(※写真はイメージです/PIXTA)

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「不倫」「浮気」「離婚」「セクハラ」……銀座さいとう法律事務所には、今日も有象無象のトラブルが舞い込みます。本連載では、齋藤健博弁護士が実際に寄せられた事例をもとに、男女の法律問題を解説していきます。

おびただしい自撮り写真と、混じっていた「裸の男」

“ちょっと有名なインフルエンサー”の夫であるMさん(31歳)。Mさんの妻は26歳、インフルエンサーの世界では有名がゆえに、自宅の近所にまでフォロワーがやってきて子どもを連れているところを見られてしまったり、しつこいDM対応に追われたりと、会社員のMさん以上に忙しい日々を送っていました。

Mさんは、金髪が似合う美人で今風な妻を自慢に思っていましたが、あるとき、妻が動画編集しているPCをそのままにしているのを目にします。興味本位から、ドキドキしながら妻のPCを覗き込んでしまいました。

そこに並んでいたのは、ブランド品を身にまとった妻の可愛い自撮り写真の数々。一安心しかけたそのとき、おびただしい自撮り写真の合間に、異様な写真が混ざっているのを見つけてしまったのです。

それは、Mさんよりも、妻よりも若い男性と妻が裸で笑っている写真でした。構図から見て、妻自身が撮影したと思われる男性の寝ている姿が映るものもありました。

ショックを受けたMさんはすぐに妻を問いただしたものの、妻は黙り込むばかり。そこで興信所に調査を依頼したところ、相手の男性は妻が登録しているインフルエンサーのプラットフォーム運営会社の代表者であることが判明しました。

弁護士の助言を無視し、怒りのままに夫がしでかしたこと

怒り心頭に発したMさんは、すぐに慰謝料請求の準備へ動きます。しかし、ここから対応を大きく誤ってしまいました。

弁護士との初回面談の際、担当弁護士からは次のように進言されていました。

「会社という組織に対してコンプライアンス(企業規範)違反を指摘するのではなく、あくまで社長個人があなたの貞操権を侵害した(不貞行為を行った)という主張を軸にして、適切な慰謝料の形で解決を目指すべきです」

ところが、頭に血がのぼっていたMさんは弁護士のアドバイスに耳を傾けず、自ら相手の会社へ執拗に連絡し、「コンプライアンス違反だ」などといって一方的に被害を訴え続けたのです。

コンプライアンス本来、企業が守るべき規範を意味するものです。しかし、外部の被害者から直接「コンプライアンス」を盾に訴えかけられるという初めての事態に陥った相手企業は、トラブルの拡大を恐れ、Mさんの妻との契約を解消する意向を表明しました。

失職することになった妻は激怒し、社長との関係を暴露してやりたいという衝動に駆られます。不倫の当事者である社長と妻はもちろん悪いのですが、この「妻の失職」という引き金を引いたのは、皮肉にもMさん自身の行動だったといえます。

感情的な暴走が招いた「全滅」の結末

会社へ怒鳴り込み、社長と妻の不倫を公にしたことで、Mさん個人の「相手に復讐した」という一時的な満足感は得られたのかもしれません。しかし、その代償はあまりにも大きいものでした。

妻は職を失い、怒りからMさんと別居を開始。さらにMさん自身も相手の会社から「出禁」の対応を取られるなど、当初は想定していなかった甚大な不利益を被る結果となったのです。

当然、Mさんは傷つけられた「被害者」です。ですが、いくら被害者の立場にあるからといって、法律の手続きを無視して会社に執拗な暴言や連絡を繰り返すような手法では、適切な被害救済(適正な慰謝料の回収や関係修復など)を図ることは困難になります。

パートナーの不倫が発覚しても、感情に任せた行動は厳禁です。一時の感情で事態を泥沼化させないためにも、弁護士などの専門家のアドバイスに従い、法的に適切な手順で対処することをお勧めします。

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容から変更している部分があります。