大相撲秋場所が開幕。剣翔のウエストは170センチ!そこには「夢と脂肪」が詰まっているらしい

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9月8日、大相撲秋場所が、東京・両国国技館で初日を迎えた。『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が今場所もテレビ観戦記を綴ります。

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前回「地獄を見てから這い上がり横綱になった照ノ富士の10回目の優勝。愛知県体育館「最後の場所」にふさわしい勝利。蔵前国技館での最後の優勝者は…?」はこちら

先場所10回目の優勝を果たした横綱・照ノ富士は休場

大相撲秋場所が9月8日に東京・両国国技館で始まった。先場所に引き続き15日間のチケットは完売だという。

先場所10回目の優勝を果たした横綱・照ノ富士は休場で、2大関、4関脇、2小結が揃った。照ノ富士の休場は、この夏の暑さと湿度で弱った大相撲ファンの体にこたえるほど残念だ。照ノ富士は糖尿病と巡業中に膝を痛めたことが原因の休場である。

今場所は千秋楽に立行司の木村庄之助が誕生日を迎えて65歳の定年になる。木村容堂が式守伊之助に昇格し、久しぶりに立行司が2人になった。

さて今場所は誰が感動の優勝をするか?大関・琴櫻の初優勝か豊昇龍の2回目の優勝が理想。しかし、豊昇龍は初日に先場所、照ノ富士と優勝決定戦をした前頭筆頭・隆の勝に押し出され、見せ場がなかった。

関脇・阿炎は前頭筆頭・翔猿にあっけなく敗れ、関脇・大の里は、物言いのすえ前頭2枚目・熱海富士に勝った。大の里は先場所9勝だったが、今場所2桁をあげれば大関への道が開けるかもしれない。大関になる力士らしい堂々とした相撲を、連日取って欲しい。

優勝にからむ力士として期待したい

10勝すれば大関に復帰できる関脇・貴景勝は元大関で前頭3枚目・御嶽海に負けた。頸椎が悪いという貴景勝が首を回す姿を見ただけで、私はハラハラする。私も頸椎が悪くて整形外科に通院し、先日、牽引がきつすぎて痛くなった。頸椎は繊細で微妙なのだ。

先場所、霧島は10勝できなくて大関に戻れなかったが8勝して関脇にとどまった。

優勝にからむ力士として期待したいのが、小結の大栄翔と平戸海、関脇から膝の大怪我で幕下まで落ちたが前頭7枚目まで戻ってきた若隆景。しかし、若隆景は、初日に前頭7枚目・美ノ海に押し出された。場所前には、大相撲のニュースや番組がいろいろ放送される。その中で31歳の美ノ海は淡々とした口調で話していたが、力のあるオーラを放っていた。新入幕の前頭16枚目・白熊と前頭14枚目・阿武剋も見逃せない。白熊は目標を「大の里との優勝決定戦」としている。同じ二所ノ関部屋なので対戦がなく、実現したらすごいことだ。

さらに、39歳の怪我をしても休場しない前頭10枚目・玉鷲が、様々な記録を更新するのも楽しみである。

個人的には、前頭2枚目・王鵬、前頭4枚目・正代、前頭8枚目・遠藤、前頭11枚目・佐田の海が勝ち続けてくだされば、私の夏バテと秋落ち(秋バテともいう)が劇的に良くなると思う。大相撲の聖地である両国とはるかに離れ、映画『翔んで埼玉』で「東京都ではない」と言われている町よりも遠くに住む孤独な老人の心身の健康のために、頑張って欲しい。

本物と同じ土俵を見てきた

場所前にJRの両国駅のところにある「-両国- 江戸NOREN」のビルに入り、飲食店街の真ん中にある本物と同じ土俵を見てきた。感動して何故か動けなくなった。

床にも土俵が描かれていて、外国人観光客たちが、それに気づかずに土俵を踏んで立ち話をしていた。傍の長椅子も休んでいる人たちでいっぱいだ。床の土俵で四股を踏んでみたかったが、人目がありできなくて残念だった。

9月7日にNHKBSの『大相撲どすこい研』で「土俵はマルくてカタい“道”」をタイトルに放送していたが、それを見て、私の感動がなんだったかを理解した。番組に登場した照ノ富士は「土俵は相撲道、土俵は道」と話し、「力士たちが守るべき場所だ」と語っていた。本物でなくても土俵は神々しかった。

この番組では、37歳の佐田の海が足の裏を鍛えていることを紹介していた。十文字の形の器具を足で掴んだりしていた。初日に実況の大坂敏久アナウンサーが「佐田の海の『夢は三役』はぶれない」と話していた。

自分の人生のためになる

またまた自分の健康の話で恐縮だが、50代の時に駅の階段を登れないほど膝を痛めて、会社を辞めざるを得ないと思ったことがあった。整形外科と接骨医院をあちこち回ったが、良くならなかった。ところが、自分に合う靴に出会い、歩けるようになった。その靴店の店員さんが、佐田の海のやっているような足の運動を教えてくれた。私の友人がその靴を見て、「水虫は治るのか?」と聞いてきた。よほど水虫に困っていたのだろう。

話を初日に戻すが、初日は力士への場所前のインタビューが、自分の人生のためになる。

琴櫻の「考え過ぎてもしかたないんで、自分らしく、やれることをやっていく」、豊昇龍の「いいことも、悪いことも、全部乗り越えてきたので」、そして、貴景勝の「強ければ戻る」だ。さらに、春場所に幕内最高優勝を果たしたが、足首の怪我で休場し十両となった尊富士の発言が伝えられ感激した。初日に足首の怪我にテーピングをせずに出てきて、テーピングをすることを「心の邪魔になる」と言ったそうである。足首が完全に治ると良いが…。

また、力士の言葉にはユーモアもあり、NHK『ニュースーン』(9月6日放送)の十両の剣翔の発言には爆笑した。力士の健康診断の模様が放送され、健康診断の項目にはないのに、SOON相撲部部長の能町みね子さんの希望で剣翔のウエストを計った。ウエストというよりもお腹回りと言ったほうが分かりやすく170cmもあった。同部副部長の赤井麻衣子さんが「ここには何が詰まっているのでしょう?」と聞くと、剣翔は「夢と脂肪」と即答した。お腹に対戦相手をのせて、土俵の外に出すので、この脂肪は勝つための武器なのだ。

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