゃんがいてくれたら……」

60年近く経った今でも、私はその時のことを夢に見てうなされる。

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