世界トップとの差を突きつけられた北中米W杯。日本代表が先へ進むための課題設定。独自のハイブリッドな進化を【識者見解】
高い完成度で相手を凌駕し続けたスペイン、激闘の末に決勝へと駒を進めたアルゼンチン、個のタレント力と組織の一体感をベースに、驚異的な躍進を見せたノルウェーやモロッコ、あるいはラウンド32で日本を阻んだブラジルの戦いぶりは、今後の日本サッカーが歩むべき道筋を示している。
目ざすべきは、他国の強みを自国の文脈へと翻訳し、日本の強みを100%活かして、次のステージへ進むための引き出しを増やす、日本独自のハイブリッドな進化だろう。
今大会の決勝まで見届けたうえで、日本の明確な課題と、日本流の強みを研ぎ澄ますための具体的なアプローチ、そして高い目標との向き合い方をまとめたい。
今後の日本の方向性を見るなかで、今から優勝を目標にするべきか否かという議論は絶えない。結論から言えば、現場レベルにおいては継続して優勝を目標に掲げて良いし、その挑戦を止める必要はない。理由としては、目標の発端が森保一監督からのトップダウンではなく、選手目線で出ているモチベーションベースの指標であるからだ。
もちろん、2005年の「JFA2005年宣言」に従い、2050年までに日本が世界一に立つことを目ざすにあたり、今から視線を向けて挑むことで、現在地や距離感が見えてくるという想定が森保監督にはあるはずで、1試合であれば優勝候補の列強にも太刀打ちできるという実感がベースにある。
実際に、大手ブックメーカーの大会前の優勝オッズも、前回は250倍前後だったのが、100倍を切るところまで来ていた。
しかし、何よりも指揮官がセレクトする選手が目線を上げることで、後から入ってくる選手たちも目を揃えやすい。そのうえで、監督自身は目標をどこに置こうとも、大会においては目の前の試合に一つひとつ、泥臭く向き合っていくスタンスに変わりはない。
ただ、4年の成長サイクルを考えた時に、角度をさらに上げていく必要があることは、ベスト4に進んだ4か国の戦いぶりを見ても明らかだ。高いビジョンを持つことで、チームの基準と意識を引き上げ、逆算して今、何をすべきかを明確にする意味でも、決してマイナスにはならない。
もっとも、こうした高い目標の発信はメディアやファン・サポーター、あるいは海外の受け止め方として「現実を見ていない」「大言壮語だ」といったバイアス、さらには結果に対する失望を生み出すリスクをはらんでいる。しかし、現場がそれを気にするよりも、実際に見えた結果に対して、そこからどう課題を汲み取り、次のサイクルに繋げていくかが進化の鍵になる。
優勝した前回大会に続き、二大会連続で決勝に進んだアルゼンチンや、前回はベスト4で、今回も粘り強い戦いでベスト8に勝ち上がったモロッコにあって、日本に不足していたのは、試合を泥臭くクローズする、あるいはゲームのテンポを完全に支配する勝負強さである。
しかし、アルゼンチンのようなコンタクトのマリーシア(狡猾さ)や審判へのアプローチを、日本がそのまま真似ることはできない。それでも、終盤にリードしている時、同点の時、負けている時に応じたゲームコントロールの引き出しは増やしたいし、チーム間の共有ももっとクリアにしたい。
これまでの日本は、相手の勢いに飲まれた時間帯に真っ向勝負を挑んで体力を消耗したり、不必要な形で失点したりする傾向があった。今後は、ピッチ内の選手たちが状況を察知し、あえてパスを回すテンポを極端に落として相手のプレスを無力化する、あるいは全員の共通認識として、ファウルせずに相手の攻撃を遅らせるといった、静と動をコントロールする賢さが必要になる。

