玄関に出しておいた衣類には目もくれず、箪笥に埋もれる貴金属の有無を尋ねるばかり…(写真:stock.adobe.com)

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時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは三重県の60代の方からのお便り。詐欺のニュースを見るたび、思い出す苦い経験は――。

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タイムリーな誘惑

最近の詐欺は手口が巧妙で金額も桁違い。ニュースを見るたびに明日は我が身と気を引き締めながら、十数年前の苦い経験を思い出す。

最初は座布団事件だった。私の嫁入り道具で20枚、亡き義母が持っていた20枚、合わせて40枚もの座布団が自宅に眠っていたので、半分処分することに。

ある晴れた日、捨てる分を座敷に積み上げていたら、玄関のほうから「すみません。不要な座布団や布団はありませんか?」と小柄な青年がおずおずと声をかけてきた。「なんてタイムリー!渡りに船だ」と、青年を庭から座敷に上げてしまう。

すると、「これは上等な座布団ですね。ついでに古い羽毛布団もありませんか?」と別の話を始め、十数万円もする軽い羽毛布団を売り込んできたのだ。そして絶妙なタイミングで、目つきの鋭い男性が商品を携えて庭に現れる。これは断れなそうだと、私は八方塞がりで青ざめた。

その時である。隣の部屋にいた愛犬が吠え出し、さらに何やら大きな音も聞こえ始めたので、思わず襖を開けると、そこには大惨事が広がっていた。

どうやら愛犬はふいの来客に驚き、誤ってロボット掃除機を踏んでしまったらしい。突然動き出した物体にさらに驚いてその場でうんちを漏らしてしまい、運悪くそれをロボット掃除機が取り込み、大きな音を発しながら動きまわっていたのだ。

その様子を見た彼らは、商品を抱えてそのまま退散。私は身体の震えが止まらないなか、愛犬を抱きしめた。

これに懲りず、次は古着事件もあった。衣類を整理するために、着なくなった服をとりあえず座敷に並べて、どれを処分しようかと悩んでいた時のこと。

固定電話が鳴ったので出てみると、明るい声の女性が、「不要になった衣類があったら、引き取りに伺いますよ」と言ってきたのだ。またもや「なんてタイムリー!」、私は再び舞い上がってしまった。

今回は女性だし、玄関で応対すれば大丈夫だろうと頼んでみると、当日来たのはなんと男性。そして玄関に出しておいた衣類には目もくれず、箪笥に埋もれる貴金属の有無を尋ねるばかり。

「遠慮します」と断ろうとすると、鋭い目つきで凄まれる。泣く泣く古い指輪と剥げた盃を出すことに。その後もかなり粘られたが、結局1万円を置いて帰っていった。

これで懲りたかと思いきや、3回目は自転車事件。物置小屋の整理をしながら、使わない自転車の扱いに困っていた。その時、近くで「不要になった自転車などはありませんか」と、廃品回収車のアナウンスが聞こえてくるではないか。「なんてタイムリー!」、そう思った私は庭から飛び出し、車に向かって手を振ってしまう。

愛想のよい男性が対応してくれ、わが家の自転車が運び出されるのを上機嫌で眺めていたら、「では処理料金として5000円をいただきます」と言ってきたのだ。「え?」。私が凍りついたまさにその時、夫がちょうど出先から帰ってきた。無事に断ってくれて、私はほっと胸をなでおろす。

後日、「自転車などの粗大ごみを無料で引き取るふりをして、積み込んでから処理料を要求する手口に注意」という報道を見て、自分の甘さにため息ばかり。

そしてつい最近、夫と娘の携帯に立て続けに電話があったという。内容は「XXさんですね。京都府警ですが……」というもの。報道されている事件は、やはり他人事ではない。もう引っかからないぞと、決意を新たにした。

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