更地となった自宅兼学習塾跡に立つ浜本さん(19日、石川県珠洲市で)=荒牧尚志撮影

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石川県 単価圧縮へ施工者支援

 能登半島地震の被災地で被災者の住宅再建が本格化する中、資材高騰などで費用が想定よりかさむケースが生じている。

 自力再建を諦める人が出るなど住まいの選択肢が狭まっており、現役世代の人口流出を加速させかねない。石川県は施工業者への支援を通じて工事単価の圧縮を図る。(珠洲通信部 荒牧尚志、金沢支局 渡辺洋介)

自力「今は厳しい」

 「地震で倒壊した自宅のほか、経営していた塾も再建しようと考えていたけど今は厳しい」。災害公営住宅に入らざるを得ず、今月中旬に入居申請を終えた同県珠洲市の浜本裕之さん(49)は、更地となった自宅跡に目を向けてため息をついた。

 自宅兼学習塾は地震で全壊し、昨夏、公費解体した。現在は近くの仮設住宅で母親と暮らしながら、仮設の教室で中高生計14人に教えている。自力再建しようと、施工業者などの話を聞くと、自宅には少なくとも2000万〜3000万円、塾には4000万〜5000万円かかる計算だった。「今自分で用意できる金額ではない」と感じた。

 能登地域は人口流出が著しい。国勢調査によると、珠洲市の人口は2025年10月時点で8528人と、地震前の前回調査(20年)からの減少率は、全国の市町村で最大の34%。受験を機に金沢市などに親と引っ越した塾生も多い。再建費用捻出には数千万円のローンを組む必要があり、塾経営の今後を考えると審査に通るかは不透明だった。

 市外での再建も脳裏をよぎったが、「預かっている子どもたちがいるから」と珠洲に残ると決めた。「再建したい思いがあるのでつらい。費用面や精神面で希望がほしい」と訴える。

坪単価で倍に

 再建費用の高騰は、石川県がまとめている住宅再建のモデルプランでも確認できる。県は被災者の再建を支援しようと、地震に強くコスト低減に配慮したプランを集めているが、昨年3月に発表した55プランのうち28プランは今年4月時点で、概算工事費が40万〜541万円値上がりした。最も安いプランは単身・夫婦向けの1600万円、最も高いプランはファミリー向けの3630万円だ。

 同県輪島市の坂口茂市長は地元での住宅建設価格の動向について「坪単価で80万円程度だったものが、150万〜200万円程度になっている」と説明。「金沢市近郊で建てた方が安いケースもあり、人口減少に拍車をかける要因の一つになっている」と話す。

 輪島市の大工、谷内均さん(68)も「坪単価が倍になっているケースがある。壁紙やベニヤ板、基礎工事のコンクリートなども値上がりしている」と証言する。県は、中東情勢や運搬コストの増加などの影響が出ているとみている。

人口流出に

 住宅再建費用の高騰は、人口流出に結びつきかねない。県は、工事費用を低減して被災者の地元での再建を後押ししようと、施工業者への宿泊場所の無償提供を8月から行う。能登半島地域外の業者にとっては、作業員の移動・宿泊費用の負担が重く、工事費高騰や工期の長期化を招いているからだ。活用するのは仮設住宅の空き室で、まずは珠洲市の20戸で実施する。

 住宅再建の遅れを見込み、県は仮設住宅の入居期限を現状の3年から4年に延長する方向で国と協議中だ。山野之義知事は「現状に応じたきめ細かい支援で、自宅再建をさらに後押ししたい」と強調する。

「工事・修理費高額」3割 被災世帯アンケ

 石川県が昨年11月〜今年2月、仮設住宅などに暮らす被災者6376世帯に行ったアンケート調査で、住宅の再建方法を聞くと、新築や修理、物件購入による「自宅再建」の割合は42・1%、災害公営住宅を含む公営住宅への入居は41・9%だった。

 「住まい再建にあたっての課題」を複数回答で尋ねると、29・8%が「工事・修理の費用が高額」を挙げ、「工事・修理まで長期間」(28%)や「費用(調達)の計画が立たない」(20・6%)と再建に苦労する状況が浮き彫りになった。

 「再建を希望する場所」については、82・2%が元々居住していた自治体での再建を望んだが、10%は他の自治体を希望。人口流出の予備軍となっている。