8日、平壌に到着した習近平氏と金正恩氏(2026年6月9日付朝鮮中央通信)

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北朝鮮と中国の貿易が急回復している。中国税関総署が公表した統計によると、2026年1〜5月の中朝貿易総額は約12億5500万ドルとなり、前年同期比で21.6%増加した。これは、国連安全保障理事会による対北制裁が本格化した2018年以降、同期間として最大規模だ。新型コロナウイルス禍後でも最高水準となり、国連安全保障理事会の制裁が続く中でも北朝鮮経済を下支えする構図が鮮明になっている。特に軍需産業にも欠かせない「戦略鉱物」の輸出が急増しており、制裁網に大きな穴が開きつつある。

米国営放送VOAによると、5月の中朝貿易額は2億6776万ドルで、前年同月比16.4%増となった。北朝鮮の対中輸入は2億1570万ドル、対中輸出は5206万ドルだった。1〜5月累計では輸出が前年同期比68.1%増の約2億8700万ドルに達し、輸入の伸びを大きく上回ったという。

輸出を牽引しているのが「タングステン精鉱」だ。1〜5月の輸出額は約8750万ドルに達し、かつらや付けまつげなど毛髪加工製品(約7860万ドル)を上回る最大の輸出品目となった。タングステンは超硬工具や半導体製造装置に加え、ミサイルや砲弾、航空宇宙分野にも使われる戦略物資で、中国にとっても安定確保が重要視される資源である。中国のタングステン輸入に占める北朝鮮産の存在感は急速に高まっている。

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一方で、石炭や鉄鉱石、水産物など北朝鮮の主要輸出品の多くは依然として国連制裁の対象だ。しかしタングステン精鉱は包括的な禁輸対象ではなく、中国側は合法的な貿易として輸入を拡大している。このため、北朝鮮は制裁で失った石炭輸出に代わる新たな外貨獲得源を手にしつつあるとの見方もある。

実際、中朝関係は昨年後半から改善傾向を強めている。首脳外交の再開に加え、北京―平壌間の旅客列車や航空便も順次再開され、物流インフラの整備も進む。中国は北朝鮮向けの大豆油や機械類などの輸出を増やす一方、毛髪製品やタングステンなどを大量に輸入する構図が定着しつつある。

もっとも、「制裁が無力化した」とみるのは早計だ。

北朝鮮の貿易の大半はいまなお中国一国に依存しており、金融制裁や石油関連の輸入制限など制裁の中核部分は維持されている。それでも、中国市場という巨大な受け皿を背景に戦略鉱物の輸出が拡大している現状は、国連制裁の実効性に新たな課題を突きつけている。ロシアとの軍事協力で外貨や資源を得る北朝鮮にとって、中国との貿易回復は経済再建を支える「第二の生命線」となりつつあると言えそうだ。