記事のポイント 広告費への監視強化を受け、ロウズはROASを超える「インクリメンタリティ」の可視化に取り組んでいる。購買周期の長い製品にも対応するため、ライフタイムバリューなど新たな評価軸を模索している。 セルフサービス推進や人材強化を通じ、広告主との連携体制の向上を図っている。
広告費はこれまで以上に厳しい監視の目にさらされている。経済的な逆風により、マーケターは限られた予算でより大きな成果を求められ、1ドルごとの使い道に細心の注意を払うよう迫られている。広告費の精査が進むなかで、マーケターはリテールメディアネットワーク(RMN)によるメディアバイイングが実際に成果を上げているかどうかを判断するため、ROAS(広告費用対効果)を超える指標としてインクリメンタリティ(増分効果)を求め、リテールメディアパートナーに圧力をかけている。そのなかには、ロウズ・メディア・ネットワーク(Lowe's Media Network)のようなRMNパートナーも含まれる。競争力を高め、より多くの広告費を獲得するために、ロウズ・メディア・ネットワークはインクリメンタリティを重要なテーマとして製品ロードマップに据えている。米DIGIDAYは先日、ロウズ・メディア・ネットワークのゼネラルマネージャー兼責任者であるジョン・ストームズ氏に取材し、今後の測定方針と、現在の経済的逆風を同社がどのように乗り越えようとしているのかについて話を聞いた。ロウズの幹部であるストームズ氏は2023年からメディアネットワークの監督を務め、2024年にはロウズ・ワンルーフ・メディア・ネットワーク(Lowe’s One Roof Media Network)をロウズ・メディア・ネットワークに改名した。ストームズ氏のLinkedInによれば、ロウズに加わる前はターゲット(Target)に19年間在籍し、2019年から2022年までは同社のリテールメディアネットワークであるラウンデル(Roundel)においてハードライン(家電、スポーツ用品、電子機器、家庭用品など)分野の戦略・営業ディレクターを務めていた。このインタビューは、読みやすさのために一部編集されている。

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――現在、リテールメディアの状況はかなり過密であり、RMNの数は250以上にのぼる。広告費を集めるために、ロウズの製品ロードマップには何が含まれているのか?

もっとも重要な出発点は、セルフサービス型キャンペーン、リアルタイムでの指標測定、そして明確な成果だ。我々のブランドは、それらを指先ひとつで実現できるようになる。2025年後半には、そのような形が整う見通しだ。セルフサービスは現在、非常に注目されているテーマである。

――現在は多くのブランドが経済的な不安を抱えている。ロウズは、メディアバイイングやジョイントビジネスプラン(JBP)、パートナーシップに柔軟性を持たせているのか?

4カ月前に立てた計画が状況の変化で見直されるような今の環境において、我々は頻繁にタッチポイントを設けている。ビジネスの進化に応じて柔軟に対応しようとしている。現在の環境に関しては、状況を注視している。我々のメディアプランニングの基本方針は、顧客価値を守り続けることだ。我々には商品レビューの仕組みがあり、メディアプランの見直しやプロセス全体を通じて多くの確認作業を行っている。多くの点で我々のやり方は変わっていないが、より多くのチェックとバランスが必要だと認識しており、顧客を失望させないよう取り組んでいる。

――ロウズはインクリメンタリティにどのように取り組んでいるのか? マーケターにとって、ROASではもはや十分ではないようだ。

インクリメンタリティは我々のロードマップに含まれており、将来的にはセルフサービスエンジンの一部を構成する指標になる見込みだ。我々の方法論やアプローチが進化するなかで、インクリメンタリティは重要な役割を果たすことになる。我々が直面している最大の課題は、購買期間が極めて長い製品カテゴリーにおいて、インクリメンタリティをどのように測定するかという点だ。私はかつてターゲット(Target)で働いており、シリアルのように毎週あるいは隔週で購入される商品のインクリメンタリティを考えるのは非常に容易だった。しかし、床の張り替えといったプロジェクトでは意思決定までに数カ月かかる場合もあり、家電のようにライフサイクルが10年に及ぶ商品も存在する。そのため我々が探っているのは、インクリメンタリティに対する正しいアプローチとは何かという問いだ。検討をはじめた時点から、実際に購入に至るまでの期間をどう捉えるか。インクリメンタリティとライフタイムバリュー、あるいはプロジェクトタイムバリューの関係性をどう評価するのかが焦点になっている。

――もっと詳しく教えてほしい。ブランドとの会話とはどのようなものか?

我々は、インタラクティブ広告協議会(IAB)やメディア・レイティング・カウンシル(MRC)といった業界標準を定めるパートナーとの連携を継続している。実際、我々が行っていることは、その最前線にあるといえる。現在は、異なるクリエイティブタイプやチャネルタイプごとに、顧客がどのように行動を変化させているかを把握するための、より詳細なデータ分析の方法を検討しはじめている。たとえば、「どのようにして新規顧客をこのカテゴリーに引き込むか」「買い物カゴのなかのほかの商品への影響はどうか」といった点が挙げられる。我々がめざしているのは、インクリメンタリティの実現に加えて、それを補完する指標群を整備することだ。これは、顧客が本来とるであろう行動と、メディアの影響によって実際に起きた行動との差異を明らかにするものだ。

――リテールメディアのゴールドラッシュともいえる現状に対応するために、どのようにチームを作り上げているのか?

今年に入り、我々はチームを拡大した。今後もこの動きを加速させ、サービスレベルをさらに向上させていく方針だ。すべてのブランドに対して、クライアントサービス、メディアプランニング、クリエイティブ、インサイトなどの各分野で、より専門的な窓口とチームが用意されていると実感してもらえるようにしたいと考えている。我々のビジネスは、より経験豊富なリテールメディア人材の存在を必要としている。そのため、ほかの小売企業から多くの人材を迎え入れ、その知見を活かして最大手のブランドや高度に統合されたエージェンシーと効果的に連携している。また、いくつかの市場参入戦略や新チャネルの構築に向けて、新たなチームの立ち上げも進めている。そこでは、生来の好奇心を持ち、デジタルファーストを牽引し、カスタマージャーニーを深く理解し、製品とチャネルスタックを把握しているような人材を求めている。[原文:Lowe’s Media Network eyes incrementality amid marketer budget pressures]Kimeko McCoy(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:藏西隆介)