第4回沖縄国際映画祭で上映された、『タバコイ 〜タバコで始まる恋物語〜』。相手の本音が丸見えになる“奇跡のタバコ”を手にした主人公の人生が変わって行く……というストーリーで大好評。主演をつとめた【ピース・又吉直樹】に撮影秘話を語ってもらった。

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 「第4回沖縄国際映画祭」Laugh部門で上映された、『タバコイ 〜タバコで始まる恋物語〜』。主人公は他人の言葉をすべて信じる不器用な男「宮内正」で、相手の本音が丸見えになる“奇跡のタバコ”を手にしたことで、人生が変わって行く……というストーリー。建前と心の声をテーマに斬新な映像で笑いをとった本作は、審査員が選ぶ「スペシャル・メンション」にも選ばれた。主人公を演じたのは、独特のキャラクターでブレイク中の【ピース・又吉直樹】。初主演の感想や撮影裏話などを語ってもらった。

――映画初主演、おめでとうございます! 以前から、俳優願望はあったのでしょうか?

 まったくなかった……ゼロですね。

――『タバコイ』の解説を読ませていただくとファンタジーなのか、シュールな作品なのか、恋物語なのかといろいろ想像してしまったのですが、脚本を読んだ時どのような感想を持ちましたか?

 ファンタジーの要素もありますけど、恋愛でしょうね。出演のお話をいただいて、芝居があまり得意ではないので「僕で大丈夫なんですか?」みたいな相談を、監督さんにした感じでしたね。無理じゃないかと思ったりもしましたが、等身大で大丈夫ということだったんで、“じゃ、がんばります!”という感じで。

――主人公の「宮内正」は、本当に又吉さんの姿にすごく重なります。

 そうですね。女心をわからんようなトコとか、人を信用できへんというか、何がホンマかわからんという感覚は近いと思いますね。嘘を全くつかないという点は……僕はそれなりについてきましたが(笑)、すぐばれますね。監督さんがそのままでいいと言ってくれましたので、自然体で挑んだら「もうちょっと大きい声出るかな」って言われたんで、普段の僕より多少元気です。正くんの方がね(笑)。

――普段、タバコは吸われますか?

 吸わないですね。撮影で使ったのはタバコではなくて喉の薬で、体に害はないみたいです。でも煙が出るので、最初はやっぱりむせましたけど、タバコに比べると全然大丈夫でした。

――実際に「奇跡のタバコ」があったとしたら、どんな場面で吸ってみたいですか?

 知り合いの前で吸うと、自分がめっちゃ嫌われてたりしたらショックですよね(笑)。なので、知り合いには使いたくないな〜と思いますね。それを機にもう連絡取らなくていいような人だったらいいので……どうせだったら街に出たり、スポーツ観戦をしたりとかいう時に吸って、そいつが何考えながらプレイしてるのかとか、真面目にやれとか思えたりしたら、おもろいかなと思いますけどね(笑)。

――共演の遠藤久美子さんとの撮影エピソードを教えてください。

 遠藤さんは僕らの世代のあこがれの存在ですが、キスシーンがあったんです。お芝居の中で女優さん相手にキスシーンでテンション上がったって言うと、下世話で良くないと思うんですが、いろいろ考えてしまうじゃないですか。あの遠藤さんと……と思いながら、やっぱり緊張するわけですよ。本当におキレイな方ですからね。撮影前にはお菓子食わん方がええかなとか、弁当止めてガム食っとこうかとか、僕は考えていましたよ。でも遠藤さんが寸前に饅頭食うてるの見て、そこまで意識せんで良かったんかな〜と思いました(笑)。大分楽になりましたけどね。

――ほかに印象的なエピソードはありますか?

 4日位で撮ったんですが、ほぼ24時間ぶっ通しで仕事という日もあったんですよね。合間の10分で寝たりして、もう演技がどうというレベルじゃなかった。スタッフさんとは、“もうちょっとだ”と声をかけ合って、マラソンみたいになってました(笑)。完成した時はうれしくて、“ありがとうございます”という気持ちでした。

――読書家として知られる又吉さんですが、読書が俳優やお笑いのお仕事につながっていると思える部分は?

 言葉を使うという意味で、共通するとこは多いのかな〜と思いますね。お笑いが文学に与えている影響もでかいでしょうし、日本の文学の起源は落語にあったようなものなので、密接な関係にあるでしょうねぇ。夏目漱石の「吾輩は猫である」や「坊ちゃん」、太宰治の「お伽草紙」など、落語っぽい話は今読んでも面白い。それは多分人間の表層じゃなくて、本質的にずっとおもろい所。滑稽さみじめさ、笑うしかないわ〜ってことが書かれているので、そういう所は参考になるのかもしれないですね。

――では、沖縄国際映画祭に参加した感想をお聞かせください。

 今回の最初のプログラムは、テレビ番組『ピカルの定理』の公開収録をやらせてもらいました。とにかくものすごい数のお客さんが来てくれて、渡辺直美がコントのキャラクターで曲出したんですけど、みんなが一緒に踊って盛り上がってくれました。そういうの見るといいな〜と言うか、ありがたいな〜って思いますね。

――沖縄にはご親戚がいらっしゃるそうですが、よく来ていたんですか?

 はい、子どもの頃から来てました、ずっと。沖縄の人たちと言うか僕の親戚は、感情表現がストレートで率直。最初は戸惑ってましたが、段々居心地が良くなりましたね。“お父さんはハンサムやけど、直樹は普通やな〜”とか言うんですよ(笑)。腹立つわ〜って思ってたんですけど、反対に僕のいい所をすっごい褒めてくれる。思ったことを全部言う、そこに悪意とかはないんや、この人たちにはもう何言われてもええわ〜って、思えます。地域性を越えて、日本じゃない外国みたいな感覚でしょうね。大阪と沖縄ではノリの部分で共通する所もあると思うんですけど、なんか違いますね。

――最後に『タバコイ』を楽しみにしている、ファンの方へのメッセージをお願いします。

 恋愛が苦手な人が共感できる内容ですし、恋愛が得意な人が見たら客観的にアホやなと笑える内容。誰が見ても楽しめるんじゃないかなと思えますので、ぜひ見ていただきたいです。好きなシーンは、合コンで会った女の子が予想していなかったことを考えていて、本心がわかっていく所。この映画の核でしょうし、人を信じられるようになる後半につながります。カッコいいシーンは、庄司智春さんが奥さんの名前を叫んでる所(笑)。

――ラストシーンも感動的でキュンと来ました。

 結末を言いそうになるので、コメントを避けます(笑)。最初で最後の主演になるかもしれない作品です。でも俳優としての志はなくても、好きな監督さんの作品にはミーハーな気持ちで出演してみたい。歩くだけとか寝るだけとか、そんな風で良ければ、これからも映画に出たいと考えています。(取材・文責:饒波貴子)