“狂犬”加藤浩次(57)が「仕事も家族も充実して幸せになるなんて」…片岡飛鳥と「めちゃイケ」以来の再タッグで「NHKのドキュメンタリー」を選んだワケ
あの人とこの人が組むと必ず面白いモノが生まれる。ビジネスやものづくりの現場には不思議な勝利の方程式がある。6月30日からレギュラー放送が始まる「アイカタ〜大切な人の【イイところ】撮ってきてください〜」シーズン2のMCは加藤浩次、演出はかつて「めちゃ×2イケてるッ!」や「FNS27時間テレビ」などを手掛けた片岡飛鳥。放送されるのはお台場ではなく、渋谷のNHKだ。
【画像】2人は決して目を合わせることはないが…収録の合間に見せた加藤浩次との“阿吽の呼吸”
伝説の番組が終了して8年。再びタッグを組んだ2人は、なぜいまNHKの「ドキュメンタリー」を選んだのだろうか?

「アイカタ」のMCをつとめる加藤浩次さん ©NHK
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バラエティーの鬼が、NHKで挑むドキュメント番組
台風6号が直撃した6月3日、都内某所で収録は行われた。「アイカタ」を企画・演出する片岡飛鳥さんはフジテレビ時代に「めちゃ×2イケてるッ!」を担当していたヒットメーカーで「バラエティーのフジテレビ」を象徴するようなテレビマンだ。
この番組では撮影者が自分にとって一番大切な人である“アイカタ”の【イイところ】を、本人に密着して撮影する。初回では、パン屋のご夫婦や人気漫才コンビのエバースが登場する。気心知れた者どうしが対峙する半径3mの世界には照れや恥じらいを越えた先に本音が次々にあふれ出ている。“いい距離感”がそこにはある。片岡さんは「アイカタを愛する気持ちは映像におのずとにじみ出てくる。そんな撮影者たちの強い愛情が番組を勝手に面白くしてくれます」と自ら分析する。
「どんな人でも、自分の生まれたばっかりの赤ちゃんって、最高の写真を撮りますよね。アイカタって、そんな番組ですよね」
収録の合間の加藤さんの一言だ。プロのカメラマンがロケをしない思い切った手法でNHKが得意とするドキュメンタリーというフィールドに挑む。
「めちゃイケ」神回でカメラを回していた片岡飛鳥
「アイカタ」の着想は遡ること25年前、片岡さんのテレビマンとしての原体験が発端にある。「めちゃ×2イケてるッ!」で加藤浩次さんが世間に隠していた妻との結婚、そして第一子誕生までの日々を極秘密着した伝説の企画、加藤さんと半年間1対1で向き合いカメラを回していたのが片岡さん自身だった。放送後、普段決して他人を面白いと言わない先輩から「あの、加藤のリアルな表情は飛鳥しか撮れない」と褒められたことが今も忘れられないという。
「被取材者との距離感を間違えるとカメラは時に人を傷つけるものになるかもしれない。しかし、少なくともエンターテインメントの世界においては愛情をもって対象を撮影して、魅力的に切り取りたい。それが僕の方法論のひとつですかね。『アイカタ』という番組には加藤浩次と私の関係の根っこのようなものがある。そんなこともあってMCに加藤さんを招いたんです」
かつて国民的アイドルのドーム公演にナインティナインの岡村隆史さんをたびたび乱入させたような大仕掛けの企画とは真逆の“半径3mの幸せ”を描く。これが「片岡飛鳥のいま一番面白い」なのだろう。
加藤浩次という「テレビの達人」
「加藤さんはそもそも狂犬、チンピラ芸人ですよ。そんな彼が今日こんな風に仕事も家族も充実して幸せになるなんて想像していなかった。絶対にどこかで野垂れ死ぬと思っていました(笑)」
片岡さんは若き日の加藤浩次さんをこう振り返る。収録にのぞむ加藤さんから狂犬ぶりは微塵も感じない。MCとしての役割は、スタジオでドキュメンタリーを見て、様々な人生を受け止め、リアクションするというもの。1969年生まれの加藤さんは現在57歳、ご本人には怒られるかもしれないが、「アイカタ」でMCをする加藤さんは実に優しい。番組に登場するドキュメンタリーの主人公たちは紆余曲折の人生を歩んできている。そのすべてを加藤さんは見事に受け止めている。
末次徹NHKエンタープライズプロデューサーによれば、
「驚くほどに的確で温かいMCをしてくれる。映像の中に込められているメッセージやストーリーを汲み取る読解力がずば抜けている。いろいろな方とご一緒してきましたが、想像以上に加藤浩次さんはテレビの達人です」
片岡さんは感慨深げにこう語る。
「『めちゃイケ』が終わってしばらく仕事をしていなかったですけど、いまの加藤さんはいろんなものを受容できる懐の深さとか人間的な厚みみたいなものがある。若いころからずっと馬鹿なことを一緒にやってきたけど、いまは彼のことがとても誇らしいですね」
加藤さんは朝の生放送の情報番組で政治、経済、スポーツ、エンタメなどあらゆるニュースを長年にわたって扱い、いまも日曜日の朝には様々な業界の最新ビジネスをわかりやすく紹介している。もはや狂犬ではない。加藤浩次という「テレビの達人」のすごみを味わうことも「アイカタ」の楽しみ方の一つである。
片岡飛鳥の演出 「神は細部に宿る」
番組プロデューサーの末次徹はかつて「プロフェッショナル 仕事の流儀」を担当していた。言わずもがなだが、イチロー、宮粼駿、高倉健など、“人間を描く”NHKを代表するドキュメンタリー番組だ。「片岡さんほど丁寧にディレクションする演出家を見たことがない」という。「神は細部に宿る(God is in the details.)」という言葉があるが、片岡飛鳥さんという演出家はそれにぴったりだ。
テレビの収録でよく使われる道具に「カンペ」というものがある。スケッチブックが一般的だが、片岡さんはホワイトボードを愛用している。番組を進行する加藤さんへ細かなニュアンスを指示出しする。書いては消し、書いては消す。ひたすらに繰り返す。さらに休憩時には番組の目指すゴールやVTRのストーリーのディテールを加藤さんに丁寧に打ち込む。二人は決して目を合わせることはないが、加藤さんはその指示に小さく頷いている。阿吽の呼吸がそこにはある。
「『アイカタ』という番組のベースには加藤浩次さんと片岡飛鳥さんの信頼関係がある。そこは誰も入っていけない領域のようにすら思う」と末次プロデューサーは話す。
加藤浩次さんは今年、銀婚式を迎えるという。結婚という人生の節目を片岡さんにドキュメントしてもらってから25年の月日が流れた。
「加藤さんには妻というアイカタもいる、極楽とんぼというもっと長く連れ添っているアイカタもいる。たぶん僕のこともアイカタと思ってくれている時もあると思う。そう考えるとアイカタがたくさんいる幸せな人だなと思っています」
取材の最後に片岡さんが小声で少し照れ臭そうに話した。
あの人とこの人が組むと必ず面白いモノが生まれる。「アイカタ」という番組は二人の男の絆が生み出した番組なのかもしれない。
(羽村 玄(NHK))
