東京地裁が入る庁舎=東京都千代田区

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 大ヒット漫画「小悪魔教師サイコ」を連載していた漫画家が、同じタイトルのデジタル漫画「ウェブトゥーン」が制作されることに適切に対応しなかったとして、自身の漫画を出していた出版社に賠償を求めた訴訟は、東京地裁で和解が成立した。

 和解は13日付。

【画像】合田蛍冬さんが作画した漫画「小悪魔教師サイコ」

 訴状などによると、漫画家の合田蛍冬(あいだけいと)さんは、原作小説の著作権を管理する会社から許諾を受けた出版社「ぶんか社」のサイトで2021年4月から電子配信を始めた。すぐにランキング上位になった。

 だが、その約7カ月後に原作管理会社がウェブトゥーン事業への参入を決め、「サイコ」も同じタイトルでウェブトゥーン化されることになった。合田さんはぶんか社に対して、制作中止を求めて欲しいと伝えたが、「止める権利はない」と回答があり、ウェブトゥーン版の連載が始まった。

 合田さん側は昨年8月にぶんか社を提訴し、同社と結んだ出版契約を根拠に「同一作品の制作・販売を止めなかったのは契約義務違反」と主張。合田さんの漫画は休載となったのに読者に告知しないことも「作品の情報を正確に伝える義務に違反する」と訴えた。

 ぶんか社は和解を受け、18日にホームページにコメントを掲載。ウェブトゥーン版の連載をめぐり、「十分な配慮が求められるが、結果として合田先生との調整を図ることができなかった」と謝罪した。休載の告知ができていないことについても、「おわび申し上げます」とコメントした。

 合田さんの「サイコ」は、連載再開のめどがたっていないとして、今後も休載するという。

 合田さんはブログで、今回の和解について「一定の納得がいく結果となりました」とコメントした。(金子和史)