「根本から自分が変わったって周りから言われる人間になりたい」リフレクティングを経た無期懲役囚の手紙
特集です。罪を犯して服役する「懲役刑」などの刑罰が「拘禁刑」に変わって1年が経ちました。
私たちが取材したのは、無期懲役の刑で服役中のある受刑者。再犯防止の取り組みが進む中、変化が起きていました。
■2026年3月/熊本刑務所
Aさん「自分は無期懲役で生かされている。でも、人の命を奪った立場として生きていていいのかな」
熊本刑務所に服役するAさん。
強盗殺人などの罪で無期懲役が確定し、およそ20年服役しています。
つまり、新たな入所者の過半数が2回目以上の服役となっているのが実態です。(R7年版「犯罪白書」より 2024年R6年のデータ)
再犯の防止などを目的に、「拘禁刑」が導入されて1年。それに先駆けて熊本刑務所が始めていたのが、「リフレクティング」という対話を用いた取り組みです。
■Aさんのリフレクティング
北欧の精神医療の現場で生まれたリフレクティング。
「話し手」の受刑者が「聞き手」の刑務官に話しかける言葉に、隣りの「観察者」が耳を傾けます。
次に、受刑者は「聞き手」と「観察者」が自分の会話の印象について話し合う様子を見守ります。
自分の話がどう受け止められたのか。
会話を外から眺めることで、受刑者が新たな気付きを得て自分の考えを深めることが狙いです。
■「話し手」Aさん「年々(自分を)待つ人の気持ちを考えたら、1日も早く出てきてほしいと思っている人の気持ちに応えたい」
はじめは、被害者や遺族よりも自分を中心にした発言が多かったAさん。
■3月
しかし、ことし(2026年)3月、再びAさんのリフレクティングを取材すると…
■Aさん「一生、自問自答を続けていって、もっと被害者の気持ち遺族の気持ちを考えれば考えるほどきついが、それが無期懲役で生かされたからこそしなきゃいけないこと。それをしなくていいなら無期懲役ではなく死刑になっていた」
被害者や遺族への思いと、無期懲役という刑罰について口にしたのです。
服役しておよそ20年で動き始めた心。遺族に宛てた手紙につづられた言葉とは…。
■Aさん「変わったって、周りから言われる人間になりたい」
強盗殺人などの罪で熊本刑務所に服役する無期懲役囚のAさん。
去年から「リフレクティング」と呼ばれる対話プログラムに参加しています。
取材を始めておよそ10か月。あるものを見せてくれました。
命を奪った相手の遺族に向けた手紙です。
過去にも手紙は書いていたものの、実際に出すことはありませんでした。
しかし、対話の中で「出すか出さないか」ではなく「書き続けることに意味がある」と気づき、毎年、書くことを決めました。
■Aさんの手紙文「大切なご家族の命を奪ってしまい、本当にすいませんでした」
つづられたのは、被害者や遺族への謝罪、そして「更生」への思いでした。
■Aさんの手紙文「『更生した』と言われる人間になります」
「罪を許してもらう為ではなく、私自身が犯した罪ときちんと向き合った証の一つがそこなのだと思うのです」
対話の効果について、熊本刑務所も手応えを感じています。
■熊本刑務所 石井弘幸所長「(リフレクティングで)話をしていくうちに、自分の内面的な考えが変わってきたり、職員の話を聞くことによって、こういった考え方もあるのだと、それが一つの問題解決や更生について考えるヒントを得るようになってきたと思う」
リフレクティングを通じてAさんに生まれた変化。受刑者が自分の罪と向き合い、再犯を減らすことにつなげられるのか… 壁の中で大きな変革が始まっています。
■Aさん「ここで、リフレクティングでいろんな人の意見を聞きながら、根本から自分が変わったって周りから言われる人間になりたい」
【スタジオ】
取材した緒方大樹記者です。
■緒方記者
「受刑者の更生」について、身近に感じにくいという人も多いと思いますが、私たちにも無関係ではありません。
Aさんは無期懲役の受刑者ですが、無期懲役といっても更生の状況によっては仮釈放される可能性があります。
また、「懲役何年」「拘禁刑何年」という有期刑の受刑者も、いずれは社会に復帰します。
■緒方太郎キャスター
再び罪を犯すことのないよう更生できたかというのは、同じ町で暮らすかもしれない私たちにも関わることですね。
■緒方大樹記者
刑務所などの刑事施設が受刑者の更生を進められるか、そのためにどんな取り組みが行われているのか、今後も取材を続けます。

