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 ◇W杯北中米大会 最高の景色を見に行こう(11)

 森保ジャパンの不動のエースとなったFW上田綺世(27=フェイエノールト)。今季オランダ1部で25ゴールを挙げ、欧州主要リーグで日本人2人目となる得点王を獲得した。日本サッカー界で希少な本格派ストライカーの土台にあるのは何か。恩師と元相棒の証言から解き明かす。(取材・構成 坂本 寛人)

 例えるなら「百獣の王」だった。上田が鹿島でプレーしていた頃、鹿島学園高の鈴木雅人監督(51)は鹿島関係者が不意に発した言葉が耳に残っている。「綺世はライオンだよね」。卒業から数年がたっていたが、その表現は鈴木監督の胸にストンと落ちた。

 「ライオンは何もトレーニングはしていないけれど、走るのも速いし、力も強い。要は動物的に持っているパワーがあると」。高校時代は本格的に筋トレに取り組んでいたわけではなかったが、パワーは既に飛び抜けていた。鹿島で10針以上縫うケガを負っても、メディカルスタッフが驚くほどの治癒力ですぐに回復していた。「ああ、綺世はライオンだったんだなって。それぐらい生まれ持った能力がやっぱりあったんだな、というのは覚えていますね」。森保ジャパンの絶対エースを支える土台を、鈴木監督はそう振り返る。

 鹿島ユースへの昇格が見送られた中3の上田を、練習試合で見かけて声をかけた。強烈な印象があったわけではない。入学直後も目立つ存在ではなく、身長は1メートル70に届いていなかった。頭角を現したのは高2の終わり頃だ。

 「3月から4月にかけて驚くぐらい体が大きくなって、それと同時にスピードもパワーもグンと上がった。得点感覚はもともとあったと思うけれど、それにだんだん磨きがかかっていった」。お世辞にも練習好きというタイプではなく、当時はまだ意識が低かった守備に対してチームメートから不満の声が上がることもあった。それでもゴールに全てをささげる上田に、鈴木監督は目をつぶった。「あの子の良さは貪欲に点を狙い続けること。現に大事な試合の90%ぐらいで点を取っていた」。得点を取り続けることで地位を確立した。ゴールに襲いかかっていくような姿も、振り返れば猛獣に重なるものがあった。

 「能力にフォーカスされがちですけど、ゴールへの筋道を立てる頭というか、IQみたいなものを持っていたと思う」。そう語るのは、法大で2トップを組んだFWディサロ燦シルヴァーノ(30、現J2山形)だ。同じストライカーとして「言語化が上手。シュート一つ取っても本当に考えている」と、2学年下の上田のことを感心していた。ディサロもプレーを論理的に考えるタイプ。話が合い、練習後にストレッチをしながらよく雑談をした。

 「ファーに転がしたり、ニアに打つ時の体の向き、そういう一つ一つの細かい動作を言語化する能力が高かった。ありきたりな言葉じゃなくて、言葉を選んでいたので分かりやすかった」。考える習慣は父と二人三脚でサッカーに没頭した幼少期に培われたもの。法大では駆け引きや守備を学び、粗削りだったプレーが洗練されていった。

 鹿島、ベルギーで研さんを積み、今季オランダ1部で得点王を獲得した。「何かを悔しがる権利もないような感覚」と失意を味わった前回カタール大会から3年半。森保ジャパンが最高の景色にたどり着くには、絶対的なストライカーの存在が不可欠だ。日本人FWがまだ見ぬ領域へ、上田が足を踏み入れようとしている。

 ≪ベースキャンプ地初練習 「緊張感も大会モードに」≫ベースキャンプ地で初練習を終えた上田は「今日から戦術的な練習も入ってきた。ここからは緊張感も大会モードになっていく」と集中力を高めた。オランダの最終ラインは1メートル90前後の大型DFが並ぶが「僕より小さいセンターバックの方が少ない。特別な思いはない」と平常心を強調。「いろんな現象に対して臨機応変に対応できるようにしたい」と語った。