「監視社会」と聞くと、多くの人がどこか遠い国だけの物騒な話だと感じるかもしれない。しかし実業家のマイキー佐野氏は、スマートシティ化という耳あたりの良い言葉の裏に、想像以上に緻密な管理体制が広がっている現実を描き出す。カメラ映像の解析技術で世界的なシェアを握る大手メーカー2社の存在を軸に、都市の隅々まで張り巡らされた監視網がどのように機能しているのかを丁寧に紐解いていく。国防に関わる研究機関が開発したとされる高性能な演算基盤の話も登場し、瞬時に膨大な人数を識別できるというその処理能力の桁違いさに驚かされる。
 
佐野氏によれば、都市部と地方とでは監視の仕組みそのものが異なるという。都市部では膨大な数のカメラと高性能な解析基盤を組み合わせ、瞬時に人物を特定できる体制が敷かれている一方、警察官の数が限られがちな地方では、住民自身がテレビや手元の端末を通じて地域の見守りに参加する仕組みが取り入れられているそうだ。過去には誤認識によって無関係な人物が疑われるトラブルも起きているというが、それでも精度は着実に高まっているらしい。海外の主要都市に、同じ仕組みが輸出されている例もあるという。
 
さらに佐野氏は、暮らしぶりを点数化する制度や、生体情報の収集をめぐる海外企業の関与にも話を広げる。制度は当初、地域ごとにばらつきがあり、行き過ぎた運用が混乱を招いたというが、後にルールが統一される方向へ動いたそうだ。興味深いのは、こうした仕組みへの受け止め方が立場によって大きく異なるという調査結果であった。安心と息苦しさ、どちらの感情が勝るのかは、聞く人の暮らしぶりや置かれた立場によっても変わってきそうだ。都市部の高学歴層ほど肯定的だったという傾向があったようだ。
 
そのうえで佐野氏は、同じ流れがすでに日本にも及びつつあると指摘し、駅や空港での顔認証導入の広がりにも言及する。海外製の機器をめぐる安全保障上の懸念や、今後国内で求められる備えのあり方にまで話は及んでいく。便利さと引き換えに私たちは何を差し出すことになるのか、日常を送る誰にとっても他人事ではないテーマだと気づかされる内容だ。

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現在はアカデミズム関係者・経営者・投資家・学生が参加するビジネススクールも運営