●ブルース・リーが“十番勝負”をこなすように

23日に最終回を迎えるフジテレビ系ドラマ『海のはじまり』(毎週月曜21:00〜)。Snow Manの目黒蓮演じる主人公・夏が、自分と血のつながった娘・海(泉谷星奈)の存在を知って人生が変化していく中で、様々な形の“親と子”のつながりを描き、TVerでの総再生回数はスピンオフ特別編を合わせて6,050万を超えている(9月16日時点)。

制作を手がけるのは、これまで『silent』『いちばんすきな花』でタッグを組んできた脚本・生方美久氏、プロデュース・村瀬健氏らのチーム。『silent』に続いての起用となった目黒をはじめ、名優ぞろいのキャスト陣の印象や撮影秘話を、村瀬氏に聞いた――。

目黒蓮(左)と泉谷星奈 (C)フジテレビ

○今までの芝居になかった芝居の域の表情

まずは主演の目黒について、「『トリリオンゲーム』やSnow Manとして出ている音楽番組を見ていると、すごくカッコいいじゃないですか。でも、夏を演じるときには、そのオーラを完全に消してる。決してカッコ悪くはないんだけど、“ただの人”を演じることができる落差がありますよね。それを、僕は『silent』のときの想くんよりも今回の夏のほうにより感じます。やっぱり夏に対して、皆さんがイラッとしたり不安になったりして、頼りないと思うことが多々あると思うんです。それを、今日本で一番キラキラした男であるはずの目黒蓮が演じられているというのが、ものすごいことだと思います」と称賛。

また、有村架純、古川琴音、西田尚美、田中哲司、池松壮亮、大竹しのぶといった「本当にお芝居が上手だし、しかもテクニックだけじゃなく心で演じる特別な方々」という名優たちと対峙(たいじ)して演じることによって、「どんどん良くなってるんです」と、話が進むごとに成長を感じているそう。

「1話のお葬式の時に、朱音さん(大竹)に“この7年の水季(古川)のこと、想像はしてください”と言われた時の表情って、今までの彼のお芝居になかった域に入ってたと思うし、弥生(有村)に“私、殺したことがある”と言われて何も言えなくなった時も、今までにはなかった表情をしていましたよね。本当に(映画『死亡遊戯』で)ブルース・リーが一階ごとに敵と戦いながら、だんだん上の階に上がっていく感じで、“十番勝負”をこなしてるんです。名優たちと一人ずつ向き合うたびに、新しい表情が出てる感じがします」

比較的セリフの少ないキャラクターのため、「受けた時の見つめる目線だったり、考える間みたいなもので伝えるものがたくさんある役だと思うんですけど、その表現が圧倒的に広がってきているし、その1個1個が我々の伝えたいものを表現してくれるようになっている。目黒くんのいわゆる演技力というものは、ものすごいと思います」と信頼を寄せた。

一方で、海役の子役・泉谷星奈との芝居では、「本当に自然なんです。大人の役者さんには出せない良さがあって、これも目黒くんにとってはいい刺激と経験になってるんじゃないかなと思います」と見ている。





(C)フジテレビ

○嫌われかねない役に真摯に向き合った有村架純

目黒が対峙する役者陣の中で、有村については、「弥生というのは本当に難しい役で、有村さんは苦しみながら苦しみながら演じています。毎回、台本ができると早い段階から、“ここの弥生はどういう気持ちになっているのか”ということをよく僕に聞いてきてくださって、セリフの意味を本当に長くディスカッションして落とし込んでいく。そこから、実際に現場で口に出してみて感じるものを今度は監督とディスカッションしながらやっていくという、ものすごく丁寧で真摯(しんし)な姿勢でこの弥生という難しい役と向き合ってくれています」と紹介。

「弥生の想いが明かされていなかった2話くらいまでは、視聴者の皆さんは弥生に対してかなり怒っていましたよね。でも、嫌われかねない役をしっかり丁寧に演じてくれていた。一方で、夏と2人になったときの恋する女の子の可憐さみたいなものもすごい上手ですよね。そういうところが、有村架純さんはすごいなと改めて思っています」と、幅の広さに感心した。





(C)フジテレビ

●池松壮亮と生方美久氏による「天才たちの対決」

池松壮亮 (C)フジテレビ

池松については、「6話で夏に水季の闘病について聞かれて、津野(池松)が“思い出したくないです”と言う芝居があったんですけど、台本では“即答する”と書いてあったんです。でも、あれだけ溜めて溜めて溜めて、“思い出したくないです”と言っていて、あの言葉にすべてが集約されていた。その前の“僕のほうが悲しい自信があります”も含めて、7話で水季の訃報を聞く電話で理由が全部分かるような作りになっていて、この一連の池松壮亮という人の演技は、何年もこの仕事をやってきましたけど、あまりのすごさに完全に圧倒されました」と驚かされたそう。

また、「僕は、生方さんの書いた本を読んで、自分なりに解釈して、こういうお芝居がくるだろうと思ってプロデュースをしているんですけど、その向こう側にあるもっと深いものを池松さんの芝居が教えてくれるんです。それは、もしかしたら生方さんが本を書いているときに感じていたものなのかもしれないし、それとはまた別のものなのかもしれないけど、もはや天才たちが天高いところでで対決してるような感じがしています。池松さんの芝居には、もはや感心を通り越して、感動して見入っています」と感服した。

古川琴音 (C)フジテレビ

そして、古川については、「あの不思議なキャラクターをとにかく魅力的に見せてくれていますよね。古川さんじゃなかったら…と思うと、ちょっとゾッとするところもあります」と想像。「なんとも言えない捉えようのない感じだけど芯が強い。男女問わず、あのキャラクターだったら翻ろうされるなっていう魅力がちゃんと出せているのは、古川さんだからだと思います。あの空気は彼女しか出せなかったなと思います」と、キャスティングの成功を確信した。

そんな水季と津野を主軸とした特別編『恋のおしまい』(8話と9話の間に放送)に関しては、「古川さんと池松さんの素晴らしさがこれ以上ないくらいに出せたと思っています」と振り返る。

「連ドラ本編の中では、水希が夏と別れた後、一人で海を育てていた時期のことはそれほど多くは描かれていません。その時期の水季を描くスピンオフ的なものを作れたらと考えたのが、『恋のおしまい』でした。結果的に連ドラの放送枠で見てもらえたのは本当に良かったと思っています。津野が抱える感情の理由、夏の知らない時期の水季の想い、それらを知った上で本編を見ると、きっと何かが違って見えてくるんじゃないかと思っています」

特別編『恋のおしまい』より (C)フジテレビ

○オーディションでダントツだった泉谷星奈

物語の中で、癒やしの存在にもなっている子役の泉谷は、『いちばんすきな花』で今田美桜の幼少役を演じていた。当時から「シンプルにお芝居が上手だったし、大人たちの間に入ってもおびえる感じや恥ずかしがる感じがなく堂々としていて、しかも“待つ”ということもしっかりできるので、プロだな」という印象を持っていたが、今回の海役は大々的なオーディションを実施。泉谷にもシード権なしで参加してもらったという。

それでも、結果として「ダントツで星奈ちゃんでした。一番お芝居が上手だったし、泣く演技も見事だったし、理解力もすごくあったんです」と決めた。

ちなみに、『いちばんすきな花』で選んだ際は、脚本の生方氏が「この子知ってます?」と推薦してオーディションに参加。高野舞監督も村瀬氏も即決だったといい、「その時点でもう輝いていたんです」と振り返る。

現場のムードメーカーにもなっているそうで、「みんな大好きで、大竹さんなんてずっとギューってやってますから(笑)。僕が髪を切ったら、現場でどのスタッフよりも早く“あー村瀬さん髪切った!”って言ってくれて、彼女は将来間違いなくモテますね(笑)」とエピソードを明かした。







(C)フジテレビ

村瀬健プロデューサー