後半、ピッチにはいり菅原由勢(右)に指示を出す森保一監督(カメラ・山崎 賢人)

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◆サッカー北中米W杯▽決勝トーナメント1回戦 ブラジル2―1日本(29日、ヒューストン競技場)

 サッカーW杯3大会に出場した元日本代表FWの岡崎慎司氏(現ドイツ6部バサラマインツ監督)が、スポーツ報知の特別評論「慎髄(しんずい)」を寄稿した。日本(FIFAランク18位)が最多5度優勝のブラジル(同6位)に1―2で逆転負けした一戦を総括。前半の守備を「パーフェクト」と称賛した一方、守備的な交代策を取った後半について「少し消極的な采配だった」と評した。

 日本は先制するまでの流れを含めて、全体的に入りは良かった。前半はビニシウスへの対応など、守備のプレスの速さが効いていてパーフェクトだった。前半は良くて、後半に相手が高い位置を取って点を取りに来た時に引きすぎた。ボールを奪っても前に出られない。あの状況は、思っているよりも選手の顔を見ると苦しかったのかなと思う。あんな表情は1次リーグでは1回も見なかった。やっぱりこれが決勝トーナメント、これがW杯だなと思う。今日のモロッコ―オランダ、ドイツ―パラグアイを見ても全然違う。ギアが1、2個グッと上がる。ブラジルに押し込まれた状況でメンタル的に少しきてしまったのかな。選手たちの中で解決したり、森保一監督がシチュエーションで何か変えられるところまではいけなかった。

 普段より左の中村敬斗、右の堂安律の両ウィングバックで起点が作れず、リズムをつかめなかった。徐々にDFラインを下げられて疲弊して、最後の負けにつながった。逆にブラジルは最初はのらりくらりしていてミスも多かったので、日本はそこを突けた。今回のW杯の日本代表の強みは、やっぱり決定力。一発を決めきれる。ブラジルの方がボールを持っていたし、前半から主導権は握っていた。だから、最後までカウンター要員として前田大然や伊東純也らスピードタイプの選手を残していたと思う。日本は守りきれる可能性も多分あったと思うけど、耐えることが厳しかった。

 交代カードの切り方は、0―1で負けているブラジルの方が思い切りよく交代できた。19歳のエンドリッキを後半開始から投入されて、日本は彼の動きが嫌だったと思う。日本は動くのが少し遅かった。後半最初の15分くらいで、1個修正をかけてもよかったと思う。

 守備を重視して菅原由勢、鈴木淳之介と両ウィングバックを投入した意図は良かったと思う。本当にタラレバなので、どちらの選択もよかったと思うけど、中村と堂安のはもう1個、高い位置でプレスをかけてやれたら状況は変わったと思う。低い位置に引きすぎている部分は多かった。ボールを持てる時間を増やす選択肢もなくはなかった。もう少し高い位置でプレスをかけていければと。ボールを拾って、クリアしての連続は苦しかったと思う。

 守備を固めるなら、菅原ではなく、例えば冨安健洋を右ウィングバック、右に渡辺剛や瀬古歩夢でもよかった。鈴木淳はうまく抑えていたけど、菅原は守備的というより攻撃的な選手だと思うので、どういう意図があったのか分からない。ボールを奪ってから起点になる選手が少なすぎた。堂安や中村は今大会の中心という感じがしたので、2人が交代した後はキープするところがなくなった。深い位置で守ってからロングカウンターで出て行くことになり、上田綺世が頑張ってキープしてくれというシーンは何度もあったけど、1回だけうまく落としたところがあって、監督はあそこに懸けたのではと思う。時間の流れがめちゃくちゃ早い20〜30分間の中で交代を考えていくのは難しい。ブラジルの方が整理されていた感じはある。決勝点を決めたマルチネリら途中投入した選手が当たっていた。

 日本は1―1の終盤、ここまで全く出場のなかった町野修斗を入れたのは、個人的には一番分からなかったシーンだった。ただ、チーム内部のことは僕たちは分からない。森保監督はキャラクターを重視していると思う。走れて戦えて、守備もできて、チームメートも『やるぞ!』となる前向きなポジティブさがある選手が町野だったとも思う。そこは少し意図が読めない部分はあったけど、森保監督の意図があったと思う。

 田中碧もプレーは悪くはなかったけど、全体的に低い位置に引いていたので、あの位置をもう1個上げられないときつかった。最後の失点前に日本がキープできた時間帯が1、2回あった。ゴールを取れるんじゃないか…というところもあったけど、ここがW杯ってことじゃないかなと思う。1次リーグなら蹴らずにパスで繋げたところ、DFラインを上げ切れてたところがただ引くだけになってしまったり。日本の方が焦っている感じはあった。

 日本は、1―1で延長戦やPK戦狙いだったと思う。そういう選択だったという意味では、ちょっと消極的だった。それは、勝てば評価されるところはある。今の日本代表で久保建英や三笘薫がいたら…とは思うけど、もう少し自分たちがやってきたことをぶつけて良かったと思う。ブラジルに最後は気持ちで押し切られた。例えば、今日のモロッコと日本が対戦したら、1〜2個ギアが入ったモロッコの勢いは全然違った。ブラジルに対して、メンタル的に消極的になって引いてしまった感じがした。そこで重要だったのが采配で、『もう1個前行こうぜ、ビビんなよ!』というメッセージを出せれば、チームも前に行けたかもしれない。それは当然リスクはあるけど、少し消極的なPK戦狙いの采配だった。

 最後の失点は、田中がクリアしきれてたらと本人は思っているだろうけど、そもそもボールを奪ったのは田中なので責められない。あのシーンであそこにパスしてきたブラジルがすごい。そのシーンより、何度も押し込まれた状況を作ってしまったのが敗因だと思う。

 ◆岡崎 慎司(おかざき・しんじ) 1986年4月16日、兵庫県生まれ。40歳。滝川二高から2005年にJ1清水入り。11年にドイツ1部シュツットガルトに移籍。同マインツを経て15年夏に英プレミアリーグのレスターに移籍し、15―16年シーズンにクラブ初のリーグ優勝に貢献した。欧州4か国でプレーし、24年シントトロイデン(ベルギー)で現役引退。日本代表通算119試合出場、歴代3位の50得点。W杯は10年南アフリカ、14年ブラジル、18年ロシア大会に出場。南ア大会のデンマーク戦、ブラジル大会のコロンビア戦で得点を挙げた。