「幼い頃から、先回りをして手出しはしないと決めていたんですよ。ひとり娘だとつい過干渉になってしまいがちですが、それだけはしたくないと思って」(撮影=玉置順子(t-cube))

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2024年上半期(1月〜6月)に『婦人公論.jp』で大きな反響を得た記事から、今あらためて読み直したい1本をお届けします。(初公開日:2024年02月15日)******5年前にソロ歌手として再デビューし、この1年は、全国6都市のコンサートツアーに、初エッセイ本の出版にとチャレンジの連続だった伊藤蘭さん。「勇気を出して流れに飛びこめば運は開けていく」と語ります(構成=内山靖子 撮影=玉置順子<t-cube>)

【写真】一時預かり中の、趣里さんの飼い猫たち

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<前編よりつづく>

夫と娘は別次元かも

昨年嬉しかったことは、趣里がNHK連続テレビ小説のヒロインに決まったことですね。女優デビューして10年以上、一つ一つの仕事に真摯に向き合って、経験を糧にして頑張ってきた結果が朝ドラにつながった。本当に良かったと思います。

10代の頃はバレエに打ち込み、イギリスに留学したにもかかわらず、ケガでバレリーナへの道を諦めることになり……。帰国した当初は、なんとなく冴えない顔をしているなと思ってはいましたが、私たちの前で泣いている姿は一度も見たことがありません。

後に、趣里が当時のことを語っている記事を読んだ時、「ああ、よっぽどつらかったんだな」と胸が痛みました。

それでも、幼い頃から、先回りをして手出しはしないと決めていたんですよ。ひとり娘だとつい過干渉になってしまいがちですが、それだけはしたくないと思って。その代わり、娘が何かを求めてきたら、いつでも応えられるようにと心がけてきました。


大切な家族のげんたとチュニ(伊藤蘭さんのインスタグラムより)

目下、豊さんと私はお互いのスケジュールの都合に合わせて、バラバラに『ブギウギ』を見ています。特に感想を言い合うわけでもなく、「見た?」「見た」と確認し合うスタンスで(笑)。

先日は、うちにあるテレビが2台とも映らなくなるというハプニングが起きて、大騒ぎ。「すぐ、テレビを買いに行こう!」ということになりました。

家族3人で同じ仕事をしているものの、豊さんと趣里は、私とは別次元の俳優だと感じる時もあります。作品にもよりますが、私はひとつの役になりきるまでに、何度も試行錯誤を繰り返して格闘するタイプ。でも、夫と娘の場合は、瞬時に何かが降りてきているんじゃないかと思うのです。

もちろん、時間を費やして、目の前の役柄について考え抜いていることもわかります。ですので、夫や娘が出演したものは、ドラマでも舞台でも一観客として楽しく見させてもらっていて。

趣里はすでに独立した暮らしをしていますが、家族3人がそれぞれに充実しているのは、ありがたいことです。


「いつかもっと歳をとったら、小さな役でいいので、豊さんが監督する映画にもちょこっと顔出しできたらいいなぁなんて思っています」

「ほっこりした時間」を大切にしたい

小さな幸せを感じる時ですか? そうですね……やっぱりお菓子を食べている時間でしょうか(笑)。とはいえ、流行りのスイーツに凝っているわけではありません。

仕事や家事で忙しい毎日のなかで、おせんべいやクッキーなど、自分の好きなお菓子を「美味しいなぁ」としみじみ味わう。そんなほっこりした時間にかけがえのない幸せを感じます。

夫も私も、おかげさまで今はまだ忙しい日々を過ごしていますが、この先、お互いにもう少し余裕ができたら、2人で生活を楽しむ時間も増やしていきたいですね。夫婦で旅行に出かけるとか、2人で一緒に料理を作ったりだとか。

お芝居の仕事でいうと、夫婦での共演は映画『少年H』で実現しましたから、いつかもっと歳をとったら、小さな役でいいので、豊さんが監督する映画にもちょこっと顔出しできたらいいなぁなんて思っています。

自分で言うのもなんですが、私は運がいいほうなのでしょうね。「どうしたらいいんだろう?」と悩んだ時でも、結果として好転する場合がほとんどです。

それは、私が生まれつき強運なわけではなく、たとえどんなに大変なことが起こっても、「これは、この先の人生がもっと良くなるための出来事だから」と考えているからかもしれません。そして、「絶対にいい結果になるに違いない」と信じてもいます。

仕事でも、家庭生活でも、何も起こらない人生なんてありえない。だったら、前向きに考えたほうがいいですものね。自分自身が幸せな気持ちでいれば、ハッピーな出来事がやってくる。そんな明るい心で、今年も過ごしていけたらと思います。