眠たい朝でも、5秒数えるだけで布団から出られる?(写真:evgenyatamanenko/iStock)

たった5秒間。カウントダウンをするだけで、めんどうなこと、やりたくないことを始める勇気が湧き上がる――。女性司会者のメル・ロビンズ氏は、人生のどん底にいたときに「5秒ルール」を見つけ出しました。

5秒ルールは、シンプルなメタ認知ツールです。人の行動パターンをすぐに変えることができ、その効果は長続きすることが研究でも裏付けられています。アメリカで100万部売れた大ベストセラー『5秒ルール―直感的に行動するためのシンプルな法則』から一部を抜粋し、習慣を変える裏技を紹介します。

5秒ルールとは何か?

この何年か、私はよく5秒ルールについて質問されるようになりました。みなさんに5秒ルールを使っていただくために、手始めにこの最強ツールについて私がよく聞かれる質問とその回答を紹介します。

Q.5秒ルールはどう使うの?

5秒ルールの使い方は簡単です。目標を達成したいとき、責任を全うしたいとき、やらなければと思いながらも腰を上げられないときは、5秒ルールを使いましょう。

まず、心のなかで「5、4、3、2、1」とカウントダウンします。数えるうちに、目標ややるべきことに集中できるようになり、心のなかにある不安や雑念や恐怖心が気にならなくなります。

そして「1」になったら、すぐに動く。それだけです。至ってシンプルですが、念のためもう一度言います。

やらなければならないことがあるのに、自信がないとき、不安なとき、萎縮してしまうときは、「5、4、3、2、1」とカウントダウンして、自分の主導権を握りましょう。数えるうちに心が落ち着きます。そして「1」になったら、動くのです。

数えることも動くことも、行動にほかなりません。いつもなら考え込んで自分を止めてしまう場面で、行動するように自分に教えることで、めざましい変化が起きるでしょう。

カウントダウンする間に、重要なことがいくつも起きるからです――不安が収まり、やるべきことに集中し、行動しなければと思うようになり、ためらったり、考えすぎたり、自分を制止してしまったりする悪い癖が起こらなくなります。

「1、2、3、4、5」と普通に数えても、5秒ルールは効くのかって? 答えはノーです。普通に1から数えると、止まらなくなってしまいます。でも、「5、4、3、2、1」とカウントダウンすると、「1」のあとに行き場がなくなり、行動しようという気になるのです。

起きられない朝、ロケットみたいに飛び起きてみた

Q. どうして5秒ルールと名づけたのですか?

よく聞かれる質問です。気の利いた回答をしたいところですが、私が「5秒ルール」と名づけたのは、初めてこれを試した日の朝に、最初にこの名前が思い浮かんだからです。

ぴったりの名前だと思いました。その前夜に宇宙ロケットが発射する場面をテレビで見た私は、「宇宙ロケットみたいに、私もベッドから飛び起きればいいんだ」と思いつきました。

翌朝、私はNASAのロケット発射をまねて「5、4、3、2、1」とカウントダウンしました。5から数え始めたのにはとくに理由はなく、5秒ぐらいがちょうどいいと感じたからです。 

やがて、世界にはいろいろな「5秒ルール」があることを知りました。例えば、食べ物が床に落ちても5秒以内に拾えば食べられるとか、バスケットボールの5秒ルールとか。夏に犬を散歩させるときも、歩道に5秒ほど手をふれて、路面が熱すぎないかを確認してから犬を散歩させます。

5秒ルールには共通点が1つあることに気づきました。どのルールも、5秒以内に体を動かさなければならないことです。

私の5秒ルールでも、体を動かすことはいちばん重要な要素です。体を動かせば、おのずと心も動くからです。この名前はふさわしいだけでなく、ぴったりではないでしょうか。「5秒ルール」という名前を聞くと、決断は5秒以内に下さなければならないことを思い出しますし、この名前のほうが普遍的でなじみやすく、ふさわしいからです。

Q. 5秒間のチャンスは、誰にでも訪れるのですか?

もちろんです。変わろうと直感してから、それが心変わりによって打ち消されてしまうまでの一瞬――5秒間のチャンス――は誰にでも訪れます。

直感してすぐに不安が生じるものの、思考や不安が全力であなたを制止するまでには数秒あります。5秒間のチャンスを生かすことは、誰にでも可能なのです。

ゼロをカウントした時点で、脳が自爆する!?

ですから、何としてでも5秒間のチャンスを自分のものにしてください。私の場合、衝動に駆られた瞬間から行動に出るまでの時間が長くなればなるほど、言い訳の声が大きくなり、行動に移すのが難しくなります。

5秒ルールを実行しているある女性は、5秒の決断は「恐怖心が強いときは、5秒の決断が50秒になったり、500秒になったりした」と語っています。現在彼女は、ゼロをカウントした時点で脳が自爆するものとイメージしながら、5秒ルールを使っているそうです。

考えれば考えるほど、行動する意欲がなくなる――これは脳の働きによる弊害です。人間は自分をだましてでも、現状を維持しようとします。何かをやろうという衝動が芽生えたとたんに、理性が制止しようとするのです。だからこそ早く動くことが重要なのです。心の罠にかかる前に、言い訳から逃れましょう。

Q. 5秒ルールはどんな目的に使えますか?

これまでに、何千人もの人々から5秒ルールを使って人生、人間関係、幸福度、仕事を改善させたという体験談が寄せられました。それらの話から、5秒ルールは、次の3つの目的に役立つことが判明しました。

行動パターンを変えたいとき

5秒ルールを使えば、新しい習慣を身につけることも、破滅的な悪癖をやめることも可能です。さらに、自分を客観視してセルフコントロールできるようになるため、自分自身や他者との関係でより効果的に意思疎通をはかれるようになります。

日々の活動で、ちょっと勇気が必要なとき

新しいこと、不安を覚えること、不確かなことをやるときは、5秒ルールを使って勇気を出しましょう。5秒ルールの力を借りれば、「私にできるだろうか」という不安の声を静め、だんだん自信が湧いてきて、やりたいことを行動に移したり、職場で自分の意見を述べたり、背伸びが必要なプロジェクトに名乗り出たり、創造性を発揮したり、よりよいリーダーになったりすることもできるでしょう。

心をコントロールしたいとき

ネガティブな思いや不安が心にのしかかるときは、5秒ルールでこれらを払拭できます。心配癖を治すことも、恐怖心に打ち勝つこともできるでしょう。心をコントロールできれば、ネガティブなことばかりに目を向けるのをやめて、ポジティブに考えられるようになります。これこそが5秒ルールの最強の武器だと私は思います。 

Q. 5秒ルールがいろいろな状況で役に立つのはなぜですか?

実は5秒ルールが効力を発揮するのはただ1つ――あなただけです。「変わりたい」と思っても、あなたは毎回同じ方法で自分を制止しています。最初にためらいが生じ、あれこれと考えるうちに自分を心の牢獄に閉じ込めてしまうのです。

危険なのは、この一瞬のためらいです。ためらうと、脳にストレス信号が送られます。その信号は問題が起きたと知らせる赤信号のようなもので、脳は防御モードに切り替わります。こうして私たちは行動できなくなります。

私たちはどういうときに、億劫になるのか

私たちはいつもためらうわけではありません。例えば、朝にコーヒーを作るのをためらうことはないでしょう。ジーンズをはくとき、テレビをつけるとき、親友に電話をかけるときも。何も考えずに一連の動作をやります。

しかし、営業の電話をかける直前や、メールに返信する直前にふとためらうと、脳は「何かがおかしいぞ」と考えます。電話でどうやって売り込もうかと考えれば考えるほど、電話がかけられなくなるのではありませんか。

とはいえ、ためらいの瞬間は有利に使うこともできます。ためらっている自分に気づいたら、自分の背中を押せばいいのですから。「5秒間のチャンス」の始まりです。

「5、4、3、2、1」とカウントダウンして自分の背中を押せば、言い訳など吹き飛んでしまうでしょう。

Q. 5秒ルールを使えば、行動パターンを変えられますか?

たとえ脳のOSがあなたを制止しようとしても、5秒ルールはその指令を黙らせることができます。それだけではありません。5秒ルールを何度も使ううちに、その防衛システムは破壊されるでしょう。

習慣には黄金のルールがあります。とても簡単です。悪い習慣を変えるには、新しい行動パターンを、繰り返して習慣化させるのです。

「5秒ルール」を習慣化して、人生を変えよう

尻込みする代わりに、「5、4、3、2、1」と数えて、動き出してください。このカウントダウンは、「ルーティン(開始の儀式)」のようなものです。


ルーティンをすることで、いつもの悪い行動パターンが阻止され、ポジティブな新しい行動パターンを身につけやすくなります。

これを繰り返すうちに、やがて自分のなかに本物の自信とプライドが芽生えていることに気づくでしょう。

目標の達成に向けて努力し、価値ある小さな勝利を積み重ねていけば、本物の自信とプライドが身につくでしょう。

あなたのいつもの精神状態や習慣も、わずか5秒の決断で変えられます。こうした小さな決断を積み重ねていくうちに、あなたの性格、感情、生き方も大きく変わるでしょう。

あなたの判断が変われば、人生も変わります。さらにその判断は、勇気というすごい力をもたらしてくれます。