計画断念を発表したインファンティーノ会長。しかしもはや求心力の低下は否めず、非難の嵐は当面やみそうにない。(C)Getty Images

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 現地7月31日、事態は急展開を迎えた。FIFA(国際サッカー連盟)のジャンニ・インファンティーノ会長が声明を発表し、ワールドカップの権益を子会社が担う計画を断念すると明かしたのだ。

 FIFAが大会運営会社「FIFA Forward Enterprise(FFE)」を設立し、男子・女子のワールドカップやクラブワールドカップを実質的に管理するという仰天プラン。FIFAは子会社の過半数の株式を保有する一方で、20〜30%を民間投資家へ売却。FIFA加盟211協会には、約2000万ドル(約33億円)相当の持ち分が割り当てられ、保有することも売却することも可能だとされている。

 有力な民間投資家の筆頭と目されたのが、ドナルド・トランプ米大統領の義理の息子であるジャレッド・クシュナー氏の弟、ジョシュア・クシュナー氏だった。インファンティーノ会長とトランプ大統領の親密ぶりは北中米ワールドカップの最中にも批判の対象となったが、新会社ではビジネスパートナーとなる可能性もあったのだ。さらに、2031年に任期満了となるインファンティーノ会長が、退任後にその新会社のトップに就任して100億円近い年収を手にするのではないか、との報道も出ていた。

 当初から激しい反論を繰り広げていたのがUEFA(欧州サッカー連盟)である。加盟55か国が大会ボイコットを辞さない構えをみせたことが、インファンティーノ会長を凍りつかせ、翻意に傾かせたとも言われる。今回の断念発表を受けてUEFAは公式サイトで長文のステイトメントを掲載した。以下が全文である。

「UEFAは、FIFAがワールドカップを含む自らの大会の持分を民間へ売却する計画を撤回したことを歓迎する。この提案は、サッカーを守る責務を担うUEFA加盟各国協会によって全会一致で拒否されたほか、世界中の大小さまざまなサッカー連盟や大陸連盟からも反対された。

 UEFAは、この計画に反対したすべてのファン、リーグ、クラブ、選手、個人、各国協会、大陸連盟に感謝するとともに、サッカーは売り物ではないということをFIFA会長に示した多くの首相、国家元首、そして評論家にも謝意を表する。

 私たちは、正体の分からない人物たちによって密室で練り上げられ、拙速なスケジュールで進められた、サッカー界にとって利益があるかどうかも疑わしい秘密計画を、これ以上許しておくことはできない。誰が責任者だったのかを明らかにし、その責任を問わなければならない。

 今後数日から数週間のうちに、UEFAが加盟協会とともに、また他の大陸連盟とも緊密に連携しながら、このような事態がなぜ起きたのかを検証し、二度と繰り返されないような方策を策定するのは当然のことである。その検証は徹底的かつ根本的なものでなければならない。あらゆる選択肢を検討対象から外すべきではない。現在のFIFA執行部は、UEFAだけでなく、サッカーファミリーを構成する多くの人々からも信頼を失っている。

 ジャンニ・インファンティーノ氏は、2016年にFIFA加盟協会へ自らへの信任と票を求めて会長選に臨んだ際、次のように述べた。

『もちろん、私たちは透明性を確保しなければなりません。私はUEFAで過ごしたこの15年間、常にそうしてきました。皆さんも毎日FIFAの運営に関わることになります』

 さらに、集まった関係者に対し、こう語った。

FIFAのお金は皆さんのお金です。FIFA会長のお金ではありません。皆さんは加盟協会であり、FIFAのお金はサッカーの発展のために使われなければならず、それ以外の目的に使われるべきではありません』

 しかし、このふたつの約束はいずれも果たされなかった。彼が密室でまとめ上げ、強引に押し通そうとした粗雑で不透明な取引は、『透明性』とは程遠いものだった。