日本人CBがプレミアで通用するか。吉田への期待は大きいね!

今季、欧州組ではマンチェスター・ユナイテッドに移籍した香川が注目を集めている。それはまあ当然のことだけど、もうひとり僕が特に期待している選手がいる。オランダのVVVフェンロからイングランドのサウサンプトンに移籍した吉田麻也(まや)だ。

日本人のセンターバック(CB)が欧州のトップリーグでどこまで通用するのか。得点を取るポジションじゃないからあまり目立たないけど、体格の問題で日本人にはハードルが高く、これまで成功例のないポジションだけに、ぜひ注目したい。

サウサンプトンはプレミアリーグに昇格したばかりの下位クラブとはいえ、オランダでも下位のVVVとは雲泥の差。対戦相手のレベルも全然違う。ステップアップだし、いいチャレンジだと思う。チームにしても、地元開催のロンドン五輪でのプレーを観て獲得したわけだから期待も大きいはずだ。

合流後すぐのアーセナル戦では途中出場して失点に絡み、チームも1-6と大敗。散々なデビューになってしまった。でも、初先発となった続くアストン・ビラ戦では、安定した守りで今季初勝利に貢献。まずまず順調なスタートを切ったといっていい。

レベルの高いプレミアリーグで、しかも日本人がCBとして成功を収めるのは大変なこと。下位チームはデカいマッチョなFWめがけてロングボールをガンガン放り込んでくる。そうかと思えば、ワールドクラスの選手がそろう上位チームは、単純な放り込みをせずに細かくパスをつないで崩してくる。だから、CBにはタフさと巧さの両方が求められるんだ。ましてやサウサンプトンは残留争い必至の下位クラブ。押し込まれる時間帯の長い試合が続くだろう。大変だよね。

ただ、それでも僕は吉田なら通用すると思う。これから先、さらにビッグクラブにステップアップできるかといったらきついかもしれないけど、少なくともサウサンプトンでは十分やれるはずだ。

まず、彼の高さ(189cm)はプレミアでも武器になる。同じぐらいの身長の選手はプレミアにゴロゴロいるけど、吉田の場合は跳ぶタイミングやポジション取りがうまい。CKやFKなどセットプレーでは得点するチャンスもあるだろう。また、意外とスピードもある。ロンドン五輪でもそうだったように、「やられた」と思っても追いつける。そして、足元の技術もあるから攻撃の起点にもなれる。

日本からではなく、オランダからの移籍ということで、環境面への心配もいらない。インタビューの受け答えを見てもしっかりとしているし、オープンな性格で英語も話せる。現地メディアの受けもいいそうだ。

名古屋のユースからトップチームに昇格した際の入団会見では「ボンジュール」と挨拶して(*隣の選手に「欧米か!」とツッコミを入れてもらった)、場を盛り上げようとしたというエピソードからもわかるように、度胸も満点。スムーズにチームに溶け込むだろう。心配なのはケガだけだ。

デビュー戦のアーセナル戦のように、今後、マンU、マンチェスター・シティ、チェルシーなど強豪クラブとの対戦ではボロボロにやられることもあるだろう。でも、それは今の段階では仕方ないことだし、ぜひプレミアで鍛えられて、ひと回り大きくなった姿を日本代表で見せてほしいね。

(構成/渡辺達也)