(写真提供:Photo AC)

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総務省統計局が行った「令和2年 国勢調査」によると、「単独世帯」の割合は他世帯と比べ最も高く、2015年より14.8%も増加したそう。そのようななか、「一人暮らしのときは、家族の大切さなど考えたこともなかった」と話すのは、愛妻・ゆかちゃんと2人の息子「ちびれる君」たちと暮らすお笑い芸人・あばれる君。今回は、あばれる君の誠実でまっすぐな人柄があふれる初のエッセイ『自分は、家族なしでは生きていけません。』から、一部引用、再編集してお届けします。

【イラスト】息子とおでこをつけて寝る。呼吸と鼓動が直接伝わってくる。置くだけで充電できるiPhoneになった気分。

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なにをしても時間が余った

養成所を卒業し、無事に事務所の預かりになりプロの芸人としての一歩を踏み出すことができました。

しかし、バイトをしてもなにをしても時間が余ります。

ゆかちゃんは名門病院に勤め、夜勤日勤の繰り返し。

とくに、日勤は電車で座って行きたいという理由でかなり早い時間に家を出て行きました。

飲み会、アルバイト、ギャンブルの日々

そんな中、僕は夜通しの飲み会からの帰り道、出勤するゆかちゃんと最寄り駅ですれ違い肩をすくめる日々でした。

午前中で終わる公衆トイレ掃除アルバイトの日給は8000円。


『自分は、家族なしでは生きていけません。』(著:あばれる君 イラスト:和田ラヂヲ/ポプラ社)

時間の余る午後は、パチンコに行きます。

稼いだお金は30分ぐらいで無くなってしまいます。

家賃の支払いは折半からゆかちゃん持ちになっていきました。

たまに、ギャンブルで成功して2万〜3万円を自慢げにゆかちゃんに渡すと、ゆかちゃんは戸棚にはしまわず枕元にそのまま置いておくのでした。

多分、すぐにお金が必要になって、僕がせびりに来るのがわかっていたのでしょう。

案の定、渡したお金を僕は次の日、ポケットにしまうのでした。

ゆかちゃんが泣いた

とある日、日勤から帰ってきたゆかちゃんは、感情が溢れてしまいます。

なんでお金がないのとシクシク泣くのです。

稼いだ日給は、パチンコで無くなったと伝えました。

ハードな日勤と夜勤を繰り返し、仕事で人を支えて、家に帰っても収入が安定しない僕を支えなくてはならないのは本当にかわいそうだなとそのときはじめて思いました。

気づき

恥ずかしながら、それまで人の気持ちを考えるなんてことはまったく頭になかったのです。

ゆかちゃんの夢まで俺が背負ってるんだから働いてくれという傍若無人な発想でした。

ゆかちゃんのやさしさも限界に近づいていました。

そのとき、自分の人生、本気でやらなくてはいけないと気づくのです。

※本稿は、『自分は、家族なしでは生きていけません。』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。