軽油とガソリン、いずれもひと口に「燃料」と呼ばれるものですが、両者には大きな違いがあります。これを間違ってクルマに給油すると、どうなってしまうのでしょうか。

軽油とガソリン、意外と多い誤給油

 一般的なクルマの燃料は、大きく分けて軽油とガソリンの2種類です。すなわちディーゼル車とガソリン車に大別され、それぞれに合った燃料を使用するわけですが、時折、給油の際にその油種を間違える人がいるようです。

 2016年3月にJAF(日本自動車連盟)が公表したデータによると、2015年12月の1か月間に発生したドライバーによる救援依頼のうち、軽油とガソリンを「入れ間違えた」と申告されたものが、全国で269件あったといいます。これについてJAFは、「実際には、ドライバーが入れ間違いに気付かず、走行不能などのトラブルとなって救援依頼されたケースも考えられるため、さらに多いことが予想されます」としています。


軽油とガソリンの誤給油は、1か月で約270件。それと気づいていないケースも含めると、さらに多くなるという(写真出展:Andrey Kekyalyaynen/123RF)。

 軽油とガソリン。いずれも「油」や「燃料」などと、ひとくくりに扱われるものです。たとえば、真偽不明ながら「ウォッカを燃料に戦車を動かした」などといった話を聞くように、多少の不都合はあれ軽油とガソリン、いずれを入れてもクルマは動きそうなものです。ところが実際には、まったくお話にならない状態になってしまいます。

誤って給油してしまったら、どうなる?

 ガソリン車に軽油を給油した場合、どうなってしまうのでしょうか。JAFによれば「軽油の混ざったガソリンが供給されると、エンジンの出力が下がり、加速が鈍くなります。そして、アイドリングも不調になります。さらに、100%軽油だけを入れてしまうと、黒い排気ガスが出るようになり、やがてエンジンが止まってしまいます」とのことです。

 逆に、ディーゼル車にガソリンを入れた場合、同様にJAFは「最初のうちエンジンはかかっていますが、すぐに力がなくなってきます。エンジン音は高くなって、アイドリングも不安定となり、排気ガスは白くなってきます。こうなると噴射ノズルや燃料ポンプの交換が必要になる場合があります。軽油とガソリンの混合比によって、入れ間違い後の症状に差があり、エンジン始動が不可能になる場合もあります」としています。

 軽油とガソリン、そもそも両者はなにが違うのでしょうか。これについて、国内石油元売り会社の広報担当者は「ごくかんたんにいえば、沸点が違います」と話します。

「いずれも同じ原油から精製されたものを加工し製品になるわけですが、その製品の元となる材料は、沸点の違いでそれぞれ抽出されています。沸点の低いほうがガソリンで、沸点が低いと、気化しやすく可燃性も高くなります」(石油元売り会社 広報担当)

 製品として販売されるガソリンと軽油では、おおむねどこの会社の製品も色が違うものですが、これは間違いを防ぐために、わざわざ別の色をつけているとのことです。

 ほか、ガソリンスタンドなどでも給油ノズルの色を変えるなど、両者を間違えないよう注意喚起しています。それでも誤って給油してしまうのは、なぜでしょうか。

それでも間違ったら、あわてず騒がず…?

 JAFは、軽油とガソリンの入れ間違い原因として「うっかりしていた」「普段乗らない車だった」「軽自動車は軽油と思った」といった「ドライバーの認識不足や勘違いが多い」としています。

 では、両者を誤って給油してしまったら、どうすればいいのでしょうか。JAFロードサービス部の藤本さんは「気づいた時点で、すぐエンジンを止めてJAFにご連絡ください」といいます。

「路上で連絡いただいた場合、ガソリンスタンドか修理工場へクルマを運ばせていただき、あとはそちらで燃料を抜く作業をしていただくことになります。車種にもよりますが、作業にはそれなりに時間がかかります」(JAF 藤本さん)

 ふだんからセルフ給油をしていないと、油種の違いについては、あまり意識することがないかもしれません。しかし、ほんの少し注意を向けるだけで、こうしたトラブルは回避できるでしょう。JAFは「マイカーではない車両や、初めて乗る車両に給油するときは、必ず車検証や取扱説明書で燃料の種類を確認するなど、慎重に給油するようドライバーに呼びかけています」としています。

【写真】セルフスタンドの給油ノズルは…?


セルフスタンドの給油機は、誤給油を防ぐため油種ごとにノズルが色分けされている(写真出典:photolibrary)。

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