自分の将来が明るいと思うかどうか。自分の理想を演じるごっこ遊びが、明るい将来像の獲得に繋がっていた

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小っちゃい頃、どんな遊びをしていたっけ? いや、サッカーとかファミコンとかに熱中する以前の話。……あぁ、そうだ。「キン消し」を使ったキン肉マンごっことかで遊んでいたな。もしくは、サンバルカンごっこ。そうそう、幼き頃は“ごっこ遊び”に夢中だった。上記は、男の子に関しての話。一方の女の子は、リカちゃん人形を使った“ごっこ遊び”に夢中だった記憶がある。

ところでですね。今、こんなプロジェクトがあるそうなんです。「株式会社タカラトミー」と「東京学芸大こども未来研究所」によって組織されたのは、その名も「リカちゃん ごっこ遊びラボ」。
同プロジェクトが小学生女子・中学生女子(東京・兵庫・福岡在住)へのアンケートを元に、3月にある調査結果を発表しました。どうやら、“ごっこ遊び”が子どもの発育にどのような効果的影響を与えるか、明らかになったそうなんです。

では、早速見ていきましょうか。まず、第1の結果「リカちゃんで遊んだ経験のある子は、そうでない子より自分の将来像やなりたい自分像を明確にしやすい」について。
リカちゃん遊び”を経験した子は経験していない子に比べて「自分の将来は明るいと思う」割合が高かったそうなんです。図を参照し比較すると、経験した子の「(自分の将来は明るいと)とても思う」回答は32.4%、「少し思う」回答は49.8%(計82.2%)。一方経験してない子の「とても思う」回答は23.1%で「少し思う」回答が54.5%(計77.6%)。
リカちゃんを使って自分の理想を演じるごっこ遊びが、生活の中に「夢」をもたらし、明るい将来像の獲得に繋がっていることを示唆する結果です。

また、リカちゃんで遊んだ経験があるほど「理想の人がいる」割合が高い傾向も見られました。ここでも数字を見てみると、経験した子の「(「あんな人になりたい」と思える理想の人は)いる」回答が47.0%、「なんとなくいる」回答が30.1%(計77.1%)。一方経験してない子の「いる」回答は30.6%で「なんとなくいる」回答が36.6%(計67.2%)。
現実と理想の往復によって遊ばれるリカちゃん人形は、「あこがれ」や「未来」を感覚として育み、「なりたい自分像・将来像の獲得」につながるのだと考えられます。

そして2つめの結果「『リカちゃんのママ』等を所有している子の方が、自分とは違う立場の役割遊びを通じ、自分のことも周りのことも良く見える子になりやすい」について。
リカちゃんのママ」を所有している子は、そうでない子と比べ「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」傾向があります。この辺り、またしても図を見ていただきたい。「自分の考えをはっきり相手に伝えることができるか?」という問いに対し、リカちゃんママを持っている子からの「よくあてはまる」回答は18.8%で、「少し当てはまる」回答は40.6%(計59.4%)。一方、持っていない子からの「よくあてはまる」回答は11.3%で、「少し当てはまる」回答は42.9%(計54.2%)。

それと同時に「自分の気持ちと違っていても、友達や他の人が求めるキャラを演じることがある」という傾向も、ママを所有している子の方が高かった。持っている子からの「(その傾向に)よくあてはまる」回答は21.9%で、「少し当てはまる」回答は23.4%(計45.3%)。持っていない子からは「よくあてはまる」回答7.9%と、「少し当てはまる」回答28.2%(計36.1%)が得られているんです。
リカちゃんママでの役割遊びを通じて子どもたちが「他者の視点」を獲得、自己を客観視する能力を身に付け、客観視した「自分」を対峙させたり協力することができるようになっていることがわかります。要するに、自分のことも周りのことも良く見える子になりやすいのかもしれないな……。

そして、3つ目の結果「“リカちゃん遊び”で身につける客観性が、自己評価の厳しさにもつながっている」について。
リカちゃん人形を持っている子は、持っていない子と比べて自分の性格にどちらかというと不満を持つ傾向にあります。「自分の性格への満足度」を見てみると、リカちゃんママを持っている子の「とても満足」回答は6.8%、「やや満足」回答は40.1%(計46.9%)。一方、持っていない子の「とても満足」回答は8.1%で、「やや満足」回答は43.9%(計52.0%)。
人形に自己を同一化して遊ぶことを通して自分に対しても同様に客観視する態度が育まれているため、自分に対して「厳しい」評価になるからではないかと考えられます。

続いて、4つ目の結果「リカちゃんを所有し、より深く遊んでいる子の方が協調性を発揮しやすい。リカちゃんを身近に持つことが、他者との関係性構築につながっている」について。
「自分の意見よりも、周りに意見を合わせることがある?」という問いに対し、リカちゃん人形を持っている子からの「よくあてはまる」回答は22.7%で、「少し当てはまる」回答は50.7%(計73.4%)。一方、持っていない子からの「よくあてはまる」回答は16.3%で、「少し当てはまる」回答は43.9%(計60.2%)。
リカちゃん人形を所有している子の方がそうでない子に比べ、「周りの意見に合わせることができる」傾向が強いようです。リカちゃん人形を「所有」し、身近に置き、深く遊ぶことが、協調性獲得に寄与していることがわかります。

続いては、これも興味深い。「リカちゃん1体だけでなく、家族などの関連人形を複数体所有して遊ぶことが、“社会性”の獲得に寄与している。また、所有する人形によって獲得する能力は様々」について。「リカちゃん」関連人形の所有状況と、理想像の有無や性格の傾向について見たところ、リカちゃん以外の他の人形を用いて複数体で遊ぶ=立場の異なった役割を担うことが、様々な能力や“社会性”の獲得につながっていることがわかりました。
こちらも、図を参照してください。例えばママを持つ子は前述の「自他認識」以外にも「人を引っ張る役割」などリーダーシップを獲得しやすい傾向にあります。他にも「ボーイフレンド」を所有する子は「考えをはっきり相手に伝えることが出来る」、「友達に誘われても自分のしたいことをする」傾向が強く、自主性が強いなど、所有する人形によって、獲得する能力にも違いがあり、興味深い結果となっています。

最後は「『リカちゃん』に代表される人形での“ごっこ遊び”は、多様な経験をすることがリーダーシップ等、実際の生活上の役割意識の獲得につながりやすい」について。ここでは視点を広げ、「人形でのごっこ遊び」全般に関して検証。結果、多様な種類の人形ブランドで遊んだ経験がある方が「社会性」を獲得しやすいことがわかりました。
では「リーダーなど人を引っ張っていく役割になることが多い?」という問いを、“遊んだ経験のある人形の種類”によって投げ掛けてみましょう。まず2種類以上ある子からの「よく当てはまる」回答は19.5%で、「少し当てはまる」回答は22.6%(計42.1%)。1種類の子からの「よく当てはまる」回答は16.0%で「少し当てはまる」回答は24.7%(計40.7%)。遊んでいない子による「よく当てはまる」回答は19.6%で「少し当てはまる」回答は15.7%(計35.3%)。
様々な人形による“ごっこ遊び”が、役割演技の多様さと「他者の視点」の豊富さを体験し、それが子どもの発達に少なからず影響を与えていることがわかりました。

「知育玩具」という言葉があるけども、「リカちゃん」並びに人形によるごっこ遊びは、子供の発育に多大なる影響を与えているみたいです。
それにしても、検証結果が非常に興味深かった。そしてそれ以上に、この研究テーマ自体も非常に興味深いものでした。
(寺西ジャジューカ)