記事のポイント
広告主は2026年FIFAワールドカップに向け、放送やスポンサー契約で投資を進めている。
広告枠はすでに高騰し、多くが売り切れており、テレビからソーシャルまで出稿が広がっている。
米国市場の成長やインフルエンサー需要の拡大により、広告主は新たな機会を模索している。


FIFAワールドカップは9カ月後に開催される。出場チームはまだ予選を戦っており、国内シーズンも残っているため、大会に登場する顔ぶれは不確定な状態にある。

しかし、マーケティング担当者たちは、ただ待っているわけではない。

彼らは、世界で2番目に大きなスポーツイベントを放送、ストリーミング、フォロー、視聴する巨大な視聴者層(2022年の決勝戦は世界で14億2000万人が視聴)を獲得するため、活動計画や有料メディアへの投資を進めている。

すでに一部の試合ではチケット販売がはじまり、大会の盛り上がりを活用するブランドパートナーシップも続々と発表されている。たとえば、ピュリナ(Purina)は、ジム・ビーム(Jim Beam)、AT&T、フォルクスワーゲン(Volkswagen)と並び、米国サッカー協会(U.S. Soccer)の公式ペットフードパートナーとしてスポンサー契約を結んだ。

「我々はこれを文化的なプラットフォームとみなしている」と、ネスレ・ピュリナ・ノースアメリカ(Nestlé Purina North America)のCMOであるエリック・ウィリス氏は語った。

ウィリス氏によると、テレビ広告をはじめとしたさまざまなチャネルを通じ、この5年間のパートナーシップをどう活用するかを検討中だという。「ポートフォリオ全体でのアクティベーション、小売店での展開、選手との連携など、どのような形になるかを現在計画している」と述べた。

このように考えているのはピュリナだけではない。多くのブランドが、大会に向けた具体的なアプローチをいまだ練っている最中だ。

「我々はすでに、クライアントと(ワールドカップに関する)話し合いをはじめている」と、メディアアソシエイツ(Mediaassociates)のメディアアクティベーション担当バイスプレジデントであるアリシア・ウィーバー氏は語った。「彼らはかなり前から計画をはじめる」と付け加え、あるクライアントが2024年、スポンサーシップと連動した屋外広告パッケージを購入していたことを明かした。

広告枠の需要は急騰し、放送局収益は過去大会を上回る見込み



IPGのマグナ(Magna)部門は、ワールドカップの効果により2026年の世界の広告売上高が6.3%増加すると予測している。米国だけでも広告支出は4290億ドル(約63兆8010億円)に達すると見込まれ、その大部分が1カ月近く続く大会のテレビ中継に投じられるとされる。

フォックス(Fox)とテレムンド(Telemundo)は、2022年の大会中継で2億1360万ドル(約317億5920万円)を売り上げた。匿名を希望した持ち株会社のメディアバイヤーによれば、メディアインフレ、米国市場におけるプレミアム料金、試合数の増加、そして広告主にとってのライブスポーツの重要性の高まりを考慮すると、2026年は30%増加する可能性があるという。

そのバイヤーによると、フォックスのワールドカップ広告枠(試合前後の広告、ハーフタイム枠、ピッチサイド広告、プレゼンティングスポンサー枠を含む)の最大80%はすでに売り切れている(スペイン語中継はNBCユニバーサル(NBCU)傘下のテレムンドが担当)。同局は2024年秋には大会中継の交渉を開始し、アップフロントシーズンの初期段階で予約を受け付けていた。

「ワールドカップの場合、最終的にはどこかの時点で販売を打ち切らざるを得なかった」と、別の持ち株会社のメディアバイヤーは匿名を条件に率直な意見を述べた。

また、あるケースでは、大会の広告枠がほかのエンターテイメントコンテンツとセットで販売され、比較的需要の低い枠をさばくのに役立ったという。「スポーツ、特にワールドカップとスーパーボウルの市場は、驚くほど活況を呈していた」と、そのバイヤーは付け加えた。

同放送局はレイバー・デー後に残りのワールドカップ広告枠の交渉を開始したが、ライブ広告枠を購入するブランドはプレミアム料金を支払うことになる。「もし8カ月前にワールドカップの市場に参入していなかったとすれば、今は空き枠が限られ、価格も高騰している状況に直面している可能性が高い」と、最初のバイヤーは語った。

デジタルとソーシャルでも広告出稿が拡大、ノンスポンサーも参入



広告主がワールドカップ枠を獲得するためだけに、関心の低い広告枠にまで支出をいとわないという事実は、大会への高い関心を示している。しかし、広告支出はテレビ画面やスポンサー契約だけにとどまらない。

英国の広告主にとって、直近のUEFA欧州選手権(UEFA Euros)は、すでに参考となる成功例といえる。前回大会では、テレビに加えてクリエイターマーケティングや有料ソーシャルが大きな役割を果たした。特に米国からの試合中継は深夜帯になるため、この傾向はさらに加速する可能性が高い。

当然ながら、メディアバイヤーは米国の広告主も同様の動きを見せると予測している。スポンサー各社はパートナーシップの効果を高めるために、体験型施策や屋外広告といった二次的チャネルを追加するだろう。

一方で、ウィー・アー・ソーシャル(We Are Social)の調査によると、公式スポンサーシップを持たない広告主も、試合中にソーシャルメディアで活動するファンの70%にリーチするため、出稿を強化する見込みだ。

2024年のオリンピックと同様、メタ(Meta)やTikTok、YouTubeといった動画中心のプラットフォームが、こうした投資の受け皿となると見込まれている。

インフルエンサーや選手との協業需要が拡大し、米国市場の成長が後押し



一方、クリエイター(サッカー関連のインフルエンサーや選手自身も含む)への需要は今後大きく高まるだろう。選手たちは競技に集中しながらも、オリンピック選手に比べてブランドとの取り組みに対する制限は少ない。

「特にスポンサーではないブランドにとって、そこには巨大な需要が存在する」と、エッセンスメディアコム(EssenceMediacom)のスポーツ部門ディレクターであるアレックス・ブラウン氏は語った。

1994年以来、北米で初めて開催されるワールドカップは、サッカー人気が高まっている絶好のタイミングでやってくる。GWIの調査によると、現在1億3610万人の米国人がサッカーをフォローしており、ハリス・ポール(The Harris Poll)の調査では、米国人の45%がサッカーへの関心が高まっていると回答、さらに70%が「米国開催だからこそ他国開催よりも興奮する」と答えている。

「今は米国サッカーに関わるうえで本当にエキサイティングな時期だ。ワールドカップが開催され、2027年には女子ワールドカップ、2028年には再び米国でオリンピックが行われる」と、ピュリナのウィリス氏は述べた。

サッカーファンの属性は広告主に魅力的、オリンピックを超える機会も



注目すべきは規模だけでなくファン層のプロフィールでもある。ホライズン・メディア(Horizon Media)の調査によれば、米国のサッカーファンは広告主にとって魅力的な層に多く当てはまる。56%が35〜64歳、42%が大学卒業者、62%が親または祖父母だという。

「ワールドカップは、全体的な広告支出とブランド機会の観点で、オリンピックに匹敵するか、あるいはそれを上回る可能性を秘めている」と、FIFAやナイキ(Nike)をクライアントに持つクリエイティブエージェンシー、ステレオ(Stereo)のマネージングディレクター兼戦略責任者であるアーサー・ペレス氏は語った。

米国外では、サッカーは決して目新しい存在ではないが、関心が薄いわけではない。「ワールドカップは、2026年における間違いなく最大の文化的イベントだ」とブラウン氏は述べた。「代理店全体でも、かなり熱い話題になっている」と付け加え、すでにエッセンスメディアコムが匿名クライアント2社のワールドカップ関連プロジェクトに着手していることを明かした。

ただし、広告支出への期待が高まる一方で、トーナメントサッカー特有の性質、すなわち大番狂わせやサプライズが起こり得る点は留意すべきだ。もしイングランド代表が不安定な戦いぶりの末に早期敗退すれば、英国における広告投資は減速する可能性がある。

また、米国代表が現在の不調を引きずれば、米国の視聴者は広告主や放送局が期待するよりも早く大会から関心を失ってしまう恐れがある。

[原文:Advertisers are already looking ahead to next year’s World Cup]

Sam Bradley(翻訳、編集:藏西隆介)