(イラスト:霧生さなえ)

写真拡大 (全3枚)

墓じまいは、家族や親戚の理解に加え、お寺や霊園との話し合い、費用の問題などがあり、手間がかかるのも事実です。お墓に関する専門家の2人が、皆さんの素朴な疑問に答えつつスムーズに行うための方法や手順をお伝えします(構成=島田ゆかり イラスト=霧生さなえ)

墓があった場所を「更地にする」他にも…

* * * * * * *

<1よりつづく>

Q. 目安となる費用が知りたい

費用の内訳は、「現在の墓地を更地にする費用」「新しく納骨する場所を用意する費用」「書類、役所での事務手数料」です。

墓地を更地にするには、1平米あたり10万円ほどが相場。重機が入れない場所や、田舎で広い墓の場合は費用がかさむこともあります。

費用の総額を左右するのは、なんといっても新しい墓所区画の購入費でしょう。個別区画でも、合葬タイプでも、樹木葬でも、区画を使用するための権利を購入する必要があります。

墓地には「寺院墓地」「民間霊園」「公営墓地」があり、さらに納骨方法も、夫婦や家族で使用する「個別型」、個々の骨壺を納める「集合型」、他人の遺骨と一緒に納める「合葬型」に分かれます。

費用を抑えられるのは公営墓地の合葬で、納める金額は数万〜20万円。年間の管理料もかからないところが多いのですが、倍率が高くなかなか当たらないうえ、遺骨がないと申し込みができないなどの条件があります。

霊園や納骨堂を選ぶ人に人気なのは、永代供養付きの墓。承継を必要とせず、寺院や霊園が遺骨の管理、供養をしてくれるシステムです。

合葬型を選べば、遺骨1人分あたり5万円からと比較的安価。金錢的負担が少ないのが魅力ですが、先祖の遺骨も納めるとなると、人数分の費用が発生することになるので注意が必要です。

また、合葬型の場合は、他人の遺骨と一緒になっているので、後から改葬できないということも覚えておきましょう。

どの種類の墓地でも、永代供養が付いた「個別型」は割高で、1区画の相場は40万円から。一定の契約期間(多くは三十三回忌)を過ぎたら、合祀されるケースがほとんどです。

樹木葬墓は少し安く、個別型なら20万円〜、集合型は15万円〜、合葬型で5万円程度を想定しておくとよいでしょう。

用意する書類にかかる費用は、数百円から数千円程度です。
(吉川さん)

寺院にある承継墓の墓じまい費用はざっくり計算して30万〜90万円くらいが目安です。

ただし、更地にする際、墓石が大きかったり硬度が高く粉砕が難しかったり、残土量が多い墓地だったりすると追加費用が必要な場合も。

また、墓から遺骨を取り出す際に魂抜きをする「閉眼供養」、新しい納骨先で行う「埋葬供養」にも費用がかかります。それぞれ3万〜7万円程度ですが、宗旨宗派不問の施設であれば任意で選択が可能です。

さらに、お寺を離れる際に支払う「離檀料」が必要な場合も。20万円くらい必要になることがあると覚えておくといいでしょう。

「散骨」という新たな選択肢もあり、合同散骨で6万円前後、個別の散骨で17万円前後から可能となっています。
(小西さん)

Q. お寺とトラブルにならない方法はある?

先祖の墓がお寺にある場合、「墓じまいをしたいが、お寺と揉めたくないので二の足を踏んでいる」という人もいます。実際は、墓じまいに対して誠実に対応してくれるお寺がほとんどなので心配しすぎる必要はありません。

ただ、少数派ではあるものの、驚くようなことを言ってくるお寺があるのも事実です。

揉めごとのほとんどは、金銭トラブル。「墓じまいをしたいと連絡したら、法外な離檀料を請求された」「遺骨を取り出すのに別途費用がかかると言われた」などがあり、先日も「骨壺を取り出すのに1つあたり50万円を請求された」という相談を受けたところです。

そのような費用は、法的にも支払う必要はなく、さすがに私も呆れてしまいました。

実は、墓石撤去費用の見積もりをお寺が出してくるケースもあります。しかし、見積もりは本来、石材店からもらうもの。以前、私が相談を受けたケースでは、内容をよく見ると、ずいぶんと水増しされていることがわかりました。

個人で対応する場合は、適正価格を知るために、いくつかの石材店で見積もりを取ることが重要です。

それ以外にも、お寺側から納得のいかない金額を提示された際は、「いったん持ち帰らせてください」と伝え、専門家などに相談しましょう。過去には「100万円近い離檀料を請求され、断ったら改葬を認めないと言われた」といったケースもありました。

遺骨は寺の所有物ではなく、墓を使用している人のもの。改葬の権利も使用者にあり、お寺側に墓じまいを認めない権利はありません。

とはいえ、これまでお世話になったお礼としてお布施(5万〜20万円ほど)を包むのが礼儀とされています。

最近は「遠方に住んでいる」「住職に直接会いたくない」などの理由で、墓じまいしたい旨を手紙や電話で済ませる人もいるようですが、できれば一度はお寺に出向き、これまでの先祖供養に感謝を伝えるくらいの気持ちは持っておきたいものです。
(小西さん)

基本的には、ほとんどの寺院が墓じまいに対して理解を示してくれますが、なかには檀家が減ることを危惧して引き留めようとする寺院もあります。

離檀料という名目のお布施を要求する寺院もあり、その金額でトラブルになることもしばしば。

一方で、寺側から見れば、墓を放置されるのも困るのです。実際、承継者がわからずに無縁墓となってしまう墓も増えています。

それなら墓じまいをして、きれいに更地にしてもらったほうがいい、と考えるお寺も少なくありません。まずは菩提寺の住職に相談してみましょう。
(吉川さん)

<3へつづく>