進む“資産の高齢化”、金融機関がサービスに知恵絞る
認知症高齢者の増加が予想されるなど、判断能力が低下した人への金銭管理支援の在り方が課題となる中、銀行業界では信託銀行が、信託機能を生かした資産管理業務などに力を入れている。大手信託銀行が取り扱う「解約制限付き信託」は、お金を信託すると払い出しには子どもなどあらかじめ指定しておいた親族や弁護士などの同意が必要となる。
みずほ信託銀行は「選べる安心信託」に解約制限の機能を取り入れている。資産の保全や承継に関する複数の金融機能と、外部企業との連携により生活支援サービスを提供している。
同商品は顧客が信託した金銭(信託財産)を元本保証で運用しつつ、顧客のライフスタイルに合わせた各種金融機能を必要な時に選んで利用できるのが最大の特徴だ。
信託財産から生活資金などを定時定額で受け取れる機能や、詐欺防止や認知症への備えに向けて本人でも簡単に解約できない機能、暦年贈与機能などを自由に組み合わせられる。信託金額は3000万円以上に設定。2018年11月末時点で同商品の契約累計数は約950件、契約者の平均年齢は84歳と「高齢者向けの金融サービスとしてはヒット商品だ」(みずほ信託銀)と力を込める。
三井住友信託銀行も金銭信託から同意者の同意を得た上で、日々の生活に必要な資金などを定期的に受け取れる「セキュリティ型信託」を提供。預けた資金はあらかじめ指定した家族などの同意がないと支払いできない仕組み。犯罪などに巻き込まれる前に家族などに相談する機会が生まれ、詐欺などを未然に防ぐ効果が期待できる。
三菱UFJ信託銀行の「みらいのまもり」は、有料老人ホームなど施設の入居一時金や1件当たり10万円以上の医療費についてのみ払い出しが可能。信託金額は1000万円以上で、上限金額は設定していない。商品購入者は認知症や老人ホーム、後見人候補となる司法書士の情報なども得られる。
証券各社 悩み解消に専門組織
証券各社は高齢者との新たな接点作りに取り組んでいる。中でも野村証券は、超高齢化社会への対応として17年4月に高齢者専門チーム「ハートフルパートナー」を発足。高齢者が抱える長生きへの不安や相続などの悩みに寄り添い、不安の解消をサポートする役割を担う。
金融商品を一方的に提案するのではなく、あくまでも相談相手に徹することで、高齢顧客からの信頼を得ることに主眼を置くことも特徴の一つだ。
森田敏夫社長は、研修で集まったハートフルパートナーに対し、「家族との連携は難しいが、壁を乗り越えてほしい。家族ぐるみで付き合えるような関係を構築してもらいたい」と呼びかけた。
インターネットによる取引が主体となる中、これまで対面営業が主力だった証券会社は環境変化に直面している。ダイレクトメールや電話による提案は減り富裕層顧客の獲得競争も激しさを増す。
一般的に顧客満足度が高まると、入金額が増える傾向にあるとされる。高齢顧客との接点を深めながら、家族との関係を構築し、いかにビジネスへとつなげることができるか。リーディングカンパニーとして野村の挑戦が続いている。
認知症保険に相次ぎ参入
保険業界も人生100年時代に商機を見いだしている。特に増加が予想される認知症に対し、保険商品の開発や市場投入を活発化している。
