2日、都内で村上ファンド疑惑について、News GyaO / ライブドア・ニュースの取材に応じる串田誠一弁護士(撮影:常井健一)

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新聞各紙は2日、村上世彰氏率いる投資ファンド(通称・村上ファンド)のニッポン放送株の取引をめぐり、東京地検がインサイダー取引など証券取引法抵触の疑いで捜査を進めているもようと報じた。

 村上ファンドは、2003年ごろからニッポン放送株を買い進め、同年7月には第2位株主、04年には保有比率が18%を超え、筆頭株主となった。05年1月17日、フジテレビが同放送株の公開買い付け(TOB)を発表した直前、村上ファンドはさらに同放送株を大量に買い付けた。

 ライブドアは同2月8日、「インターネットと放送の融合」を掲げて立会外取引で同放送株を大量取得し、保有株約35%超の筆頭株主として浮上。一方、村上ファンドは同月末までに、保有比率を3.44%に引き下げた。

 今回浮上した疑惑とは何か。NEWS GyaO / ライブドア・ニュースは同日、法政大学会計大学院教授で弁護士の串田誠一氏(47)に聞いた。

── 今回の疑惑とは。

 フジテレビによるニッポン放送株のTOBやライブドアが同株を大量取得するという情報を事前に知り、裏をかいて買い増したということが報道されている。インサイダー取引そのものの検挙率はあまり高くないので、そういう意味では今回のTOBを理由としたインサイダー取引は極めてまれではないだろうか。

 会社の重要情報を知った者が公表前に行うような証取法166条で定められた一般的なインサイダー取引の場合、公表後に株価がどうなるかは未知数。その情報で、市場が影響を受けない可能性もある。

 ところがTOBの場合は、買い付け価格などの情報がすべて公開されるわけだから、株価にどのような影響を与えるかは具体的に知りうる余地はある。その点で、今回問われている証取法167条で規制された取引は、通常のインサイダー取引よりも悪質だと言えなくもない。

── 有罪となった場合はどのような刑罰が与えられるのか。

 証取法167条では3年以下の懲役、罰金300万円以下が規定されている。

 一方、刑法には、犯罪によって得たものは没収することができるという規定もある。今回、インサイダー取引をして本来得てはいけない利益があるとすれば、没収される可能性もある。それが膨大な金額になる可能性もあるから、村上ファンドにとって生命線に関わるような大打撃を与えるだろう。

── 今後、村上ファンドの経営はどうなるのか。

 現段階では、幹部が任意の捜査を受けているだけで、有罪になったわけではない。今後どうなるかは未知数。

 村上氏が有罪になれば責任は逃れられず、代表を辞任せざるを得ない。法人については、日本の資格は返上してシンガポールに拠点を移しているので、同国の法律の規定がどうなっているかという問題になる。

 仮に事件にならなかった場合でも、社会的な信用の失墜は大きいので、村上ファンドにお金を預けようとする人は激減するだろう。

── ライブドア事件の裁判にも、影響があると考えられるか。

 村上ファンドがニッポン放送株を買い増したのは、ライブドアが同株を大量取得した時期に近い。村上ファンドの疑惑に、当時のライブドア幹部が関わっているかもしれない。それが、解明されていく可能性はある。

 ライブドア事件で問われたのは証取法違反の中でも粉飾関係で、会社固有の事案だった。しかし、インサイダー取引を行った具体的な株式も取りあげられると、ライブドア事件のすそ野が広がるだろう。

── 今後、疑惑はどのように展開していくと考えられるか。

 もともとインサイダー取引自体があいまいな上に、証取法167条にも「TOBに準ずる」取引の内部情報も対象にするなどあいまいな規定がある中、捜査を受けている。事件にならない可能性はかなりあると思う。

 「任意捜査」とは、告発された事案が本当かどうかということを確認するために、当局まで来てもらうこと。たとえ確認のために赴いたとしても、見方によっては「呼び出された」とされてしまう。だが、それが市場に与える影響は大きい。【了】

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