ハイエース対策の豪華仕様も! 日産キャラバンがマイナーチェンジを実施…7速ATを採用

写真拡大

■車名が「キャラバン」単独名に戻った!

2012年6月に登場した現行型キャラバン。商用が中心のモデルはモデルライフが長くなる傾向にあるため、まだまだ現役だ。2021年10月20日にはビッグマイナーチェンジを実施。ガソリンエンジン搭載車が改良され、追って新投入のディーゼルエンジンが加わるようだ。

価格は、バンが241万2300~321万2000円。ワゴンが278万4100~409万7500円。マイクロバスが344万4100~375万4300円。

現行のE26型の特徴は、ライバルであるハイエースを超える、小型貨物車4ナンバーバンクラスナンバー1となる3050mmの最大荷室長を確保していること。現在でもキャラバンが最長で、広く使い勝手のいい荷室空間は多くのユーザーに支持されている。

【画像】新しいVモーショングリルでイメージ一新!改良版キャラバンを写真で見る

変更点は多岐にわたるが、まずは車名から。従来は「NV350キャラバン」と名乗ってきたが、サブネームのNV350がなくなり従来の「キャラバン」が正式名称として使われることになった(継続販売されるディーゼルエンジン搭載車は「NV350キャラバン」のまま)。

ヨーロッパの日産商用車系はルノーとのアライアンスを強化。彼の地では小型バンのタウンスター(Townstar)がすでに発表されている。事業構造改革「Nissan NEXT」に基づいて導入される最新のバンモデルとなったのだ。トヨタのタウンエースによく似た名前のタウンスターは、NV250とe-NV200の後継モデルとして欧州市場に投入。タウンスターに「NV250」が付かなかったように、現行のNV400とNV300の後継モデルの名称変更も発表されている。NV400はインタースター(Interstar)、NV300はプリマスター(Primastar)となり、今後導入予定だ。

そして外観。特にフロントグリルのデザインを変更したことがポイントだ。日産はVモーショングリルを水平展開しているが、新型キャラバンも新デザインのVモーショングリルとバンパーを採用している。もちろんグリルのセンターには、日産の新しいコポレートマークが輝き、新生日産を主張。Vモーションのクロームメッキグリルもイメージを変えた、グリルの横バーに合わせて左右にピッチを変えたブロックが断続するタイプでより迫力が増した。

バンパーはY字を横にして合わせたようなデザインで安定感を強調。全体的にミニバン的なデザインに変更されているが、デザインチームはもっと手を加えたかったようだ。最新のアリアやノートオーラはシグネチャーランプをVモーションとして取り入れているが、これをやるにはヘッドライトの変更が必要になるという。バン用のシグネチャーランプを取り入れたライトは、コストが見合わず今回は採用を見送ったようだ。


■ハイエースを意識した(!?)新グレードを投入

ハイエースを追撃し、シェアを拡大するには、豪華な仕様を好む傾向の個人事業主である“一人親方”を取り込む必要がある。そこで日産は、従来の最上級モデルの「プレミアムGX」のさらに上を行く「グランドプレミアムGX」を新たに設定した。特徴はダーククロームメッキの採用と装備の充実である。その狙いは、ハイエースの特別仕様車で人気が高い「スーパーGLダークプライム&#;8545」と酷似している。

インテリアに大きな改良はないが、インパネやトリムを従来のグレーからブラック基調に変更。より落ち着いた雰囲気としている。キャラバンというクルマの使われ方を振り返ったとき、デザイナーはもっともくつろげるのがホテルのラウンジにいるような雰囲気だと考えたらしい。ミニバンのようにリビングにいる感じでは、仕事用のクルマとしてはギャップが大きいし、あまりにビジネスライクでは素っ気ない。そこでリラックスした雰囲気と社交場でもある高級ホテルのラウンジがキャラバンには合うとイメージして、ブラックに統一したという。装備面では5インチディスプレイ付きの新型ファインビジョンメーターを採用、ステアリングも新形状で直進時に下側がフラットになるスポーティなD形状を採用している。


■7速化で静粛性は明らかに向上

キャラバンのグランドプレミアムGX(2Lロング標準ルーフ)でテストコースを走ると、従来モデルより大幅に静粛性が向上していることに驚かされた。2Lエンジンは排気やエバポ規制に対応した小変更にとどまる一方、トランスミッションは従来5速だったATを7速に変更している。

日産のFR用7速といえば、フーガやスカイラインのものか…と思いきや。じつは今回キャラバンに採用したのは海外で活躍するクロスカントリーモデルのパトロール用のATだという。許容入力トルクは460~470Nmというからかなり余裕があるトランスミッションであることがわかる(キャラバン改良後のエンジンのトルクは178~213Nm)。これならばキャンピングトレーラーなどをトーイングするときでもATの能力に余裕があり、トラブルを起こしにくいだろう。

加速時と巡行時の静粛性の高さは、7速化によってエンジン回転数を低く抑えられた効果だ。感覚的にはミニバンに迫る静粛性を実現している(吸音材や遮音材は従来と同じ)。ちなみに100km/hでのエンジン回転数は約2200。従来の5速は2400から2500回転だったから、かなりエンジン回転を抑えているわけだ。120km/h走行時の前席の騒音レベルは、従来モデルに対し1.4デシベルも下がっているという。


■乗り心地がよくなった意外なアイテムによる効果

さらにS字コースで走りを試すと、ロールの進行や切り返しの安定性も高まっていることに気づく。サスペンションの変更はないとの説明だが…。テストコースには路面の段差を再現したジョイントが設けられているが、そこを通過すると突き上げ感がソフトになっていることも確かめられた。通過速度を変えて何度か試したが、明らかに乗り心地がよくなった印象だ。

その要因は、タイヤとシートの変更と考えられる。タイヤは燃費性能向上のために転がり抵抗が少ないヨコハマのブルーアースバンを装着、これによりハンドリングと乗り心地が向上したことが予想される。開発陣からは、乗用車でも使っている「スパイナルサポート機能付きシート(全車標準装備)」採用による効果ではないかと説明があった。これは中立姿勢を維持して長時間ドライブの疲労を軽減するもので、クッションのウレタンは表層部にスクラブウレタンを追加した二重構造になっている。

このように、サスペンションの変更ではなく、タイヤによってハンドリングを向上させ、シートによって乗り心地を大幅に改善している。そこに7速ATを導入したことでミニバンに迫る快適性を確保。まさに開発陣が狙っている一人親方の琴線に触れる仕上がりだ。

〈文=丸山 誠 写真=山内潤也〉