「これではヤミ金と同じ扱いだ」。ある大手消費者金融幹部は嘆く。

 その理由は、最近の過払い金返還請求では、受け取った金利どころか、融資した元本まで取り上げられてしまうケースが増えているためだ。まさに、ヤミ金が貸したカネは元本すら返さなくていいという判断となんら変わりはない。

 なぜ、こうなってしまうのか。それは、3つの最高裁判決に起因する。

 まずは、元本充当合意。利息制限法金利(15〜20%)を超えて返済したぶん(過払い金)は、次の借り入れに充当されるという合意があるという判決だ。つまり、過払い金が発生した後に貸し付けた元本の一部は、過払い金から支払われているため無利息となる。

 次に、悪意の受益者だ。特別な理由なく利限法を超えた金利を受け取ることは不当利得であり、悪意の受益者になるという判決だ。そのため、5%の懲罰的金利を支払わねばならない。

 3つ目が、消滅時効である。リボルビングなど継続的な貸し借りであれば時効にならないという判決だ。つまり、完済から10年たたないと時効にならないため、最終取引日が10年以内であれば、それまでの貸し借りの期間が20年、30年であっても、さかのぼって過払い請求できる。

 これら無茶苦茶な判決の結果を加味し、金利の引き下げ計算をし直せば、取引期間が長いケースでは、金利どころか元本まで取り上げられる事態に陥ってしまうのだ。ある大手ではこの割合が2割近くに上る。

 だが、「そんなに請求されてもカネがないから払えない。最近では、請求された額の半分しか払ってない」(大手消費者金融幹部)というほどまで追い詰められている。消費者金融の破綻は近い。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)


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