東邦vs関東一

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投打に光った東邦・藤嶋 健人の伸びしろとは?

藤嶋健人選手(東邦)

 超高校級のバッティングとピッチングが注目されている東邦の先発・藤嶋 健人(3年)がその実力をいかんなく発揮した。

 プロ野球のスカウトはほとんど「プロでやるならバッター」と口を揃えるが、8回3分の2を投げて被安打1、奪三振11のピッチングを見ればピッチャーとしての素質にもきちんと向き合わなければいけないと思う。

 この日のストレートの最速は自己最速に4キロ及ばない142キロ。130キロ台後半が多かったにも関わらず、ストレートの角度と打者近くでのキレが素晴らしく、「130キロ台後半」が物足りなく見えなかった。

 体格は176センチ、80キロと平均的。しかし、ストレートも変化球も真上から腕を振って投じられるのでボールの角度が素晴らしい。さらに左右打者に関係なく、鋭く内角をえぐってくるので打者は容易に踏み込めない。内角のあとの外角、そのセオリーはわかっていても内角球の残像があまりにも強烈でどうしても腰が引けてしまい、外角球に対して腰を据えたバッティングができないのだ。

 高低の攻めも見事だ。変化球は120キロ台のスライダー、100キロ台のカーブ、110キロ台のチェンジアップと、真上から投じられるストレートも交えて高低の投げ分けが行われ、ときには意図的なボールが高めに投げ込まれ、これを振らされるバッターが目立った。

 緩急の攻めは主にカーブを交えて行われる。1、2球がカーブで3球目がスライダーという配球は4回、3番の山室 勇輝に対して行われた。カーブが2球くれば次はストレートというのが打者の読みだ。山室はこのスライダーになす術もなく二塁ゴロに倒れた。自身もバッターとして非凡な力を持っているので、打者心理をよく理解していると思った。

 ピッチャーとしてのフィールディングもうまい。2回には1死一、三塁というこの日唯一のピンチを迎え、8番打者の一塁方向へのバントが小飛球になるとこれに楽に追いつき、帰塁できない走者を尻目に一塁に送球して併殺。5回には先頭打者にヒットを打たれるが次打者のバントを処理して一塁走者を二塁に封殺。一塁けん制がうまいため走者が十分なリードを保てないことも関係しているのだろう。

 バッティングは1回裏、2死三塁の場面で2ボール1ストライクからの3球目のスライダーを捉えて先制タイムリーを放っている。昨年秋の明治神宮大会を見たときも思ったが、藤嶋は思い切りがいい。

 明治神宮大会1回戦の秀岳館戦(試合レポート)では第3打席、1ボールからストレートをレフト中段へ2ラン、第4打席は初球113キロスライダーをレフトスタンドへ2ランを放っている。早いカウントから積極的に狙い球を絞って打っていくのが藤嶋流で、その基本線はこの甲子園でも健在だった。

 スカウトの評価はおおむね高いようだが、あるスカウトは足が遅いのがネックだと指摘する。このヒットのときの一塁到達は5.22秒。ヒットは多くの打者が流して走るので仕方がないが、5秒以上かける打者走者の走塁は感心しない。

 第3打席の二塁ゴロのときは4.61秒とやはり速くない。走る能力が低いのか、4番打者のため走ることがチームから求められていないのか。もし後者なら、藤嶋に今求められているのが「志」だということを理解して、もう少しきちんと走るべきである。藤嶋の能力が高いための要求で他意はない。

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