世界中が注目した米国大統領選挙は、まさかのトランプ氏圧勝で幕を閉じた。一時は激震が走った日本株市場だが…。

年明け相場はトランプ大統領のプラス面で株高が先行か !?

米国大統領選挙は、まさかのトランプ氏でマーケットは大混乱

2度目の「1000円相場」だった。トランプ新大統領が決まった 11 月9日、日経平均は最大1059円安と暴落したが、翌日には一時1142円高と暴騰。1000円幅の乱高下は英国のEU(欧州連合)離脱を問う国民投票に揺れた6月相場の再現となった。

2つの誤算が乱高下の背景にある。1つはトランプ氏の圧勝。もう1つは、トランプ氏勝利を歓迎した米国市場の反応である。

全米メディアの事前評はクリントン氏優勢。選挙戦終盤の世論調査でトランプ氏の追い上げが報じられた際も、与党幹部は顔なじみの番記者に 「結局はクリントン氏でしょう」と、現地報道を信じて疑わなかった。

野村証券は9日午前中、報道関係者向けにクリントン氏優勢を前提とした大統領選挙 後の相場シナリオを披露したが、トランプ氏逆転を受けて大引け後、解説をやり直した。予想レンジを決めるストラテジストは出張の飛行機の中だったため、投資情報部長の竜沢俊彦氏が正式な見解ではないと断ったうえで、1ドル= 95 円なら日経平均は1万6200円程度との見立てを示した。

大引け後には財務省と金融庁、日銀が緊急会合を開催。会合後、報道陣に囲まれた浅川雅嗣財務官は政府と日銀の協調体制を再確認し、「あらゆる措置を排除しない」と述べた。日本単独での円売り・ドル買いの為替介入も辞さず、が真意である。

ところが、日本での緊張感とは逆に米国市場では株高・円安が急速に進んだ。トランプ氏は当選後の会見で過激な発言を控え、市場関係者の目はトランプ新大統領が唱える経済政策に注がれた。トランプ氏勝利を受けたNY株式市場ではNYダウ平均が史上最高値を一時更新した。

ゴールドマン・サックス証券は9日付の投資家向けリポートで、日本株への影響について「暫定的な見解」を示した。特筆すべきは「防衛」に焦点を当てたことだろう。

リポートによると、トランプ新大統領が日米安保条約を軸とした安全保障体制の見直しに動いた場合、日本は「在日米軍の駐留経費増額を受け入れるか自衛隊予算を拡大するかという選択肢を突き付けられる」可能性がある。ゴールドマンは一昨年から防衛関連株に注目し、「日本は防衛支出の増額が将来的には必要になり得る」と指摘しており、在外米軍縮小を掲げるトランプ氏の大統領就任で、予想が現実味を増してきた。

蜜月期間は100日間。2017年4月まではプラス面が先行か

大統領選挙と同時実施された連邦議会選挙でも、共和党が上下両院で多数派となった。トランプ政策の実現性が高まったといえる。

米国では、大統領就任から100日間は野党やメディアが攻撃を控える紳士協定があり、ハネムーン(蜜月)期間と呼ばれる。来2017年1月 20 日の就任式から4月までは、トランプ政権のプラス面が先に表れてくる可能性が高い。法人減税や公共事業など景気刺激色の強い公約が実行に移されれば、米国発の株高が日本や欧州など他市場にも波及していきそうだ。